2019年、わたしが聞いた音楽


ネガティブなツイートがネガティブな反応を生んで、たぶんわたしも微妙に信用を失ったと思うので、これからはポジティブなこととネタしかツイートしないぞ! と心に決めた次第。いくらでも批判は受けますが、だれからも、なにからも縛られずに、今後も適当なことを自由に言っていきます。それにしても、わたしのツイートってなんでネガティブなものばかりが伸びるんだろう……。

それはさておき、このnoteでは、わたしが今年、2019年に聞いていた音楽を、(じぶんのためにも)ざっくりと、だらっとまとめてみます。

まず、ロック。正直にいって、ロックはあんまり印象に残っていません。上半期はblack midiに心を躍らせ、二つのシングルとアルバム、Schlagenheim(noteってイタリック体にできないんですね)、そしてライブをおおいに楽しませてもらいました。​

black midiのライブを9月に見て、取材もし、一旦熱が落ち着いたあと、ずっと聞いていたのがFontaines D.C.のDogrelです。

シングルを聞いたときも、アルバムが出てすぐのころもよくわからなかったのですが、なんとなくひっかかっていたのでたまに聞いていたら、いつのまにか超ファンになっていました。Grian Chattenの詞と、あのぶっきらぼうで不器用な歌いかたが好きなんですよね。

グラストンベリーのライブ映像もすごくいい。飾り気がなくて、ちょっとノームコアな感じのファッションも最高。たたずまいがめちゃくちゃいいんです。ぜったいに来日してほしいし、もうわたしのほうから彼らを訪ねにダブリンへ行きたいくらい。

Fontaines D.C.は、ビーチ・ボーイズから影響を受けたセカンドアルバムをLAで録音し終わった、と報道されているのですが、それを聞いてコケるんじゃないかと、ちょっと心配になっています。

black midiはロンドンで、Fontaines D.C.はアイルランドのダブリン。どちらも北米のバンドじゃないんですよね。北米のインディロック、インディポップは、いよいよ袋小路に入っているんじゃないかと感じています。

そんななかでもわたしが胸を打たれたのは、GirlpoolがAnti-からリリースしたWhat Chaos Is Imaginaryでした。Girlpoolの片割れのCleo Tuckerはトランスジェンダーないしノンバイナリーであることをカミングアウトしていて、いまは男性的な面が彼/彼女のなかで強くなっているのでしょうか、What Chaos Is Imaginaryではかなり低い声で歌っていますし、服装やからだつきも以前とはまったくちがっています(いまどき、「男性的」も「女性的」もないかもしれませんが)。

わたしが好きな曲は“Hire”。KEXPのライブでは、Cleoの歌はちょっとキツそうですけど……。

トランスジェンダー、ノンバイナリー、クエスチョニング、クィア……。2019年は「単数形のthey」が話題になりました。今、Cleoのことを指すのに「彼/彼女」と便宜的に書きましたが、日本語にも「単数形のthey」のような言葉が出てくるといいですよね。

メタルもいろいろと聞いていましたが、PitchforkがBest New Musicに選んで話題になったBlood IncantationのHidden History of the Human Raceは、よく聞きました。最近、Deathを聞いていたのでなおさらです。SF的な世界観がユニークだと思いました。

強烈な独創性と個性を見せつけてくれたのが、LiturgyのH.A.Q.Q.。デスメタルのBlood Incantationと対照的に、Liturgyはブラックメタルですが、パソコンの処理落ちを再現したようなグリッチノイズが随所に入っていて、ぶっとんでいます。すばらしい。

メタルについてさらにいうと、Toolの13年ぶりのアルバムであるFear Inoculumや、SliknotのWe Are Not Your Kind、KornのThe Nothingといった、高い人気を誇るベテランバンドたちの新作も力強かったです。

特にToolのFear Inoculumは、クリティックからの評価はそこそこでしたが、アルバムとしてとてもすばらしかったと思います。シングルにして表題曲、“Fear Inoculum”を聞いたときは震えました。

ロックはこんな感じです。

で、わたしの2019年のMVPは、なんといってもRosalía。彼女の存在感は圧倒的でした。

2018年11月にリリースしたEl Mal Quererがヒットして以降、Rosalíaはフラメンコサウンドからちょっと離れて、ラテンポップ系のシングルを断続的に発表しています。もちろんそこにはフラメンコの要素も入っているのですが、J Blavinとの“Con Altura”、Ozunaとの“Yo x Ti, Tu x Mi”はほとんどレゲトン/ラテントラップで、スペインや南米で大ヒットしました。2018年がCardi Bの“I Like It”の年であったとするなら、2019年は“Con Altura”の年だったのではないでしょうか。

Rosalíaが2019年に発表したシングルはほかに、“Aute Cuture”、“Milionària”と“Dio$ No$ Libre Del Dinero”(2曲あわせてFucking Money Man)、“A Palé”の4曲。どれもすばらしく、甲乙つけがたいです。

なかでも、いまのところの最新シングルである“A Palé”は、Billie Eilishのファンも気にいるような音づくりとダークなムードの曲だと思います。“bad guy”とかを参考にしているんじゃないかな。

Rosalíaからflamenco popやnew flamenco / nuevo flamenco、urban flamencoといったジャンル、ムーブメントを知り、現在のスパニッシュミュージックのおもしろさを知りました。とはいえ……。Spotifyのプレイリストでいろいろと聞きましたが、レゲトン/ラテントラップにフラメンコギターが入っているだけか、ふつうのR&Bっぽい曲がほとんど。Rosalíaほど魅力的で、越境的で、挑戦的なミュージシャンには出会えていません。ただ、哀愁を感じるスペインらしい旋律は独特で、くせになりますね。

Rosalíaのシングルたちと一緒に聞いていたのが、彼女とも共演したコロンビアのJ Balvinや、プエルトリコのBad BunnyとOzuna、Anuel AA、パナマのSechら。彼らはいずれも2017年から2018年にかけて決定的なアルバムを出していて、欧米でもヒットしました。

これほどレゲトンやラテントラップ、ラテンポップがアメリカでも流行っているのは、ラテン系の人口が増えているからだ、という話も聞きますね。ヒップホップやR&Bがラテンポップと混ざり合い、フュージョンしまくっている今の状況は、とても楽しいと感じます。

そんなJ BalvinとBad Bunnyという2人の王者が、OASISという堂々たるコラボレーションアルバムを発表したことはとても心強かったし、わくわくしました。

リリースは5月ですが、最近よく聞いているのはBad BunnyがTainyとつくった“Callaíta”。超いい。

また、Kali Uchisの最新シングル“Solita”はレゲトン/ラテントラップに振り切った曲で最高です。

2020年の活躍に期待しているのは、激動の地、チリ出身のPaloma Mami。

フラメンコポップやレゲトン/ラテントラップを聞いていて強く感じたのは、レゲトンのリズム、ビートの力強さでした。なので、J-POPでもレゲトンやラテントラップを意識した曲が出てくるとおもしろいのにな、と思っています。

そういったことを謎のオリエンタルな響きとともに、かなりインディペンデントに、ユニークなかたちでやっているのは、先を行き過ぎている田島ハルコさんかも。

レゲトンのもとになったのはプエルトリコの音楽やレゲエ/ダンスホール、ヒップホップ、R&Bなどですが、なかでもレゲエ/ダンスホールのリズムとビートは大きく影響しているように感じます。レゲエ/ダンスホールという音楽の偉大さをあらためて感じたのも2019年でした。

レゲエということでは、2019年はKoffeeと出会ったことも大きかったです。彼女を知ったのは“Throne”というルーツレゲエの意匠にトラップビートなどが取り入れられたシングルだったのですが、そのあとにRapture EPを聞いて、すっかり魅了されてしまいました。

Gunnaとの新しいシングル“W”もすばらしいので、Koffeeは2020年のレゲエの「次」を担い、拡張していく存在になっていきそう。

ミュージック・マガジン誌の2019年ベストアルバムで、レゲエのリストにナイジェリアのBurna BoyのAfrican Giantが選ばれていて、ちょっと驚きながら、なるほどと思いました。Burna Boyといえばafrobeatsなのですが、レゲエ/ダンスホールとして聞くこともできるんだ、そうだよねって(そもそも、afrobeatsのルーツにレゲエ/ダンスホールがあるわけで)。アルバムにはDamian Marleyも参加していますし、そう思ってAfrican Giantを聞き直すと、またおもしろく聞けたんですよね。

FutureやYG、Jeremih、Jorja Smithといった米英のスターたちが参加したAfrican Giantは、一方で生楽器の響きを活かしていて、オーセンティックかつオーガニック、でもアーバンで挑戦的、という絶妙なサウンドになっています。

米英ナイジェリアを転々としてきたDavidoのA Good Timeというアルバムもすばらしかったです。Davidoのafrobeatsはより洗練されていて、ポップで、アーバンで、折衷的。これこそが2019年のポップだ、とも思いました。

Summer Walker & London on da Trackとの“D & G”、Popcaanとの“Risky”、GunnaとDremo(ナイジェリアのラッパー)とA Boogie wit da Hoodieとの“Big Picture”……。Davidoの越境性は注目に値します。

afrobeatsと直結しているのは英国のシーンで、その関係の度合いや深まり具合いも、2019年、ひとつ先に進んだように感じます(英国外へもあきらかに拡散していっていると思います)。

UKのシンガー、MahaliaがBurna Boyと歌った“Simmer”は、そういったことを強く感じさせる一曲として印象に残っています。これもかなりレゲエっぽい曲。というのも、ビーニー・マンのダンスホールクラシック“Who Am I”を引用しているからなのですが。

“Simmer”を収めたアルバム、Love and Compromiseは、Trrace MartinやLucky Dayeが参加した野心作ですので、ぜひ聞いてみてください。

レゲエ/ダンスホールといえば、つい先日ジャマイカのPopcaanが新しいミックステープ、Vanquishを発表しました。すばらしい内容であるにもかかわらず、日本であまり話題になっていないことが残念です。

注目すべきはレーベルです。VanquishはDrakeのOVO Soundからリリースされています。DrakeとOVOが地元のカナダ、トロントのシーンを盛り上げながら、今後こういったグローバルな展開をしていくのであれば、さらにおもしろいことが起こるだろうなと感じました。Wizkidとの“One Dance”をヒットさせた功績についてはいわずもがな、英国のシーンともつながっているDrakeは、巨大な音楽的ハブです。彼は音楽的にとてもどん欲なひとだと思いますし、これまで以上のはたらきを次作やOVOの運営で見せてくれるのではないでしょうか。

いずれにせよ、異なる血と血が混ざり合い、新たな音を生んでいるさまにこそわたしは興奮させられる、ということです。ポップミュージックの歴史というのは、つねにその繰り返しだと思っています。

そういった意味で興奮したのは、Pop Smokeとの出会いでした。

“Welcome To The Party”やLil Tjayとの“War”を聞いて、あきらかにUK drillやグライムの音だと思ったのですが、彼がブルックリンの若者だと知ってびっくり。調べてみると、英国のプロデューサーの曲でラップしているらしい。Pop SmokeのほかにもSheff Gや22Gzといったラッパーたちがいて、ブルックリンでドリルシーンが興っているというのだから、さらにびっくり。ブルックリンでは今、おもしろいことが起こっているようです。

そもそも、アトランタのトラップから影響を受け、シカゴのサウスサイドで生まれたdrillというスタイルがさらに英国の地下へと届き、グライムやロードラップなどと混ざり合って独自のシーンと音を形成してUK drillが誕生したわけです。その音が海を越えて、米国のブルックリンに今、逆輸入されているというのは、とても興味深い。

アメリカとイギリスのヒップホップ/ラップミュージックは、やっぱりかなり異質なもので、異なる文化と音、スタイルを持っています。それぞれ独立していて、混ざり合うことはそんなに多くないはずです。実際、アメリカのラッパーにはイギリスのラップやヒップホップを軽視するひと、まったく意識しないひともすくなくないと思うのですが、UKのヒップホップ/ラップミュージックが影響力を増していく中でBrooklyn drillのシーンができていることには、なにかダイナミズムのようなものや大きなうねりを感じます。Pop SmokeとBrooklyn drillには、2020年も注目したいです。

また、米国のヒップホップ/ラップミュージックについては、DaBabyを筆頭に、ほんとうにいろいろな才能が活躍した年でした。

一方で、Juice WRLDが亡くなったことは残念でなりません。一時期は“Lucid Dreams”をずっと、繰り返し、延々と聞いていました。

そして、メインストリームで堂々たる貫禄を見せていたのは、Mustardだったと思います。。

彼のアルバム、Perfect Tenはタイトルのとおりに完ぺき、10点満点のアルバムだと思います。Mustardはこのアルバムでウェストサイドの音を更新してみせましたし、特にRoddy Ricchとの“Ballin'”やMigosとの“Pure Water”は、2019年を代表する一曲ですね。

わたしはプロデューサーがつくるアルバムをついつい軽視しがちなのですが、Mustardのアルバムには圧倒されました。これほどまでの作品をつくれるプロデューサーは、ほかにいないと思います。

トラップのラッパーたちのアルバムはどうしてもで聞き通せなくて、曲で聞くことが多いのですが、反対にWikiやMaxo Kream、Denzel Curry、JPEGMAFIA、オーセンティシティを突き詰めたRapsodyといった、(メインストリームではない)個性派たちの作品は、アルバムを通してよく聞いたと思います。

特にブラックフェミニズム的なコンセプトをぶちあげたRapsodyのEveには、ものすごく感動しました。

そして、わたしが夢中なのは、やっぱりMIKEです。

2017年に彼のMay God Bless Your Hustleを聞いたときは、vaporwaveやオンラインアンダーグラウンドのエクスペリメンタルミュージックを思い出しながら、どこからどのようにして生まれたのかがまったくわからないミュータントヒップホップだと感じました。とにかく疑問符だらけだったのですが、2018年末にEarl SweatshirtのSome Rap Songsを聞いて、MIKEのクルー、sLUmsや周辺のミュージシャンについて知っていくことで、彼の音楽がヒップホップの歴史や現在のシーンとつながったように感じられたんです。2019年は、MIKEやsLUmsのドキュメンタリー映像を見て、そういうことなのか! といろいろなことがわかった年でした。

MIKEの曲をDJでかけていたら、Dos Monosの没 a.k.a NGSくんから話しかけられたことがありました。没くんはMIKEがすごく好きみたいで、その影響がばっちりとあらわれているソロの曲はかっこいいです。一緒に曲をつくってほしいし、二人がつながったらおもしろいと思っています。

もうひとり、夢中になったラッパーがいます。英国、ノーザンプトン出身のslowthaiです。

彼は、一言でいうとパンク。いいすぎかもしれませんが、まるでジョニー・ロットン/ジョン・ライドンのようです。

slowthaiのアルバム、Nothing Great About Britainは、ほんとうによく聞きました。Daveよりも、わたしはslowthaiが好き。ボリス・ジョンソンの生首をぶん回してラップするslwothaiのようなジョーカーが、わたしたちの国にも必要だと思います。

Ariana Grandeはもちろん、Lana Del Rey、The 1975、Purple Mountains、Giant Swanなど、語りたい音楽はほかにもいろいろあったのですが、とりあえずはこんなところでしょうか。

とりとめもなく、だらだらと書き綴ってしまいました。

2020年もおもしろい音楽と出会いたいですね。

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