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#ノーラン

クリストファー・ノーランの執着心(『ノーラン・ヴァリエーションズ クリストファー・ノーランの映画術』レビュー)

 はじめて『メメント』(2000年)を見た時のことは、今でも忘れられない。十分間しか記憶が保持できない前向性健忘の男、レナード・シェルビーの視点で語られるこの作品は、〈順行する過去の物語〉と〈逆行する現在の物語〉がラストシーンで交差するという、きわめてアクロバティックな構造を持っていた。喩えるなら、建築物を構成する精巧なパーツが一つずつ並べられていき、ラストシーンでその大伽藍の相貌が霧の彼方に朧げに浮かび上がるような。エンドロールを眺めながら、頭の中で目を凝らし――奇妙な表現