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七六六五日の物語

霧雨の朝

風に舞う霧雨の振る中、傘を手に持って学校に向かう途中のゴミ収集場所。木製電柱の下、毎週火曜と金曜がゴミの日と決まっている。前の晩から出す人や、分別をしない人もいる。ビール瓶が袋から飛び出している。いくら何でもこりゃあひどい。酒屋さんに持って行けば一本五円になるであろうに。駄菓子屋さんで五円あればアイスクリームガムが買えた。アイスクリームガムとは丸い色付きのガムが紙製の箱の中からボタンを押すと出てくるもので、出てくる色によって一〇円分とか二〇円分とかのお菓子と交換できる。もちろんハズレの白玉もある。五円握りしめてボタンを押す子供にとっては一世一代の大博打だ。後ろ髪をひかれる思いで学校へと歩を進める。まだ今の様にカラスの被害に逢わない為に、『収集所にはネットをかぶせましょう』とか『ゴミは各市町村指定の中身の見える透明な袋で出す事』なんていう取り決めもなかった。前日に終電に間に合わなかったサラリーマンだろうか。ゴミの中で幸せそうな顔をして寝ている。表情を見る限り彼にぴったりの枕だったのであろう。うっすら笑顔を浮かべて霧雨の中大いびきだ。

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