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親や生育環境だけで人生は決まらない _フカイのまとめ<育児編#4/4>

現代の子育ては、ホモ・サピエンスが何十万年かけて培ってきた子育ての習性や形態と大きく違っている。核家族による子育ては人類の子育て方法としてはイレギュラーで、難易度が高い。

そんな説明を前回しました。

複数の大人で育てるのが正しい、などと主張したいわけではないんです。

伝えたいのは、現代の生活システムとして核家族が当たり前に採用されているけれども、歴史を見ていくといまの育児は子どもを育てていく体制としてとても難易度が高いこと。うまく出来なくて当たり前ですよ、ということです。

それを聞いたところで、抱えている子育ての悩みそのものは解決はしませんよね。

個人の問題ではなく構造的問題

ただ、育児がうまくできない……などと悩んでいる方がいるとしたらそれはあなたの能力による問題ではないんです。

能力の高低ではなく、生物学上の習性や社会構造として無理がある。個人の話ではなくて社会の構造的問題です。

だって、いまの日本に住む多くの人が採用している子育ての環境ややり方だと、子育て能力を高めていこうとすることすら簡単ではありませんよね。

かつての人類ならば、経験を持った先輩たちが複数人いて、初めての出産でも一緒に育てていくことで培うこともできました。

それがいまは、子育て未経験者だけでやらなければならないことが多すぎます。これは相当高レベルな課題です。

即戦力を求められる新入社員状態

この状況を仕事でたとえると、上司もいないしメンターもいない職場環境で、いきなり経験したことがない仕事を任せられて成果を出せと言われている状況です。

遠方に暮らす祖父母がメンターに当たるのかもしれませんが、1つ屋根の下にいていつでもチェックしてくれるようなOJTはしてくれませんからね。

親だけで育てようと最初からするのではなくて、どんどん周りにいる他人の力を借りて連携したほうがいい。家族とは別の共同体をつくり協力して助け合わないとできないぐらいのことです。

ただ、連携したほうがいいと言ってもそれ自体が難しいと感じる人もいるでしょうし、まずは現代の子育ての厳しさ・ハードさを当事者が認識すると「できなくて当然」と少し楽になると思います。

子どもがいない僕のような周囲も、もっとそのハードモードを認識して構造を変えていく道を探るしかない。

保育園が足りないことや待機児童が解消されない問題は、はっきり言って論外です。

いまの国内にいる乳幼児全員に保育園を無料で開放して、保育士さんの給料を上げても、人数を増やしても、国家予算全体では大した金額にならない。国はもっと子どもに予算を割くべきだと切実に思います。

あるいは、保育園だけでなく地域の大人全員で子どもの面倒を見る状態がつくれると良いのですが、まだいろいろステップがありますね。

子どもは誰が育てるもの?

日本の子育ては、親に対する保護者責任が強いところもありますよね。

国による子育て家庭へのきめ細かい支援がある北欧〜ヨーロッパ諸国などは、子どもたちへ投資することが将来の自分たちの国を豊かにすると国民全体が納得しているところがあります。

子どもを社会的存在ととらえて社会で育てている意識を強く感じるといいますか。対して日本は、社会意識も育てている親の意識も、子どもの責任は親にあるとの考えが根強いです。

でも、歴史のケーススタディから抽出してみても、世界を愛で動かした偉大なるガンディーを父に持ちながらグレた長男、実の父親から殺されかけても春秋五覇の筆頭となった重耳はじめ、挙げればきりがないほど子どもの人生は親だけでは決まりません

親が子どもの人生をコントロールすることはできません。

子どもは「欠けている存在」ではない

これは少々極端な例ですが、かつてのイスラーム社会では、「半人前の存在」と考えることは「奴隷」の考え方と同じでした。つまり、子どもだからと人格ある一個人として見ていない・足りない存在として扱うことは、イスラーム世界でいう奴隷に対するそれと変わらないということです。

子どもであっても一個人であって、「欠けている存在」では別にないわけです。

親は、子どもの人生を背負い込むような責任の持ち方をしなくていい。子どものほうも、親や環境の影響はすごく受けるけれどそれが幸せな人生を送れるかどうかを確定させられるわけではない。歴史が証明してくれています。

ここからは歴史の事実から受け取ったというよりも僕が感じていることですが、子育てにおいて大事なのは、子どもの存在承認ができているかどうか。育て方が上手いか下手かはどうでもよくて、子どものそのままを愛しているかどうか。

それさえできていれば、親の役割は十分だと思うんですよね。



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編集・構成協力/コルクラボギルド(平山ゆりの、イラスト・いずいず

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株式会社COTEN 代表取締役。人文学・歴史が好き。複数社のベンチャー・スタートアップの経営補佐をしながら、3,500年分の世界史情報を好きな形で取り出せるデータベースを設計中。