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邪教の教え

その村では、ギ=ゾゲバモスという恐ろしい神が信仰されていた。ギ=ゾゲバモスとは村の古い言葉で、『深淵より来たるもの』という意味である。はるか昔にどことも言えない深く暗い場所からやってきて村を作ったのがギ=ゾゲバモスだとされていた。神の意にそぐわないものには恐ろしい天罰が下るとされ、村の信者たちは今でも神の定めた厳しい戒律を守って暮らしている。

まずギ=ゾゲバモス教では、食事に関して厳しい戒律がある。1日において信者は、野菜や果物、肉あるいは魚、穀物をバランスよく摂らねばならない。年に一度の祭りの日、そして婚礼の日、そして大切な友人との別れの日以外は決して暴飲暴食をしてはならず、甘いものも食べ過ぎてはならない。また酒は基本的に夜しか飲んではならないとされていた。但し夜働いている者に関してはその限りではなく、仕事を終えて朝帰ってきた者が眠る前に酒を飲むことは許されていた。しかしいずれにせよ酒を飲み過ぎることは厳しく禁じられていた。食事に関する戒律を破る者には神から恐ろしい天罰が下り、醜く太ったり取り返しのつかない病気になったり、便秘になったり肌が荒れたりするとされていた。

日々の社会生活の中にも、守るべき厳格な戒律がたくさんあった。知り合いと会った時には挨拶をせねばならない。間違いを犯した際にはきちんと自分の非を認めて謝らなければならない。感謝の気持ちを言葉で伝えることを忘れてはならない。金品の貸し借りは控えねばならない。過度に賭け事にのめり込んではならない。困っている人がいたら助けなければならない…その他守るべきとされる戒律は50項目にも達し、いずれも守らない者は経済的に破滅したり周りから孤立したりといった天罰が下る。しかもこれはただの言い伝えではなく、戒律を破ったものには実際に天罰が下るのだった。

ギ=ゾゲバモスの威を恐れ、村は今でも神の教えを守る敬虔な教徒が多い。伝説によればギ=ゾゲバモスは、人間の体にアルパカの頭を持ち、頭頂部にはニワトリのトサカ、背中には孔雀の羽根があり、尻からはピューマの尻尾が生えた恐ろしい姿をしており、餌に飢えた子猫のような声でノコノコナーオと鳴くのだそうだ。

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