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京急の街「京急田浦」|工場と海上自衛隊と商店街と

京急の街シリーズ第4回。「京急田浦」。京急シリーズはエッセイ風というか、僕の日記として、書き進めることにしてみた。

住んでいる人には大変失礼なんだけど、京急田浦駅の駅舎を出て、目の前を商店街を見たとき、「ここに撮りたいものが本当にあるんだろうか。今から歩いて、その時間は無駄にならないだろうか」と思ってしまった。

その日の朝、金沢文庫に行こうか、京急田浦に行こうか、はたまた、横須賀中央駅まで行ってしまおうか、僕は迷っていた。京急田浦について少し下調べをしても、なにか大したものがある気にはなれなかった。

あえて言うなら追浜駅で感じた何かの続きがあるような気がしたから、なんとなく気になってしまって「よし、今日は京急田浦に行こう」と決めたのだった。

京急田浦駅とは

京急田浦駅はKK55、品川から見て、横須賀中央のちょっと手前という位置。普通しか停まらない。品川からだと、金沢八景まで特急、そこから各駅停車。合計54分、580円。

駅舎を出ると商店街と国道がいきなりある。国道では商店街の存在を無視するかのごとく車はスピードを出して往来し、一方で商店街はというとちらほらと人がいるくらいで、活気がないように見えてしまった。多くの店がシャッターを閉めている景色がその印象を一層強くしたのかもしれない。

駅前に露頭に迷う老人、スローペースに行き交うおばさん。

この街に働き盛りの人や学生が集まっている気配はない。なにかそこで新しいことが起きている予感もしない。

他の街の発展や時代の変化から取り残されてしまっているんじゃないか、とさえ感じた。

そんな活気を感じない商店街の中でもオシャレめに頑張っている店も発見。でも、ここにはお客さん来てくれるんだろうか、と思ってしまった。

国道を渡って、通りの向かいへ。それでも街の印象は変わらない。

しばらく進むとちょっとしたアーケードの商店街があった。

スズランの形をした電灯。この商店街ができたときは拘りだったんだろうなぁと思う。

今ではただの古びた電灯にしか見えないんだけど、よくみると、こんな電灯見たことないんだよね。こういうところに拘りを持っているのは、街への愛を感じる。

土日だからなのかわからないけど、僕が通ったときは、京急ストアと他数店舗がやっている感じで、写真を撮るのもなんだか申し訳ないような気持ちになった。

この辺で、もう一度、引き返そうかな、と思った。でも、今見るとこの街の一つの大事な景色に見えるのだから、街って不思議なもんです。

僕は、古びただけに感じる人気の感じない街を、なにかある、と言い聞かせて海側に進んだ。

下調べした限りでは、海の方に行かないと、それがわからない、と考えていいた。

東芝ライテックと工場地帯

何を調べたのか。

僕は最近京急の駅に降り立つ前に、30分くらいはその駅のことをネットで調べる。

当駅は海から程近い丘陵地の中に位置する。駅周辺は主に住宅街である。すぐ北側を国道16号線が通っており、その周辺には商店も多い。国道を挟んだ臨海地区は工場や港湾施設が立地している。
(略)
東芝ライテック 本社
ー東芝クリーンルームファーム横須賀 - 2016年に閉鎖
(wikipediaより)

東芝ライテックは今もあるが、東芝クリーンルームファーム横須賀は植物工場だったようですでに閉鎖されているらしい。

僕はこの「国道を挟んだ臨海地区」を見ないと、この街が見えて来ない気がしていた。追浜や金沢八景で見てきたようのと同様、京急の駅は駅前で街の雰囲気がわかるものではないんだと思う。駅前の雰囲気というのはあるにせよ、その駅前を作る理由がもっと海の方にある、ということがよくある。

そうして、僕は「なにかあるのではないか」という気持ちを捨てずに、海の方に向かってゆっくりと歩き続けた。「TOSHIBA」の看板が見えたとき、妙に気が引き締まる気持ちになって、国道を渡る足が早くなった。

遠い世界。工場と廃墟と軍事施設。

TOSHIBAより南側から海の方に回るとまずはセメント工場がある。

この日は土曜日だったけれど、それでも動いているのがわかる。

一方、この道の反対側には別の工場がある。どうやらTOSHIBAライテックなのだけど。。。

正直、本当か?と思った。

建物は古く、まるで戦前からある建物がそのまま保管されているような雰囲気。これが今も動いている会社、しかもそれが超大手企業子会社の本社というのは、想像し難かった。

この建物は何なんだろうと思いながら、道を進む。

セメント工場が終わると一気に視界が開け、何隻もの軍艦が目に飛び込んでくる。

それは三笠公園に展示されているような動かぬ安心感がある、展示物という雰囲気のものではない。「すぐに動けるように」と待機している現代の軍艦である。

平凡に生きている自分とはずいぶん遠い世界のものに感じる。それが突如目の前に出てくるのだから、異世界に来たような気分になる。

一方、工場地帯側の海岸線、今自分が歩く道沿いは、全く現代的な感じがしない。多分昭和からこうなのだろうと思わせるような古さがあり、引き続き、「ここが東芝ライテックなのか?」と疑問を持ち続けながら歩く。

海突き出たいくつかの設備は、今にも壊れそうで、「立入禁止」などと、そのまま放置されているものまであったりする。

船がこの上に乗って、そこから海に下ろすのだろうか。
なんとなく、そんな想像をしても、実際にどう使われるのか、わからない。

この施設が使われている頃には、ここでは多くの人が馴染みのある光景だったのだろうか。

この場所にいると、不思議な気持ちになる。

少し先に浮かぶ軍艦は最新の設備を整え、一番HOTな状態を保とうとしながら、今にも動き出しそうな気配を漂わせて、海の上にじっとして動かないでいる。

一方で、こっち側海岸線は、いつの時代から取り残されているのかさえわからず、かつての動きを想像させつつも、今は動くはずのない姿を見せている。

その間に僕がいて、釣りを楽しむ人がいて、弁当を買って工場に戻る人が歩いている。

なんか、どれもが混ざり合わない気がするのに、一つの街として一応存在している。

あの駅前の閑散とした雰囲気は、どこの時間と一緒に生きているのだろう。

面白くなってきたところで写真を撮っていたら時間もだいぶ経ち、そろそろ駅に戻ることにした。同じ道を引き返すのも面白くないので、TOSHIBAライテックを一周してみようと思った。

すると、さらに、不気味な建物に出会い、僕はまた足を止めてしまった。

これが「東芝クリーンルームファーム横須賀」?

現代の植物工場?本当に?

でも住所はこのあたりになっている。

これがなんの建物なのかは結局わからないのだけど、とにかく、なにか、不気味さがあった。

もしこの建物がまだ動いていて、働いてる人がいたら、本当にごめんなさい。

でも、例えるなら、廃墟となった軍事病院のような、なにか大変そうな過去を感じさせるような、とても植物工場とは思えない建物だった。

歴史を見て、街をもう一度見ると、違う街に見える

街は不思議だ。というか、街を見る自分が不思議である。

なにか物事の背景や歴史に触れると、とたんに見え方が変わる。
これだから街を撮ることはやめられない。

例えば、途中でお見せしたこの商店街の写真だって、あの古い、不気味な工場の建物と軍艦を見たあとだと、いろんな想像をしてしまう一枚になる。

帰り道に商店をいくつか撮った。

そうして駅に着いて、「よし、帰ろう」と歩道橋の上から写真を撮る。

車で通ると、この街の風景は、本当になんでもない風景として、気づかぬ間に通り過ぎていく。

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京浜急行が走る街を撮っています。 これまでフラワーデザイン、情報システム、採用、広報、カメラマンをやってきました。

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コメント (6)
kkwtksさん、コメントありがとうございます。昔お勤めだったのですね。港の雰囲気は独特ですよね。
昔と変わりましたか?

金沢八景から汐入あたりは駅前も海側も、歩いてみると面白いですよね。街がどのようにできてきたのか、調べ考えながら歩くと、なかなか考えさせられます。
はやしけいじさん、コメントありがとうございます。東芝ライテックさんに出張で通ってたとのこと、貴重なお話をありがとうございます。取り扱う製品の需要の波が工場の姿も変えていったんですね。

僕はこの風景の面白さは旧が壊されずに新が建っていることだと思います。歴史を感じますね。
昔と変わったのは、勤めていた会社が移転し、建屋が全てなくなりました。
たまにバイクでぶらっと走りに行くこともありますが、それ以外はあまり変わってない感じですね。

ただ、古い建物とかはどんどん取り壊されていってる感じですね。
かつて会社の敷地だった場所の中には、古いドックや大きな防空壕(弾薬庫?)などがありましたが、今はどうなっているのやら。

あのあたりは東京湾要塞として首都防衛の重要拠点となっていたのもあり、戦争遺跡がたくさんあって、色々見て回ると興味深いものがありますね。
kkwtksさん
古い建物はどんどん取り壊されている感じなんですね!僕はかなり古い建物が残ったまま、放置されてるなぁ、と思ってしまったんですが、たぶん、それでも、新しいものに変わっている部分がたくさんあるのでしょうね。

会社の敷地に古いドックや防空壕があるとは、、、歴史を感じますね。仰るとおりこのあたりを調べるとかつて首都防衛拠点として様々な軍事要塞が作られていたことがわかりますよね。もう少し横須賀の方にも様々あると思います。

一つずつじっくり街の歴史を見ていきたいと思っています。
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