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自動車の作り方1

 自動車が、どのような設計思想のもと作られているか考えたことがあるだろうか。安全性はもちろん、ドライバーの意思をどのように実現するかや、快適なエンジンサウンドまで求めているメーカーも存在する。自動車の技術が日進月歩で発展していく中、連日のように悲惨な事故が報道されている。そこで今回、自動車の安全性とテクノロジーについて僕なりに考えてみた。

「自動運転にすれば事故は減る」

よくこのような主張をする人がいる。本当にそうだろうか。システムとして完成された自動運転車だけになれば、自動車事故は減るだろう。しかし、問題はシステムとして完成するまでの期間である。自動運転を搭載した自動車が販売されるとなれば、メーカーは徹底的なテストをする。<信号無視の車が急に飛び出してきた>、<認知症のお年寄りが道の真ん中を歩行している>、<子供が飛び出してきたが、それを避けると対向車と衝突する>など何万、何十万通りの回避プログラムを用意し、全ての場合においてメーカーのフィールドにてテストするはずだ。しかし、その自動車は何千台と売れ、今後10年は使われるかもしれない。そうすると、予期せぬ場面に遭遇する可能性もある。例えば、<ドライバーが警告エラーを無視したまま乗り続けた>、<タイヤが極度にすり減った状態で乗り続け、正確なセンシングができない>、<道路交通法が変更された>などいくらでも考えられる。もちろん、ソフトのアップデートや、機械学習によって広く対応できるようにしていくなどの措置は、当然とられるだろう。だが、それでもやはり人間のように、臨機応変に対応できる自動運転を実現することは、現段階では困難である。できるとすれば、自動運転が世に出て数十年経ち、十分なノウハウが集まった後である。そう考えると、自動運転に頼るのはまだ難しい。運転の主役はまだまだ人間である。事故の原因で最も多いのはヒューマンエラー(人間のミス)である。例えば、<信号を見落とした>、<ペダルを踏み間違えた>、<慢心があった>、<予期できなかった>など、人間側の原因は様々である。逆に、<ブレーキが壊れた>、<エンジンが暴走した>などの機械的トラブルは稀である。では、どのようにしたらヒューマンエラーを防げるだろうか。

「最新のテクノロジーで運転を補助する」

近年、このような設計思想が大変流行しているように思われる。例えば、自動ブレーキ、車線逸脱警報装置などである。古いものだと、ABS(Anti-lock Braking System)なども、運転を補助する装置の一つと言えるだろう。これらのシステムは事故率低下に役立っている。しかし、それだけでヒューマンエラーを防げるだろうか。そもそもこれらのシステムは、ヒューマンエラーが起きた時にそれをフィードバックして打ち消すといったものである。自動ブレーキは、人間がブレーキのタイミングをミスした時に作動し、車線逸脱警報装置は人間が誤って、車線を逸脱した際に作動する。ここで、少し視点を変えて、ヒューマンエラーを起こさない環境づくりについて考えみる。ヒューマンエラーを起こさない環境の一つとして、運転中、その自動車の状況が感覚として正確に運転者に伝わることが重要であると考える。運転者が入力している操作と、運転者が感じる感覚にズレがあっては判断ミスの原因となる。現在の自動車は非常に快適である。エンジン音もほとんどせず、揺れも少ない。メーカーの目指すところの究極は無振動、無音なのだろうか。しかし、運転の感覚を、加速度と視覚に頼るのはあまりにも頼りない。うるさすぎるエンジン、揺れすぎる車体は困り物だが、運転者が情報として取り入れられるエンジン音、揺れは重要である。例えば、アクセルを踏み込むと、加速するとともに、エンジン音も増加することで運転者は視覚、聴覚、加速度から加速を認識することができる。これらは、ある意味快適性とは相反するものであるため、より研究が必要だろう。また、人間は疲労したり、眠気があるとヒューマンエラーを起こしやすくなる。そこで、人間の状況をセンシングし危険な場合、警告音やハンドルの振動で運転者に告知し、ヒューマンエラーを起こしやすい状況を回避するというのも重要である。他にも、ヘッドアップ・ディスプレイの採用や、人間工学に基づいたペダル、ハンドルの配置によって極力ストレスを減らすことも重要だ。しかし、いくらヒューマンエラーを起こさないような環境を用意したところで、ヒューマンエラーはなくならない。やはり、ヒューマンエラーを起こしにくい環境を用意することとともに、前述したヒューマンエラーが起きた時にそれをフィードバックして打ち消すといった装置も併用することが必要となるだろう。

自動車を作ることを考える上で、最新の技術を投入することは安全面においても、重要である。しかし、便利になりすぎた故の事故であったり、発展途上の不具合だったりと、必ずしもメリットばかりではない。根本的な解決法を考え、それに最新技術をマッチングさせていくことが重要だと考えた。

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