2021年衆議院議員総選挙と「特別支援教育」:③日本維新の会 @osaka_ishin @gogoichiro

ついにきた。
シリーズ「衆院選で特別支援教育は話題になるのか 日本維新の会」編

以前から注目していたから今更なんだけど、ボリュームが桁違い。
先に結論を書くけど、ある。「特別支援」の項目が、ある。

しかもえらいド正論だった。

維新が大変なのは「政権構想」を持っていること。
他の野党に政権担当能力がないとか、そういうことではない。
ただただ、全分野を網羅していること。
なおかつ、構造改革を行っていること。
これにより、既存の政策枠組みだけではとらえきれない。

つまり、どこがどう子どもに関係してくるか、よく勉強しないとわからない。だから大変だった。

おそらく、これを何かの間違いで読んだ維新関係者は「いや、そうじゃない」と思う部分があるかもしれない。そこは、あくまでこれがド素人による私的なメモだと思ってどうか優しくご教示いただきたい。

日本維新の会の子ども関係政策

 ここでは、2021年総選挙公約をベースにまとめる。また、議員立法でそれっぽいものを提出していたら埋め込みURLの形でも掲載していく。

日本維新の会 政策提言維新八策 2021
4 多様性を支える 教育・ 社会政策 、 将来世代への徹底投資

教育
(1)無償化・予算措置
 ・幼~大専無償化(憲法)、給食無償化(法律)、塾代バウチャー
 ・予算:財務省から独立、対GDP比で基準
(2)制度改革:教育行政選択制
(3)教員待遇:負担軽減(部活、校務分掌、ICT)
(4)カリキュラム
 ・インターン、デュアルシステム、飛び級・留年・再学習、ディベート
 ・性教育、主権者教育、近代史教育
(5)ICT化:デジタル教科書の無償化など
(6)不登校・いじめ対策、特別支援
 ・SC常駐、フリースクールの促進
 ・特支専門性向上、療育拡充
 ・日本版DBS(無罪証明)、教免再交付の拒否
(7)生涯教育
子育て・保育
(1)待機児童対策
 ・小規模保育・病児病後児保育事業の拡大
 ・保育にかかる費用について原則非課税(直接給付)
(2)保育所・保育士待遇:同一労働同一賃金、働き方改革
(3)特別支援
 ・医ケア:通学支援の拡充、対応型の保育園の増設
 ・多胎児支援
 ・児相の弁護士等配置、機能分担、一時保護の通学
 ・ひとり親支援、養育費建て替え・強制執行
(4)少子化対策
 ・N分N乗方式(世帯単位課税)
 ・産育児一時金の増額・簡素化や妊婦健診償化
(5)共同親権
 ・
 DV(家庭内暴力)被害等に十分に配慮をしながら導入

まって、どうしよう。このブログいらないかも。
すでに教育関係網羅されたんだけど。しかもなんか厚労省管轄にも特別支援ってがっつり書いてるし。なにこれ。

とりあえず、まずは特別支援だけを抜粋しておく。
まずは1個目。私は歓喜。なぜか。

「やっとこのシリーズで文科省所掌業務がキタ~~~~~!!!!!!!!!!!!」

いやね、長かった。地味に。
だって「障がい児の学習」って書いてるんですよ??
どんな政策か気にならない?興奮しない??
では読んでいきましょう。

(6)不登校・いじめ対策、特別支援
196.障がい児への学習・キャリア支援の改善に向けて、教員免許取得時のカリキュラム改善や部門別採用などを通じ、専門知識をもった教員の育成に努めます 。

これね、もう一回いうね。「障がい児への学習」って書いてるんですよ。そして「部門別採用」って書いてるんですね。これは地味だけど特筆すべき表記。

学校教育法における、特別支援教育の目的を見てみましょう。

第七十二条 特別支援学校は、(中略)小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000026

教育と、「学習上又は生活上の困難を克服し自立を図る」ことが目的なんです。ところが、どうしてもこの後段部分の比重が高くなってしまう。自立学習とかね。だから高等部ではATMの使い方とか、職業実習とかがカリキュラムに組み込まれている。

維新のスタンスで見えるのは、徹底的に「力のある子どもを育てる」という姿勢。ここでいうと「いやいや、障害があるからといって、学習を主目的から外すのはおかしいでしょ」という姿勢。食っていくための手段。選択肢としての学習。個別最適化された教育的サポートを行うための「部門別採用」。理にかなっている。

これは他党とは大きく異なる。他党はあくまで、障害福祉を拡充するという手段が、幸福追求・権利擁護という目的につながっていた。維新は、ここだけでは「目的」がわからない。つまり、障害児の学習が「なぜ」解決すべき課題なのかという観点。ここは今後、よく調べていきたい。いずれにしろ具体的でわくわくする提言。

お次は療育について。

197.障がい児がライフステージを通じて一貫した療育支援を受けられるよう、療育(発達支援)施設の拡充など地域における療育支援体制を構築します。

なんと!弊職が出てきました。
療育(発達支援)とは、発達が気になる子どもに対して行う支援のこと。

児童発達支援は、障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助である。

考えるのがめんどくさい方には、「障害児用の公金・公民営の塾」といえば少しは伝わるかな?全然違うんだけどイメージね。

所管:厚生労働省
分野:障害福祉サービス(根拠法は児童福祉法)
題名:障害児通所支援事業(児童発達支援、放課後等デイサービス)

さて、ライフステージを通して一貫した療育を受けるということについて。療育とは、児童福祉法でいう「児童」、つまり高校卒業までが一般的。とすると、少し現在の枠組みと異なるということだろうか。

私の課題意識としては、放課後等デイサービスの定員問題がある。契約主義、しかも1日10名(or15名)。質の高い児童発達支援センターなどはすぐに定員が埋まってしまう。さらに、未就学対象の児童発達支援事業所から就学により放課後等デイサービスを探す際に、「放デイは既存の子でいっぱいです」と言われてしまう。だって12年間退所しなくていいんだもん。

だから、切れ目のない支援ができない
枠も、契約主義も、療育を受ける基準も、専門家養成も。そして、その先の地域移行、就職、社会的自立についても、バラバラになっている。

施設の拡充はもちろんのこと、地域の中で生活できるよう一貫した体制を構築するためには、児童福祉法と障害者総合支援法の垣根を超えた、縦割りの打破が重要になってくる。放課後等デイサービスと就労移行支援事業所の多機能化とかね。すごく期待が持てる項目でした。

すごいね。まだ2項目だよ。このあと綱領とか読むんだよ。
しかも維新、社会保障を含めた三位一体改革も出してる。
なんか障害者年金とかベーシックインカムとか生活保護とか言ってたな。そっちも読まないといけないのか。

医療的ケア児について、看護師らを車両に同乗させる通学支援の拡充や医療的ケア児対応型の保育園の増設など、当事者とその家族への支援を促進します。

ん、これは教育では?と思ったけど違うのか。これはハード面よりも縦割りの方が大変かも。病児保育と医療型児童発達支援、病弱特別支援教育、医療的ケアはより太い横ぐしに変えた方がいいかも。

自治体の支援が行き届かない多胎児家庭の実態を把握し、産前産後ケアの充実など適切な支援体制整備を促進します。

はい。これ。多胎児のお母さん(あえてお母さんと書きますが)は大変です。そして、金銭的支援はあるけれど、サービスはものすごく足りない。今は感染症の時期。片方が風邪をひいたら、2人とも保育園を休まなくてはいけない。ここまではきょうだい児と同じ。

だけど、母子のどちらかでも障害や疾病があると話は別。たんじゅ計算で2倍、レスパイト(休息)が取りにくい。さらに、さっき出てきた「療育」に連れて行くのも大変。公園で遊ぶときにもパパママがいないと安全管理が大変。障害児の観点からも必要。

重大な児童虐待を撲滅するため、弁護士等の専門家を常駐させるなど児童相談所の機能強化と、ニーズに応じた機能分担を推進します。また、特別養子縁組の促進や里親委託率の向上のため、自治体や民間支援団体との連携を強化します。
児童相談所の一時保護所における混合処遇を廃止し、義務教育を受けられない保護児童は原則通学できるよう子どもの保護環境を改善します。

はい賛成。

コロナ禍で特に困窮しているひとり親支援を拡充するほか、社会問題化している養育費の不払いについて、国が立て替えた上で不払い者に強制執行できる制度を創設し、子どもが両親の離婚によって経済的な不利益を被らない環境を整えます 。

とにかく、維新が「インクルーシブ」をどう捉えているのか知りたい。我々はHPの奥地へと向かった・・・

党綱領

政治理念
自立する個人、自立する地域、自立する国家を実現する。
基本方針
7.機会平等

国民全体に開かれた社会を実現し、教育と就労の機会の平等を保障する。機会平等。これだけではぱっとしない人も多いと思うので、代表メッセージを読んでみたいと思います。

教育と就労の機会平等。「就労」が入っているのがポイントですかね。これだけではぱっとしない人も多いと思うので、代表メッセージを読んでみたいと思います。

3つの政治理念と同時に、「多様な価値観を認め合う社会」も目的に掲げられています。

(3つの理念と)同時に、多様な価値観を認め合う社会を実現させたいとも考えております。

続いて、大阪で取り組んできた3つの改革という「手段」、財政黒字化という「結果」を強調したうえで、その「目的」が何なのかが明らかになります。

その果実を教育に投じ、全国に先駆けて私立高校の授業料実質無償化を実現しました。
私たちは、保育園、幼稚園から大学、大学院等まで教育の完全無償化を実現させたいと思っています。

経済的な理由が、教育の機会平等の阻害要因と定義しているようです。また、国民民主党などが言及した「リカレント教育(学びなおし)」も含んでいるようです。

教育の完全無償化を実現すれば経済的な理由で進学を断念する人がいなくなります。教育費負担がなくなるので子供の数が増えるかもしれません。もう一度学び直したい人に再チャレンジの機会を与えることができます。誰もが学びたいときに学べる機会平等の社会を作り切磋琢磨を促す。

理念

それでは本題です。ここでは「誰を、どんなふうにしたいのか」という基本理念に該当する部分です。

インクルーシブ教育:公約への文言記載なし

おっと、3党目にしてインクルーシブ教育の文字がない。
これはレアだ。何かあるはず。

そう思ってHPの奥地に足を踏み入れると…

「昔の価値観」VS「ダイバーシティ」
停滞か、維新か。 - 日本維新の会 衆院選2021マニフェスト|維新には、停滞を打破する具体策がある。https://daikaikaku.o-ishin.jp/manifest/share9.html

あった、それっぽいことば「ダイバーシティ」

さらにマニフェストにおいては、

4、多様性を支える教育・社会政策、将来世代への徹底投資
・次世代の子どもたちへ、教育負担をゼロへ
・出産・子育ては社会全体で徹底支援
・ジェンダーギャップ解消と多様性を促進
https://o-ishin.jp/shuin2021/ishin_manifesto.pdf

維新のすごいところは、教育と福祉を分けないこと。
他党の特徴として、人権政策と教育格差是正を分けて考える傾向がある。
これはもちろん大事なこと。一方で、各分野の中に通底するものであれば一緒くたにした方が効率がいい。「教育の中にも差別がある」という認識が広まるだけで、世の中は変わっていく。

インクルーシブとダイバーシティの違いはご自身で検索してみてください。

政策各論

金銭面

幼保小中高大専:教育の全過程完全無償化(憲法に規程)
保育:関連費用の非課税化+利用料無償化
出産育児一時金:増額・簡素化
妊婦健診:完全無償化
予算:予算枠を財務省の取りまとめから独立、GDPの一定割合を必ず子どものために配分

給付:子育て費用の直接給付重視
・病児病後児保育・ベビーシッターや子育て世代向けの住宅利用等の子育てバウチャー
・デジタル教科書の完全無償化
・教育バウチャー(塾代バウチャー)制度の導入・普及
・認可保育所の運営補助金を自治体が決める

あまりにも膨大なので、1個ずつコピペする方式で行きます。

まずは費用負担について。維新は憲法改正を提言しています。
憲法には「機会平等」を定めるようです。

すべての国民は経済的理由によって教育を受ける機会を奪われないことを憲法に明文化します。

そして、法律によって「保育、幼稚園から大学まで」すべて無償とするようですね。

機会平等社会実現のため、保育を含む幼児教育から高等教育(高校、大学、大学院、専門学校等)についても、法律の定めるところにより無償とします 。

国民民主党と異なるのは、保育園の枠組みを残すところでしょうか。また、関係費用について大阪では塾代助成なども行われています。ここでは言及はないものの、国の法律で無償化するものと、地方に権限と予算を委譲して自治体の努力で無償化するものを、明確に分けているのではないでしょうか。

子どもの数が多いほど税負担の軽減が大きくなる「N分N乗方式(世帯単位課税)」を採用し、子育てによる経済的負担を軽減します。

このあたりは子育てにおける経済負担の話ですね。

妊娠・出産にかかる費用や手続きがいまだ大きな負担になっている現状を見直し、いわゆる出産育児一時金の増額・簡素化や妊婦健診にかかる費用の完全無償化など、妊娠・出産への負担の最小化を図ります。

周産期の負担軽減については、立憲民主党も掲げていたと思います。

制度論

障がい者の社会参加に必要な情報アクセスやコミュニケーション手段の保障、デジタル・ディバイド(情報格差)解消(情報保障の充実化)
手話言語法の制定
性的同意年齢の引き上げ・構成要件の見直しなど、性被害の実態に即した刑法改正
共同親権・共同養育導入推進
※DV(家庭内暴力)被害等に十分に配慮
療育(発達支援)施設の拡充
フリースクールの単位参入認定

障がい者表記はどの党も同じですね。
ここで重要なのはフリースクール。引きこもり政策(この言葉どうなん?)はあるけど、学齢期の不登校対応として「教育機会確保法」が事実上、骨抜きにされている。成立の経緯はすばらしいんだけど。単位認定させるための仕組みづくり、大事ですね。

特別支援でいうと、やはり療育環境の構築。早期療育・改善が目的なのも含めて、伴走型発達支援の環境づくりが必要。

専門職養成・採用・研修・働き方改革

教員の負担軽減(校務分掌や部活動の見直し、校務の情報化)
教員養成課程・採用試験・兼業副業規定等の見直しなどを含めた教員免許制度の抜本的な改善を通じて、社会経験を経た多様な人材が教員として活躍
臨床心理士・公認心理師を始めとする常勤スクールカウンセラーの配置
保育士の働き方改革を推進し、保育士不足の解消
抜き打ち調査の実施権限を付与
日本版 DBS・性犯罪歴の証明届出義務化を検討
重大事故から指導歴に至るまで情報公開を徹底し、保育の質の向上
弁護士等の専門家を常駐させるなど児童相談所の機能強化

野党で維新と共産党だけなんですよ。特別支援教育にかかわる教職員の「養成・採用・カリキュラム・研修」がパッケージになってるの。すごない?

配置定数などのハード面は整備できても、どうやって子どもの困りごとに寄り添う人を育てるかというソフト面に弱い政党が多い。そんな中で専門職の配置というゴールを示したり、教員養成課程の改善という大ナタを振るってみたり、善しあしはさておき一考に値するもの。

特別支援関係の政策まとめ

教育(6)不登校・いじめ対策、特別支援
194.臨床心理士・公認心理師を始めとする常勤スクールカウンセラーの配置を全国的に促進し、いじめや不登校など学校内で生じる問題解決を図ります。
195.不登校児が通うフリースクールの単位参入認定を促進する等、現行の学校や教育に馴染めなかった児童・生徒に多様な居場所を提供します。
196.障がい児への学習・キャリア支援の改善に向けて、教員免許取得時のカリキュラム改善や部門別採用などを通じ、専門知識をもった教員の育成に努めます 。
197.障がい児がライフステージを通じて一貫した療育支援を受けられるよう、療育 (発達支援 )施設の拡充など地域における療育支援体制を構築します。
198.教員から子どもへのわいせつ事件が後をたたない事態に重く鑑み、教職免許を再交付しないことを可能とする立法に続 き、過去の性犯罪経歴の照会や無罪証明書の発行ができる「日本版 DBS」の創設を検討します。

子育て・保育(3)特別支援

医療的ケア児について、看護師らを車両に同乗させる通学支援の拡充や医療的ケア児対応型の保育園の増設など、当事者とその家族への支援を促進します。
自治体の支援が行き届かない多胎児家庭の実態を把握し、産前産後ケアの充実など適切な支援体制整備を促進します。
新たな社会問題となりつつある育児と介護のダブルケア問題解決のため、自治体に実態調査・把握を促すとともに、育児・介護の縦割りに阻まれない支援体制を整備します。
重大な児童虐待を撲滅するため、弁護士等の専門家を常駐させるなど児童相談所の機能強化と、ニーズに応じた機能分担を推進します。また、特別養子縁組の促進や里親委託率の向上のため、自治体や民間支援団体との連携を強化します。
児童相談所の一時保護所における混合処遇を廃止し、義務教育を受けられない保護児 童は原則通学できるよう子どもの保護環境を改善します。
コロナ禍で特に困窮しているひとり親支援を拡充するほか、社会問題化している養育費の不払いについて、国が立て替えた上で不払い者に強制執行できる制度を創設し、子どもが両親の離婚によって経済的な不利益を被らない環境を整えます 。


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