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お皿が一番おいしい

「食べ終わったそのお皿、とってくれる?」

 シェフのまるちゃんに食べ終わった大皿を渡す。さっきまで、塩麹漬け燻製肉と薪ストーブベーコン、玉ねぎの丸焼きがのっていた。仲間みんなで一瞬で平らげ、お皿から食べ物はなくなった。あるのは、食べ物から溢れた汁だけ。大事そうにその皿を持って、流しではなく鍋に向かっていった。

 肉を漬けていた塩麹の平皿も「これもう使わない?」とみんなに聞いて持っていった。また、流しではなく鍋に向かっていった。そして、せせり鍋やらシチューやらを平らげた後、〆のあさりのリゾットがでてきた。これがうまい。。でも、すぐにその旨味が何かはわからない。潮の香りだけではない、いろんな旨味がある。

 「もしかして、さっきの残り汁をつかったの?」したり顔でニヤニヤしている。「お皿に残っているのが一番美味しいところだからね」あの汁こそ、すべて食材の旨味が凝縮している。まるちゃんはいつも残りものを出さないし、一番美味しく食べさせてくれる。

 この前、盛岡のレストランでも「お皿が一番おいしい」と言われた。お皿に残ったスープ、お肉のソースをパンでちぎって綺麗に拭き取って食べる。小さいころ、すかいらーくのハンバーグを食べたとき、指で残ったデミグラスソースを掬ってペロペロ舐めた思い出が蘇る。

 おいしさは、旨味成分だけではない。シェフの考え方、それは食材を余すことなく使い切るのもそうだし、自然の野性味を取り入れることもある。複雑な美味しさを感じつつ、犬みたいにお皿を舐めたい。

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