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実用的なUAVを作りたい1

 近年、ドローンと呼ばれるUAV(無人航空機)が普及し始めた。空撮や操縦技術を競い合う大会などが注目されている。注目されるようになってきたとはいえ、まだまだ趣味性の強い分野であり、特に、小型機に関しては残念ながら実用的といえるような製品は少ない。そこで本稿では、実用的なUAVとはどのようなものか、どのような性能が必要か、などについて考えてみる。

求められる性能

 実用する上で重要になるのが、安全性とどんな環境でも設計通りの動作が保証されているということだ。では、安全性や過酷な環境に対応させるためにはどのような設計思想が重要になるだろうか。

安全性

 最低限必要になるのが、構造上の安全である。回転翼やアームには大きな力がかかるが、万が一想定を超える力がかかったとしても破壊されない強度が必要となる。そのためには設計ソフトによる解析や、実際に試験機を用いて部品の強度を測定し、それに基づいて設計する。想定荷重の何倍まで耐えられるかを定める基準として安全率を用いる。航空機の場合、安全率を1.8と設定することが多い。例えば、その機体に5G(地球上の重力加速度の5倍)の負荷がかかるのであれば、その1.8倍の9G程度まで耐えられるように製作する。

 次に重要になるのが、制御上の安全である。UAVは、様々なセンサーから必要な情報を受け取り、それに基づいて繊細な制御のもと、ぎりぎりのバランスを保って浮かんでいる。特に、回転翼(マルチコプター、ヘリ型 etc)のホバリング時、空力的な安定性がほとんど得られないため、力業で安定させる。そんな状況のなか万が一、ソフトウェアや制御系が故障した場合、即墜落に至る。そこで大きな機体では、回転翼を4発以上搭載したり、制御系を複数搭載するなどの、フェイルセーフ機構と呼ばれる機構を搭載する。

どんな環境でも飛べるということ

 実用の機体となると、風が強い海辺や、乱気流が多数発生している山岳地帯などでの運用も考えられる。主に、乱気流に対しての対策が重要になる。乱気流に対抗するためには、まず機体が受ける影響を最小限にする必要がある。そのためには、流線型のカウル(機体を覆う外装)を取り付け、空気抵抗を抑える。また整流フィンを取り付ければ、気流を利用して安定を得ることも可能である。また、従来のドローンでは、姿勢制御をローター回転数に依存しているため、ローター回転数が低くなる、降下時、上昇気流発生時の時はどうしても不安定である。そこで、ローター回転数に依存せずに姿勢を制御できる可変ピッチローターの採用も効果的である。

ヘリ型ドローンの研究

 空力的な安定が得られ、可変ピッチローターを採用しやすい機体の形状として、ヘリコプタ型がある。本稿トップの写真は実際に試作した小型ヘリ型ドローン(無人ヘリ)である。ヘリ型は、軍用機や、輸送、送電線の管理、農業など比較的実用的な用途の機体に採用される傾向がある。しかし、従来の機体は大型であり、あまり汎用的とは言えない。そこで、汎用性を増大させるため、小型無人ヘリを研究・開発している。従来のマルチコプターと比較して、構造、制御が複雑になるため、課題も多いが、それらを克服すれば、効率、操作性などで大きなメリットが得られる。

 次回は、この研究についてもっと詳しく記載する。

 




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