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3分でわかる宇宙活動法アウトライン

宇宙活動法とは

2018年11月15日、人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(通称:宇宙活動法)が施行されました。

この法律は、民間宇宙ベンチャー企業の活躍を背景に、
①宇宙条約上の担保法が必要とされていること
②制度インフラとして法整備が必要なこと
から制定されたものです。 

宇宙条約との関係

宇宙条約6条は、「月その他の天体を含む宇宙空間における非政府団体の活動は、条約の関係当事国の許可及び継続的監督を必要とするものとする。」と定め、民間団体の宇宙活動は許可制とし、国による継続的監督を求めています。宇宙活動法は、この宇宙条約上の要請でもあります。

制度インフラとしての必要性

宇宙開発といえば、国家が行うものというイメージがあるかもしてませんが、宇宙ベンチャーの台頭に伴い、「宇宙=民間が開拓するフロンティア」というイメージに変わりつつあるように思えます。
そのような状況の中で、何にどのような手続が必要か、万一事故が起きた場合にどうなるか等、予めルールメイキングがされていなければ、事業者としては取るべき「リスク」を推し量ることができません。宇宙活動法は、そのようなニーズにも応えることを目的としています。

ちなみに、アメリカでは1984年に商業宇宙打上げ法が制定され、
①打上げの規制権限を連邦航空局(FAA)商業宇宙輸送局に集約
②ライセンス取得義務付け
③損害賠償責任保険の購入義務付け
が整備されています。
また、同法は1988年に改正され、一定額の政府補償、打上げ関係者間等の損害賠償請求権の相互放棄が義務付けられており、事業者のリスクヘッジ手当がなされています。
また、1998年の改正では、宇宙機の再突入もライセンスの対象とされ、さらに2004年の改正では宇宙旅行者からの同意(インフォームドコンセント)があれば、政府は責任を免れる仕組みが整備されています。

これを「日本が遅れている」と捉えるか「米国が進んでいる」と捉えるかはさておき、いずれにしても、日本(の民間企業)が宇宙開発に参戦するための舞台が用意されたといえます。

打上げの許可制

ロケットの打上げには様々な危険が伴います。そこで、打上げのためには内閣総理大臣の許可を得ることとされました。

許可の要件として、大まかには
①周囲の安全確保
②条約との関係性確保
が挙げられます。

①安全確保については、打上げ時の警戒区域を定め、第三者の侵入防止体制を構築すること等が挙げられ、ガイドラインに詳しい記載があります。ちなみに、筆者はインターステラテクノロジズの打上げ実験に参加していますが、現場では至る所に警備員が配置され危険な区域に見学者が立ち入らないよう、厳重な体制が敷かれていました。
②条約との関係性については、宇宙条約の基本理念(宇宙の平和的利用、国民生活の向上等、産業の振興、人類社会の発展、国際協力、環境への配慮)に即したものである必要があり、例えば大量破壊兵器を搭載した人工衛星は許可の基準を満たしません。

許可が下りるのに必要な期間としては4〜6か月とされていますが、型式認定を受けたものであれば1〜3か月に短縮されます。

なお、人工衛星を搭載しない弾道ロケットの打上げは宇宙活動法の適用対象外です。

衛星管理の許可制

無事に人工衛星を打ち上げることに成功したとして、誰も管理しない、あるいは誰でも管理して良いということではなく、人工衛星を管理するにも許可が必要です。

また、役割を終えた人工衛星を再突入させる場合も、安全が確保され、条約と整合している必要があります。
ここで着目したいのは、宇宙汚染防止措置を講じていることが求められている点です。スペースデブリ(宇宙ごみ)が問題視されている状況もあり、デブリの排出を抑えなければなりません。

第三者損害賠償

もし、ロケットが市街地に落下したら凄惨な被害が発生することは想像に難くありません。宇宙活動法では、打上げによる事故の責任を、打上げ実施者に集中させ、無過失責任(注意を尽くしていても責任を負う)を負うこととされました。これは、何も非のない人達が、事故によって損害を被った場合の救済のためです。

しかし、このような重い責任を負わせるとなると、事業者のチャレンジ精神を削いでしまいかねず、宇宙開発に悪影響が生じかねません。
そこで、事業者が負う責任は保険で対応させ、保険で賄えない部分の一部は政府が補償することとしています。

おわりに

米国で商業打上げ法が制定されたのは1984年です。「日本は30年遅れてる」という声を聞かなくもありませんが、いずれにしても宇宙活動のためのルールメイキングがなされたのは大きな一歩です。宇宙ベンチャーの活躍に期待しましょう!

出典:
「宇宙活動法について」 内閣府宇宙戦略推進事務局
人工衛星等の打上げに係る許可に関するガイドライン  同上

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