霧山リュウ

北海道・札幌でアマチュア小説や絵本(文)を書いています。noteは創作大賞で初めて登録…

霧山リュウ

北海道・札幌でアマチュア小説や絵本(文)を書いています。noteは創作大賞で初めて登録しました。一応、最終選考に残り、感謝です。グルメ推理小説の幽霊執事シリーズ他、日常に潜むミステリーをメインに執筆。本も出しております。

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初めまして、本書き・霧山リュウです

まだ始めたばかりですが…小説をアップしていきます。 連載作品:「幽霊執事の家カフェ推理」 独身OLが意を決して買ったマンションに、「それ」はいた。見た目は青年・中身は老執事の幽霊が送る、おいしいミステリー。 いろいろな世代、ポジションの方に広く楽しんでいただける小説だと思います。どうぞよろしくお願いします。 「もっとみる」を押すと、こちらからお読みいただけます #小説 #読書 #料理 #社会人 #SDGs #多様性 #ミステリー #lGBTQ #幽霊 #ミステリー小説 #推

    • 幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ7(最終話)

      年明けをだいぶ過ぎてから、塔子は麻美や大志、イヴと一緒に江美里のカフェを訪れた。江美里たちも忙しさがひと段落したタイミングらしく、遅めの新年を祝うお茶会に招いてくれたのだ。 オーナーからのプレゼントとして、全員にガレット・デ・ロワがサービスされた。ガレット・デ・ロワは、シンプルなアーモンドクリームが香ばしいパイで、フランスでは年始に欠かせないお菓子だ。 中に一つだけフェーブという小さな陶器の人形が仕込まれていて、当たった人は王様として一年、祝福があるという。 この店がた

      • 幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ6

        空振りに終わる可能性も高いが、塔子(とリュウ)は江美里と公園に来た。カフェに集合したとき、お互いに何となく黒い服を着てきたのを見て、やる気満々だねと笑った。二人とも、重い緊迫感を少しでも払拭したかったのかもしれない。 倫巳は犯人から見た狙いやすさを意識しているのか、コートの前を開けて現れた。その下は濃い紫のジャケットだ。襟にはラペルピンまでついていて、中のシャツは淡いオレンジ。いつものように、細身のパンツを履いている。これを着こなせるのはこの人くらいだ、と塔子は思った。

        • 幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ5.幽霊執事からの挑戦状

          幽霊執事からの挑戦状 親愛なる読者のみなさまへ、僭越ながら、わたくしから挑戦状をお出しいたします。 baci_di_damaは、いったい誰なのでしょうか。 糸口は常に事実、物語の本文にございます。聡明なる読者のみなさまにとっては、犯人を見つけ出すことは造作もないことと存じます。 登場人物たちの行動から本心を読み解き、みなさまが真相にたどり着きますことを、お祈り申し上げます。 霧山隆次郎 次のエピソード 前のエピソード 第一話から読む

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        初めまして、本書き・霧山リュウです

        • 幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ7(最終話)

        • 幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ6

        • 幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ5.幽霊執事からの挑戦状

          幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ4

          悪夢で目覚めた倫巳は、はっと目を見開いた。そのときには嫌な感覚だけが残り、夢そのものの姿は、もう消えていた。 水でも飲もうと冷蔵庫に向かう。が、ちょうどミネラルウォーターを切らしていた。 このマンションはエントランスの奥に自動販売機がある。倫巳は少し迷ってから、買いに行くことにした。部屋は二階だし、階段を降りればすぐだ。 裸眼でも大丈夫だろう。 パジャマのまま部屋着を羽織り、ドアを開ける。 廊下に一歩出たとたん、倫巳は息をのんだ。 真横に隣の中年女性が笑顔で立って

          幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ4

          幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ3

          休日になると、多少は起きるのが遅くなる。塔子も例外ではなかった。 だが、時間がもったいない気がして、遅くても九時前には動き始める。 リュウは塔子の習慣を心得ていて、起きた時間に合わせて朝食を用意する。早めならパリッと焼き直したクロワッサンや、トーストとカフェオレ。 遅く起きた日なら、朝はフルーツヨーグルトとコーヒーだけにして、ブランチを豪華にしてくれる。今日は前者の日だった。 塔子は、大きなカップになみなみと注がれた熱いカフェオレで目覚めの体を温めた。 すっきりと晴

          幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ3

          幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ2

          倫巳がマンションに戻ると、ちょうど隣人がドアの側に立っていた。 人の良さそうな小太りの中年女性で、スーツとコートに身を押し込めている。いかにも古株の会社員という印象で、何度か見かけたことがあった。 この単身用のマンションでは、基本的に住人同士の交流がない。出入りするときに顔を合わせることでもなければ、隣に誰が住んでいるのかわからないと思う。 軽く会釈をして通り過ぎようとすると、彼女が声をかけてきた。 「あの、これ食べませんか?」 ぎこちない笑顔で紙袋を差し出してくる

          幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ2

          幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ1

          アラームで時間ぴったりに目覚め、秋庭倫巳は気持ちよく身を起こした。今朝はベッドに未練がない。 遮光カーテンを開けると薄い光が差しこんできた。冬の朝は遅く、弱い。 快適な季節だ。 電気ケトルでお湯を沸かしておき、手っ取り早くシャワーを浴びる。頭からバスタオルをかぶってざっと乾かしていると、タイミングよく沸騰した。 Tシャツを着て、フレンチプレスでコーヒーを淹れる。抽出している間にドライヤーを使う。いつもの流れだ。 店ではオーナーが直火式で作るエスプレッソベースのドリン

          幽霊執事の家カフェ推理 第五話・逃亡のバーチ・ディ・ダーマ1

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ12

          表向きは車に嫌がらせを受けた被害者である室田は、何事もなく職場にい続けた。均が彼らを告発しなかったのだろう。イヴのことを考えると、そうするよりも一刻も早く関わりを断つ方が良いと考えたのかもしれない。 ハーブティーのなくなった社員食堂を見るたび、塔子の心には暗雲が立ちこめた。麻美も持ち前の明るさが、なりを潜めているようだった。 帰り道、冷たく澄んだ空気を肺に入れると、塔子はモヤモヤを放出するように長く吐き出した。 イルミネーションが北の暗い冬を照らしている。ここ数年でリニ

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ12

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ11

          外からは離れの室内は見えない。ある程度の音も、遮られている。 しかし、複数の人間が言い争う声はかすかに聞こえてきた。 様子をうかがっていた香苗は、そっとその場を後にしようと歩きだした。 突然そこへ、見知らぬ男が現れた。燕尾服を着た、若い男だ。 服装のせいか、現実感がない。異様な雰囲気だった。 人が歩いてくる気配はまったくなかったのだが、彼は壁が現れたように断固として立っていた。 香苗は不気味に感じて背を向けた。しかし、男は彼女の前にまた現れた。 「どちらに行かれ

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ11

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ10

          塔子が話し終えると、それからしばらくは誰も言葉を発しなかった。 何かの間違いでは、と麻美は言いたかった。でも同時に、離れの存在を思い出した。あそこで何があっても、スタッフにはわからない。 それに、イヴはあんなに優しいはずの室田に決して寄りつかない。 室田もイヴと距離を置いているように見えた。普段現場にいないから、障がいのあるスタッフとの接し方をはかりかねているのかと思っていたが、あれもカモフラージュだったのだろうか。 麻美は寒気がして両手をこすり合わせた。 大志は思

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ10

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ9

          塔子は眠ることができなかった。リュウから聞いた推理は、あまりに重く耐えがたいものだった。 警察に通報すべきだとさえ思ったが、それをリュウがそっとおさめた。 彼が見聞きしたこと、そしてそこから立てた推論は、何の証拠能力も持たない。 ありえないことをやってのけた張本人がまともなことを言うので、塔子は面食らった。しかしその通りだ。 彼の声から塔子は、今までにない秘めた怒りのようなものを聞き取っていた。 もちろん許しがたいことだ。だがリュウを見ていると、どうもそれだけではな

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ9

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ8

          大志本人が疑われていることを全く気にしていなかったため、塔子も麻美もそれ以上カフェでその話題は出さなかった。多少親しいことを差し引いても、大志がやったとは到底思えない。 彼の反応はあまりにまっすぐだった。 しかし夕食の席でリュウは、確かに大志さまには動機がございますと言った。 「どういうこと?」 つい問いつめる口調で塔子は訊いた。 昼間の実感を真っ向から否定されたような気になる。 「見てたよね?」 「は、もちろん陰から塔子さまを警護しておりましたゆえ。それと、こ

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ8

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ7

          塔子は久しぶりにリュウのお弁当を社員食堂で食べた。自社ビルにある食堂は休憩室も兼ねているので、持ち込みができて助かる。 今日は麻美がいないようだ。代わりに彼女の先輩である、話好きの中年女性が愛想よく微笑みかけてくれた。 よく挨拶するので顔は覚えているが、社員食堂のスタッフはネームプレートをつけていないので名前はわからない。それは向こうも同じらしく、 「おねえさん、おねえさん」 と声をかけてきた。塔子は笑顔でそれに応えた。 女性は、きょろきょろと辺りを見回し 「おね

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ7

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ6

          じゅうにがつ ふつか 雪 きょうはクリスマスツリーのしたに、プレゼントをおきました。 リボンがしてあるおおきなはこです。これはぼくので、クリスマスのあさにあけるのだそうです。 ぼくもママとパパのプレゼントをおきます。おにいちゃんのところでかいています。 パパはことしは、かなえさんのプレゼントをおきません。びっくりさせるので、みえないようにします。 アドベンカレンダーのなかにあるチョコレイトはおいしい。 クリスマスまでいっこずつ、たべるのです。 パパがいない

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ6

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ5

          日曜の朝、塔子は久しぶりに少し遅く起きた。休日でも何かと予定が入るので、最近ではのんびり寝て過ごすことはない。 一応、部屋着に着替えてリビングに出て行くとリュウがキッチンの前に立っていた。以前は朝食くらいまではパジャマにカーディガンで寛ぐこともあったが、彼が来てからは着替えることにしていた。 いくら幽霊とはいえ、相手は男性である。その上、いくら本人が老執事のつもりとはいえ、姿は若い男性である。 自分の家なのに、妙に気を使うはめになってしまった。おまけに、ローンがある。

          幽霊執事の家カフェ推理 第四話・マーメイドのパルフェ5