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#51 参りました/泖

【往復書簡 #51 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈39年生きてきたってロクなもんじゃない〉
水曜日:泖〈その先の野望〉
金曜日:くろさわかな

その先の野望

小学生のときから、なぜかブラックミュージックが大好きで。
当時は調べる術がないし、何を誰が歌っているのかは分からなかったんですけど。
お店で流れる音楽がR&Bやソウルだとめちゃくちゃテンションが上がっていました。

ちゃんとブラックミュージックが好きだと意識したのは、たぶん大学生の頃だと思います。そのときはエタ・ジェームズ、リトル・アン、マーヴィン・ゲイにハマっていました。

最近、『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』を2回も観てきました。2回もね。

アレサ・フランクリンは言わずと知れたソウルの女王。ちなみに来月の16日は命日です。飛行機嫌いもあってか、来日公演なんて聞いたこともありません。公演は飛行機を乗らずにバスで移動できる北米に限られていたそうです。

そんなアレサのライブを映画館で2回も観れました。ロサンゼルスの教会で行われたアレサが歌うゴスペルのライブ公演。この映画の公開が決まったという情報を受け取ってから「絶対にみる!」と息を巻いていたものの、忙しさで間に合うかどうかヒヤヒヤしました。だけど、2回観れました。なんとかなるもんですね。

もうね、あんまり感想を書きたくないくらい参りました。でもちょっとだけ書きます。

一曲目「Wholy Holy」の歌い出しを聞いた瞬間、ぶわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと鳥肌が立って、目に涙が溜まりました。
歌が抜群に上手いだけじゃなくて、魂が伝わってくるというか。
誰のために歌うのかがアレサの中ではっきりしてて、観客やプレイヤーたちと心でしっかり対話してるんだろうな、と思ったんです。だからスクリーン越しでもタイムスリップして、まるで自分がその場でライブを経験しているかのように感じられるんだろうなと。

これだけ歌の上手い人がたくさんいて、今までたくさんのアーティストの歌を聞いてきましたが、涙が出るのは初めて。しかもスクリーン越しで。
歌声ひとつで、その人がどんな人生を歩んできたのかが想像できる。いろんな痛みや苦しみをたくさん乗り越えてきたんだろう、と勝手に想像してしまいます。
そうすると、だんだん自分が歩んできた道のりをアレサに許してもらっている感覚、あなたはそれでいいと言われているような感覚を持つんです。
あああ、なんて温かい空間なんだろう。
わたしは全然信仰心なんてなくて、もちろんクリスチャンでもないのですが。
この時ばかりはアレサを神として見てしまいました。
「オー、ジーザス・・・」、と初めて祈りたくなりました。英語なんてまともに話せないのに、鑑賞中は「オー、ジーザス」とか心の中で唱えていました。

鑑賞2回目も、わかっているのに一曲目「Wholy Holy」で泣きました。そしたら近くに座っていた見知らぬご婦人も同じところで泣いていました。映画館で作品を観る良さってこういうところですよね。

聖歌隊のみなさんもとてもかっこいいんです。わたしもシルバーのベストを着たくなりました。もちろん観客のみなさんもかっこいい。自分の感情をあれだけ表現できるのって、わたしはものすごく羨ましいんです。日々、自分の感情をうまく表現できず思いを押し殺す場面もたくさんある中、この映画で自分の感情を表現できる手段を知っていることへの羨ましさが高まりました。
わたしは大感動すると、立ち尽くすタイプ。魂が抜けてしまうんだと思います。だけど、あんな風にライブ中に激しく踊り出したり、天を仰いだりなどなど、リアクションできたほうが健康的かもしれない。もっと自分を解放したいわ。

2回目の鑑賞を終えたあと、すぐにこの作品が収録されたレコードを買いました。でも、やっぱりこれは映像でも楽しむべきだわと思い、DVDも買わなきゃと思っています。でも、いまだにDVDとBlu-rayの違いをいまいち理解できていません。どっちを買ったらいいんだろう、と悩んで早1週間がたとうとしています。

あと、もう一つの懸念点は、この映画のDVDとBlu-rayを買ったら、(将来の? 理想の?)自分の家に映画館を作りたくなるだろうなとも思っています。音響設備をしっかり整えた地下にある部屋。自分の部屋と、寝室と、リビングとは別に、映画だけを観る部屋を作るのだ。

とにかく金をくれ。
今年はサマージャンボ買ってみようかな。
貯金にはまわさずに、当選したら家を作ります。


追伸。
今日は心を休めたくて、会社をズル休みしました。誰にも言わないでね。

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