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コロナ禍での美容師の役割

4月、緊急事態宣言により自粛要請が広がり人々は外出を恐れ、美容室は静かになりました。

いつもは賑わっているはずのフロアにぽつんぽつんとご来店されるお客様。

テレビでは、美容室に行くな!と報道され、お客様はそんな中、こっそりご来店される。

切ったのがバレない程度に切ってください、というオーダーもありました。

まるで、美容室に行く事が悪のような、そんな言われ方をする世の中で

『自信を持って美容師ができない』

という悔しさと戦いました。

とはいえ、私の職場は都心よりやや離れており、近くにお住まいの方がご来店されるので、都心の美容室に比べれば打撃は少なく済みました。


コロナ患者の受け入れ病棟で働く看護師のお客様


ずっと長くご来店されている看護師のお客様。

いつも楽しくお話してくださり、綺麗になった髪の毛に心から感激してくださるとっても大切なお客様です。

ところが4月末、すっかり疲れきったご様子でご来店されたのです。

お疲れですね、と声をかけると、医療現場の厳しい状況を教えてくださりました。


医療現場の激務と世間のギャップ


そのお客様が働く病院では、お医者さんや看護師さんが自分の休みを返上していました。

いつから休んでないんだろう。少し仮眠を取ったらすぐ現場に戻り、走り回る毎日が続いていたようです。

4月の段階ではこの病がまだ未知すぎて、手探り状態だったそうです。患者さんの容体は急に悪化してしまう為、油断のできない日々が続き、精神的にも肉体的にも疲れ果てていました。 

さらには、他の病の方のオペが出来ず、病院の経営も悪化し、激務が課せられる上に減給という、とんでもない状態。


しかし、世間では『ステイホーム』です。

テレワークが促され、お家時間を充実させましょう、という流れになったのです。

私たちはこんなに身を削って働いているのに、、、と心の中で思っていたそうです。


そんな中、その看護師のお客様には、この状態が落ち着いたら、是非行ってみたいと思っていた洋食店がありました。

とても雰囲気のよいお店でした。

ところが、このコロナの影響により、閉店してしまっていたそうなのです。

その時、衝撃を受けた、とおっしゃっていました。


仕事を失ってしまった人がいるんだ


休みなく働き、疲労困憊し、世の中のムードに不満を募らせていたのに、

実は身近に職を失った人がいた。

ああ、私はなんて事を思ってしまっていたのだろう。

収入がゼロに、むしろマイナスになってしまった人がいる。

それはどれほど恐ろしい事だろう。


この話を聞いた時、私もハッとしました。

私は普通に働けているのだと。

お話を聞いている間、私にはお客様が涙を浮かべているように見えました。

『こんちくしょう!と思っていたのに、お店が閉店してしまって、とっても悲しい気持ちになったのですね。』

と言うと、

『そう!そうなんです!』

と。

そのあとはたわいもない、いつも通りのお話をしました。

最近ハマっているものや、元気の出るお笑い芸人の動画、お店での出来事。

楽しくお話していたら、ツヤツヤピカピカの

綺麗なストレートヘアが完成していました。


お客様が嬉しそうに、自分の髪を撫でていました。

お帰りの時、ご来店された時とはまったく違うキラキラした笑顔でこう言ってくださいました。

『とっても癒されました!ありがとうございました!』


私もなんだか、泣きそうになりました。


美容師は髪を綺麗にするだけじゃない


私とお客様は技術だけで繋がっているのではなく、心も繋がっているのです。

美容師の仕事は、髪を綺麗にすることだけじゃない。髪を綺麗にすることで、お客様の心も明るく照らすことができるのだと思うのです。

むしろ、私はそんな美容師になりたい。

なんだか最近落ち込んでいるから、あの美容師さんに会いたいな。

と、思われるような美容師になりたい。


たわいもない話をしましょう。

髪のお手入れ中は、楽しい時間にしましょう。

きっと明日はいい日になります。

でも、いつもお客様に元気を頂いているのは、私のほうなのかもしれません。










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