奇詩想集 "触れるべきではない思想" 独房の眺め〜生と死の狭間で

独房の眺め


【Logic】


軽快に刻み続ける心音は
豪快に流れる血液に対する友情


壮絶で空虚な歴史の裏には
数え切れない程の純情や愛情


運命に左右され続けた
君の壮大なシンデレラストーリー


それはただの偽装であり無情


空前絶後の綻びに対する慕情


【眼球】


目障りな程
このホトバシル充血が猥(ミダ)ら

巻き込むモノはいつも
統率の取れた思想

大きくなったり小さくなったり
変幻自在の重力レンズが

今と過去とを映し出す

この眼球へと映し出す


【Chaos】


眠るという行為の発端は
明日という希望への末路

難読不愉快なKey Wordとは
解読不可能な秩序

まだ終わるはずの無い空論は
紛い物のような衆論への決議

寓話を基にして作り出されたMisery

神話の中にしかないTheory


【Eraser】


雪景色
君想う心
静寂に囚われた
僕の音

不愉快に鳴り響く
この寂寞の想いを巡らせ
然程でもない人生の苦痛に
刺された振りをする

こうすることにより
僕は僕として在り続けることができる

この偽りの解釈を持ってして
僕はこの腐った脳細胞を癒し続ける


【蜘蛛】


星空を眺め
あの日を想う

全て崩れ去った

あの時を

永遠と信じていた日々が
薄れ行く意識の中で

笑った

首をくくり蜘蛛となれ
首をくくり蜘蛛となれ


【劣化】


花もやがて腐り朽ち果てる
時と共にただ色褪せる
それと共に人も萎れていく

見るも無惨に
見るも無様に

退屈な程、神秘に満ちて


【黄昏】


涙よ
もう少し待ってくれ

きっと今溢れると
止まらなくなるから

明日よ
また俺を生かしてくれ

まだ何者かも分からないから

確かめたい何かも分からない
触れてみたい何かも感じれない

それは、鼓膜に張り付いて離れない
あの日の産声とあの時の終わりの音


【浅はかな思考浮き彫りのリアル】


無責任贅沢現代人特有の浅はかな思考
無意識貧弱ゆとり教育の犠牲者気取り

“馬鹿や死ね”

そんな簡単な言葉を
深く考えずもせずに吐き出す

何の解決にもなりはしない

自由自由と
そればかりを求めるが


“いつだって俺たちは自由さ”


【偽善】


軽いよ
ペラペラだよ
そんな言葉心に響かないよ
そんな見え透いた涙もう見飽きたよ

どうにかしてあげたいと思うなら
身を投げ打ってでも助けに行けよ

できないなら何にも言うなよ

できないならこう言えよ

「私は偽善者なので高みの見物しかできませんが
どうか本物の善人の皆様救いの手を差し伸べてあげて下さい」


【SICK】


全て台無しだ
お前のせいで全てが台無しだ

神経質潔癖性
いつも滲ませる苛立ち
些細な衝撃で軽く崩れ落ちる

“気付くのが遅すぎた”

いつでも人のせい
そんなお前を俺は
一度も好きになったことが無かった


【Parade】


何故その凝り固まった考えを捨てられぬ?
何故変化を恐れる?

まるで進化論を否定する宗教

何故自分を絶対と位置づける?
何故自分の愚かさに気づかぬ?

俺はそういう輩が大の苦手で
心から軽蔑するよ

アンタ等も俺みたいなクズが大嫌いだろう?
心から感謝するよ

分かり合えぬ人と人
決して響き合うことはなく


【嘲笑】


“笑え”

笑えないお前は人間でも何でもない

モラリストとして生きているつもりか?

ただの屑同然

“笑え”

笑えないお前には
もう現世に何の希望もない

俯いてりゃいいさ
そうやって死を待て

“笑え”

さっさと赤ん坊に戻れ
さっさと喰われる為に肥えろ

“笑え”

殺伐とした思考回路で
懺悔の言葉を述べてみよ


【贖罪】


気狂いだと思い込んでいた彼奴(アイツ)は
実はとても真っ当な人間で

気味悪がって見下していた俺が
どうしようもない人間崩れだった

俺の中流れる犯罪者の血が
疼き揺さぶり叫び狂う

どうしようもない欲望が
抑え切れない、拭い去れない

誰も見ていなければ
己が気持ち良ければ

そんな戯れ言
正当化していた俺に

誰かが教えてくれた


“ありがとう”


誰かが必ず監視している

罪は決して完成しない


【認知】


言葉を覚え
知識を身に付けることで
人間らしさに拍車がかかる

純粋さなど微塵もなくなり
滑稽さだけに磨きがかかる

さらには恩恵さえも忘れて
復讐心に理性を焦がし

忠誠と好奇心の狭間で揺れ惑う

その内に何もかもを忘れ
動物らしさを取り戻す

しかし、それは決して愛らしいモノではなく
憎しみの連鎖であり象徴

結末の全てであり本質

悟りであり煩悩

希望であり絶望


【笑止】


優しさを持って思いやれ
温かい目で見守れ

暴力を振るうな
暴言を吐くな

人の嫌がることをするな

人間は平等なのだから……

じゃあ、笑うなよ?

悪口や誹謗中傷で笑うなよ?

笑ってるだろう

笑わないなんて無理だろう

それが人の性なんだから

人の不幸は最高の美味で
抜け目のない快楽なんだから

最低の部族さ
最低の血筋さ

過失、劣化
落ち目を探しては
それに付け込み集(タカ)り
ボコボコにし
エグリ取る

イジメは遺伝子レベルでの文明であり遺産
見下しや差別は何よりもの普遍


【眼帯】


自分より不幸な人を見つければいい
そうすれば、少し心が軽くなるから

今いる世界から離れてみればいい
何もかもが下らなく思えてくるから

そうやって目を背けて逃げることも大切さ

そうやって殺意を揉み消すことも重要さ

…………

それでもやっぱりこの感情は
どうにも抑え切れそうにない


【被爆】


実際に体験してない人が言う

“不謹慎”とは何だ?

馬鹿にしてるとしか思えない

馬鹿にしてるとしか思えない


【Drug】


睡眠薬を持っていませんか?
誰か僕の睡眠薬代わりになってはくれませんか?
優しく包み込んでくれる人はいませんか?
愛してくれる人はいませんか?

助けて欲しいわけではありませんが
今はただそっと触れていたいのです
ずっと一緒にはいられませんが
今はただ側にいて欲しいのです

朝になればきっと忘れているはずなのに
僕は朝になることを恐れている

いつまでもこの暗闇が続くはずも無いのに
瞳をしっかりと閉じて封鎖する

目下にはパルテノン神殿が広がり
耽美的なバロック建築に現(ウツツ)を抜かす
掻き鳴らされた賛美歌が
劈(ツンザ)く怒号に変わる時
虹の彼方に聳(ソビ)えた黒が
逆様になり流れていく


【寄り添い】


頼ってもいいし
それは、恥ずかしいことではないんだ

愛する人の為を想うなら
プライドなんて、要らないはずだろう?

みんな、貴方が決断するのを待っているんだ
みんな、貴方が変わってくれることを願っているんだ

ただただ、願っているんだ


【Dream】


夢を見たいから
今日も浅い眠りに就く
そしてそれは悪い夢であって欲しいから
両手をしっかりと組んで眠る

しかし、その甲斐虚しく
今日も何事もなく朝日が昇る

いや、しかし
この気怠い眩しさこそが
悪夢の象徴なのかもしれない

だとしたらこれは
最高に腐り切った悪夢だ

願いを遥かに越えた悍(オゾ)ましさだ

しかもそれは、
一瞬で終わってくれないから厄介だ

いつになっても覚めないから迷惑だ

しかし、いつかは覚める

もし覚めたらどうなるのだろうか?

死という現象こそが
覚醒ということなのだろうか?

その後はどうなるのだろうか?

覚めるということは
現実に戻るということだから

また別の世界を生きなければ
ならないのだろうか?

そこでまた悪夢に抱かれたいと願い

朝日が昇る日常こそが悪夢だということに
気が付いたらどうなるのだろうか?

永遠に生き続けなければならないのだろうか?

もしかしたら僕は今までに何回も
悪夢を願っては
悪夢に気付いて
覚めては生きて
覚めては生きてを
繰り返してきたのかもしれない

しかし、僕がただの精神異常者だったなら
それはただの妄想内のサイコトリップで

極度の夢遊病か
極度の虚言癖の
成りの果てかもしれない

結局は何もワカラナイし
何も知ることなんてできない

この世界での紆余曲折なんてものは
何よりも意味がないし
考えるということはただの空虚に過ぎない


嗚呼、

そんなことを考えていたら
また素敵な夢を見たくなった


【夜明け】


才能を手にした日
満月が語りかける


「それでも君は、満足をしないんだね」


今まで一度だって
満たされたことなど無い

数秒の絶頂や
一時の幸せなんて
嘘だろう?

全てが作り物の黒に満ちていく
全てが底無しの闇に呑まれていく

転げ落ちた富を笑いながら
痩け落ちた頬を撫で回す

優しく深く
優しく痛く

ザラツイタ触感に
艶かしい音階が謡い出す


【Climax】


研ぎ澄まされた感覚
閉ざされた眼球
トラウマの監獄
時を奪われ陥落

精神統一の隙間に入り込む

一対の闇

対になどなってはいないが
それは紛れもなく闇

肉体と精神が一致して
初めて己が完成するのに対し

こいつは相手が何者であっても
闇としてあり続ける

それは素晴らしく理想的で寂しい

それは凄まじく傲慢で虚しい


【狼】


今はまだ一人で生きていたいから
今はまだ一人で全てを見たいから

いつの日か心を開ける時が来る?
いつの日か分かり合える時が来る?

今はまだ悩み苦しむことが美徳で
今はまだ怒り孤独憂いだけが友達だけど

いつかは笑って微笑み合いたいんだ
いつかは愛し合いたいんだ

泣いている
心が
泣いている
心が

どうしてだろう?

泣いているはずなのに

涙は出ない

もう誰も僕を愛してはくれないのだろうか?

優しさに裏付けられた偽善心と

見え隠れする意地やプライド

地位や名誉

涙さえ流れなくなった僕は
人間らしさを失ったただの猿

一匹狼を演じ続ける
愚かで寂しい孤独なピエロ


そんな僕が僕は大嫌いで……


だけどもう、戻れないから……


【ガラス】


君を包み込んだ光
項垂(ウナダ)れる心
闇で満たした揺るぎない明日が
苦痛となり吊るした

歪み行く日々
君の声は届かない

白く霞んだ命の灯
赤く煮え滾る
血ミドロの感情


“ただ、優しさが欲しかった”


それはとても壊れやすいモノだから……


【遺書】


あとどれくらいの時間が残されているのだろうか?
その間に俺は、一体何を遺せるのだろうか?

ふと、そんな疑問が脳裏を過り
酷く怯えふためくけれど

そう簡単には変われずに
くだらない日々の繰り返し

上辺だけを気にしてる
くだらねぇマリオネット


“さぁ、何を遺せる?”


然るべき明日は絶対ではない


死を恐れ死を見定めろ


そして、今を確かに生きてみせろ


【悟り】


僕は長舌三寸
僕は超然主義


知らない土地へ行き
知らない国へ行き
色んなモノを見て
色んなことを感じて
自分で作った謡(ウタ)を歌い
自分の詰まった謡を歌い
感情を剥き出さず
ありのままを曝け出さず
自分の想うがままに
自由気ままに奔放に
下を向いて歩いていきたい


闇闇闇


闇を纏い光を拒絶し
欲しい時だけ欲して
要らなくなったらまた捨てて

そんな欲望に純粋で
身勝手で素晴らしい

道を歩みたい


そうだ、煩悩に満ち溢れた悟りを開こう


決めた

悪魔になろう


その為にも今はまだ、人間として人間を喰らおう



拘束の悲鳴



【Final】


神に愛された人間が早死にをするのなら
僕が天に召されるのは当分先のことだろう

そもそも神など信じていない僕にとっては
全く以て関係のない話だ

つまり、僕に訪れる死とは
十中八九科学的見解による終わり
人体の衰弱
細胞分裂の限界による終わり

たくさんのアレが蠢く中で
僕はまだソレを怖がっている

溜め息まじりに吐き出した言葉は
空虚と恩恵の狭間に消え失せた


【Poison】


今この瞬間にも一喜一憂している人々がいる
今この瞬間にも生命が生まれては滅びていく

そう思うだけで寂しくはないし
自分は不幸ではないと思える


“本当は独りぼっちで惨めなのに”


世界世界とほざきながら
仲間意識を偽造したり
自分より下を見つけては
取り繕ってる

人間なんてモノは最低だ
全てに於いての底辺だ

食物連鎖の頂点にいるというだけで
威張り腐っている

少しばかり頭を使えるからって
見下してる

喰われてしまえばいい

ゴキブリの海の中で
餌になる実感を味わえばいいんだ


【リスト】


後続する憎しみ
継承する苦しみ

ふわり浮かび上がった葛藤は
未だ嘗て見たことのない血色と色感

表現するには余りにも俗悪で
残酷なまでに歪み切っている

そんな、見るに耐えない汚染物質は
鏡に映し出された自分

そう、俺のこと

そして、お前


【シャッフル】


“俺はいつ死んだって悔いはない”

それは、素晴らしい人生を歩んでいるからではなく
とてつもなくクダラナイ人生を歩んでいるから

夢や希望
友情や愛情

そんなモノ疾うの昔に忘れ捨て去った

昨日見た風景さえ忘れてる

だって、いつも同じだから
だって、もう動かないから

聞こえないし響かない
刺さらないし欲さない

涙なんてモノはもうもはや伝説上の遺物

ペガサスのように立派なモノではなく
ベルゼブブのように醜い

泣くという最上級の自慰行為を忘れた俺は
低能な猿のように快楽に塗れて死ぬことはできない

それはとても悲しく救いようがないが
助けて欲しくはない

何故なら、この状況が図らずしも悪いというわけではないからだ

寧ろ心地好く自由で
息をする度研ぎ澄まされて行く

悟りという戯言を正当化しているようで
虚しくもあり誇らしい

この放漫で馨(カグワ)しい香りを
ずっと嗅いでいられるのなら


“このままずっと、独りでいい”


この隔たりの無い空間に
身を潜めていられるのなら


“もう一生、光はいらない”


【地鳴】


脳内で絶叫が木霊する
誰の声かはワカラナイが
野太い男性の声
その声を聞いて浮かび上がるフォルムは
何故か上半身裸で白眼を剥いた男性
下半身はなく地面から身体を生やしている

初めてこの声を聞いたのは

五歳頃か

定かではないが
強(アナガ)ち間違ってもいない

五歳と言えば今の俺の原型が出来上がった年齢だ
性の目覚めに戸惑った歳でもある

無意識に記憶を書き換えているだけかもしれないが
今は特別な時分だったという認識で納得している

唯一過去を思い出す時に
悲しくならないでいられるこの年齢は

今の僕を正常に保ってくれる
覚醒剤であり逃げ場所


“一体この地鳴りは何なんだ?”


霧が掛かったような視界の中で
こっちに手を振る純朴な瞳が痛く


【+】


畏(カシコ)まった振りをするドグマ
か弱い素振りを見せるパラドックス

テイストの違う二つの戯言を

複雑に暗号化するのではなく
ただ単純に加算して導く

それは限りなく0

少しも入る余地なく
圧迫され埋め尽くされている

宇宙

下らない夢物語

Delete


【白旗】


9:1

この世界はその一割に牛耳られている

どんなに着飾って粋がっても
所詮は強者に生かされている

どう足掻(アガ)こうが
どう踠(モガ)こうが

“歴史は必ず勝者が記す”


【銃声】


僕は肉片が飛び散るのを見たことがない
僕は肉片が飛び散るのを想像し笑うことしかできない

所詮僕はリアルを満足に生きられないクズ野郎
妄想の中でしか粋がれない勘違い野郎

クズは何周してもクズ
クズは積もっても山にはならない


嗚呼、皆が笑ってる


笑って笑って馬鹿にしてる


嗚呼、嗚呼、悔しい、悔しい


悔しい悔しい悔しい悔しい


“イマニミテロ”


いつかお前らを見下してやる
いつかお前らを罵って笑ってやる

クズに植え付けられた復讐心
どのような化学反応を起こすのだろうか……


【白紙】


君は良い人のはずなのに
何故そんなことを言ってしまうのだろうか?

過去の遍歴を語ること程
愚かなことはないのに

トラウマやコンプレックス

君の目の下の隈から読み取れる
悲しみと防衛本能

どうしてそんなに強く見せようとする?
どうしてそんなに気を張って生きる?

どうにもならないと嘆くなら
一歩後退り誰かに甘えて欲しい

素直という辟易を受け入れ
誰かの為に生きて欲しい


【人が人】


人が犬を飼うように
人が人を飼ってはダメですか?

人が馬を走らせるように
人が人を走らせてはダメなのですか?

人が虫を殺すように
人が人を殺してはダメですか?

人が作物を作るように
人が人を作ってはダメなのですか?


仲間意識
偽善
理性
DAMNED


【KANGOKU】


あるポーカーをやった
名前も聞いたことのないようなポーカー

場所は何故か空港
俺は何故か教師
相手は俺の生徒達

白熱したバトル

俺は勝利した

するとその瞬間、生徒達は苦しみ出し
跡形も無く消えてしまった

いきなり謎のVisionが脳内に流れ込んできた

生徒達が狂ったように
躍ったり這い蹲(ツクバ)ったり叫んだりしていた

そこでその映像は終わり
お次ぎに怪しい声が聞こえた

「助けたければ誰かともう一度あのポーカーをやれ。勝った回数分だけ好きな奴らを解放してやる。そのルールを思い出せればだがな……」

そして、不気味な笑い声と共にその声は消えた

彷徨いながら空港のカフェに入ると
見知らぬ知り合いに出くわした

何か懐かしいような、しかし一方でとても悍ましいような、そんな妙な安心感にかられた俺は
ソイツに今までの経緯を話すことにした

「………………」

「……それは、xxxxxxxポーカーではないか?」

「………………」

思い出した
*******ポーカーだ
ルールも全て分かる

しかし、何かが引っかかる……

……そうだ、俺は全てを知っていた
知っていてあのポーカーをやったんだ

アイツらからのイジメの報復として
このゲームを執行したんじゃないか

なんだ、そういうことか

俺はただ笑って大酒を喰らえばよかったんだ

何も悩む必要なんてなかった
思い出す必要なんてなかった

さぁ、家に帰ろう
母親が待つ家に
寝たきりで頭のネジが弛んだ母がいる家に


The Game Over


監獄


さぁ、一人きりであのポーカーをやろう


【灰色】


人が唯一伝えられない
“死”
という現象
概念
束縛

想像することしかできず
想いを馳せてももどかしいだけ

見ることはできるが
触れられない
悲しむことはできるが
味わえない

どんなに人類が進化しても
どんなに科学技術が進歩しても

永遠に死後の世界は覗けない
永遠に死とは分かり合えない

類い稀なるこの世界で
これほどまでに悩ましく
これほどまでに崇高な存在は他には無い

唯一無二でありながら親密で
空前絶後でありながら有り触れている

深く淀んだ闇に包まれ
悲しそうに笑うアナタは

今日もまた息をするように誰かを手招く


【下僕】


“神はたくさんを愛す”

歪んだ偏見で
差別をしながら

育んだり殺したり
名前を変えて楽しんでいる


“僕たちは何の為にいるのか”


それを知る日は永遠にやっては来ないけど

少なからず愛されているということを
噛み締めて歩んでいけば
辛くはない

寂しくない

捨て駒のように扱われても

それでいい


“今をくれて、ありがとう”


【Remain】


たまには過去を振り返ってみるのも悪くはない
それは今の自分を形成しているモノだから

過去が存在しないなんていうことはあり得ない
誰もが穢れを知らぬ赤子だったのだから

もしアナタが記憶喪失や記憶障害だとしても

必ず思い浮かぶ笑顔がある

何かを見なければ思い出せないのなら
古いアルバムを捲ってみればいい

そんな大それたモノは持ち合わせていないというのなら
何でもいいから記憶を引き出す鍵となるモノを見つけて欲しい


トラウマや痛み
復讐心や殺意


それだけでは余りにも
悲しすぎるから


【Free】


“人は忘れられる生き物”

忘れられない
と悲観に埋もれる人がいるが

それは単に罪悪感から

自分のことが嫌いだという人も

知らぬ間に自分の心を騙しているだけ
知らぬ間に人を人として偽っているだけ

もし本当に自分のことが嫌いなら
もうとっくに人生なんて辞めている

何処へも行けない見えない牢獄

この世に絶対の安息など無い


【Life】


鳥が鳴いている

いつものように
いつもの時間に

飽きないのだろうか?

いつもの声で
変わりなく

とてもシンプルで美しいが
僕には到底無理だろう

僕は残念ながら人間
人間という時点で複雑

単純そうな平和ボケした単細胞共も
とても複雑でエゴイスティック

僕もその中の一人
単細胞の一員

もう僕は何も見たくないし
考えたくもない

誰とも関わり合いたくないし
誰にも干渉されたくない

ただ僕は生きたい

生きたいんだ

誰の目も気にせず
煩悩のままに

形式に囚われず
ただただ自分らしく

生きたいんだ


…………叶わないのは分かってる…………


ただ、どうしてもあの鳥が飛ぶ姿を忘れられないんだ


テーブルに置かれたタバコとウィスキーを
口いっぱいに詰め込んで流し込む

窒息寸前の快感に溺れながら

今日もまた

死んだように

生きる

死んだように

生きる

死んだように

生きる

死んだように

生きる



生と死の狭間で



【罪人】


殺してくれ
今すぐ殺してくれ

俺はまた罪を犯した
俺はまた己に屈した

自責の念に駆られることは
十分承知していたのに

止められなかった

その瞬間の俺は俺ではあるが
俺ではない

多重人格ともまた違う

もう一人の俺がそこにはいる


性と道理を揺れ惑う


悩ましき


悪魔が


【エリュシクトン】


満たされない
空腹感
癒されない
脳細胞
埋められない
心の隙間
抑え切れずに
己を喰らう

己を喰らい
迎える破滅

己を喰らい
開ける視界

その騒々しいくらい
何もない虚空は


“色鮮やかな灰色で埋め尽くされていた”


【苦み】


泣きたいのに泣けない
苛立ちが募る

片目を開くのが精一杯
息も絶え絶え

最高潮に鬱
被害妄想

爪の先には黒いシミ

雁字搦めの細胞に
振り上げた鎌が空を裂く


【重】


Down
Down
限りなく
Down
また更に
Down
Down
Down

苛立ちを越えた気怠さに
眼球と後頭部がくっつきそうだ


【悪(ワル)と悪(アク)】


悪(ワル)、嫌い
悪(アク)、好き

ワル、キライ
アク、スキ

中途半端
すごく嫌い

だから、僕は、ボクが嫌い
だから、ボクは、ぼくが嫌い
だから、ぼくは、僕が嫌い

だから、僕は……


【MEAN】


何も知らない口だけ達者な餓鬼が
成長するのに要するモノは愛?

そんな戯れ言ではなく痛み

それが人生の意味でもあって
それがなければ生きてると言えなくて

飼われているだけ
操られているだけ
熱に魘(ウナ)されているだけ


PERSON=???


己が誰かも知り得ない
周りの環境や人間によって作られているだけ
どんなに背き足掻いてみても
神にはなれず意味など知れず

それでも知りたくて
知りたくて知りたくて
意味を求め
死しても尚、意味を求め
生まれ変わっても意味を求め

その繰り返しを

無意味に

忠実に

……………………

PERSON

PIG?
DOLL?
SICK?
GOD?

PERSON=PIG!DOLL!SICK!GOD!

PERSON=PIG!!DOLL!!SICK!!GOD!!

PERSON=PIG!!!DOLL!!!SICK!!!GOD!!!


【一刻】


鬼哭啾々(キコクシュウシュウ)たる気配にたじろぐ狗(イヌ)
頬張ることを止めない兎(ウサギ)

紫色に染まった羊が
然も当然と躍り出す

雨が降り出し
地が揺れて

風が恐怖を煽り出す

そろそろ彼奴(アイツ)がやってくる

実体のない

彼奴がアイツと

あいつを

乗せて

やってくる

実体のない、彼奴がアイツと


【HEVEN】


俺は見栄だけで生きている

逃げたと思われたくないから生きている

こんなに辛くて堪らないのに

つまらないプライドで生きている

もう死ぬことは怖くはないんだ
もう既にボロボロなんだ
生きている方が辛いんだ
人間が怖いんだ

何も無いし何も要らない
何もしたくないし何もされたくない

贅沢だと罵ればいい

目の見えない人や足の不自由な人の
気持ちになって考えてみろと罵倒すればいい

しかし、今の俺にとっては
それさえも喜び

目が見えないなんて
なんて素晴らしいんだ
何も見なくて済むし
何より自分を見なくて済む

足が不自由なんて
なんて好都合なんだ
どこへも行かなくて済むし
行く必要も無い


末期


全ての不幸や悪とされることが

幸福に感じる

疲れや痛みが爽快に感じる


嗚呼、このまま壊れてしまいたい


このまま独りで、狂って終わりたい……


【HELL】


布団に包まっていると
いきなり刃物で刺されました

泣き叫ぶ暇もなく、魂は身体を離れ

あの世の門を叩きました

しかもそこは、有ろう事か地獄でした

殺されたと言うことを差し引いても
地獄なのかと落胆し悲しみに暮れていると
何処からともなく狂ったような
叫び声が聞こえてきました

恐る恐る下の方を覗いてみると
そこにはまさに地獄絵図といったような
光景が広がっていました

気付くと僕は走っていました
逃げられるはずもないのに
走っていました

案の定断崖絶壁にぶち当たり
万事休すとなりました

飛び降りてしまおうかとも考えましたが

できませんでした

そこにはまさに無と呼べる闇が広がっていて
恐怖を超えた感情を抱かせました

ふと、上空の静けさに気付きました
そこは天国であると直感させました

しかしそこには人っ子一人、虫一匹いませんでした

するとそこに鬼と呼ばれる化身が現れて
閻魔大王と呼ばれる必然の元へと
僕を連れて行きました


「今からお前の舌を抜く」


重く伸し掛かる言葉が浴びせられました


「その前に、一つだけ質問をさせてください。何故、天国には誰もいないのですか?」


閻魔は笑いました


「喋れなくなる前に教えてやろう」
「生きているうちに罪を犯さない生物などいない」
「どんな善人でも幼子でも動物でも虫でも必ず誰かを傷付け苦しめている」
「生きるとは罪なのだ」


張り詰めた空気が襲い
愕然を通り越した何かが僕の胸を裂いた


「それなら、それならどうすれば、天国へ行けるのですか?」


縋るように泣き叫んだ


「お前がそれを知る必要はない」


目の前が真っ暗になり僕は舌を抜かれた


蹴り飛ばされるように
奈落へと落とされ


無限の痛みに焼かれる日々が始まった


【TRIP】


寝る前、頭に浮かぶ図形
それは丸かったり歪だったり
その線を僕は何重にもなぞり
食(ハ)み出しては戻り
終わらないことを喜んでいる

寝る前、頭に浮かぶ妄想
昨日に行ったり明日へ行ったり
塗り替えては揉み消し
素晴らしい自分を偽装したり
形(ナリ)振り構わず輝かしい
人生を演出したりする

一時間
二時間

今日もまた夜が更け
そしてまた今日も眠れずに夜が明ける

もう何日も太陽を見ていない

余りに眩しすぎる太陽は
立ち込める朝霧と共に眠りに就く僕にとっては

“雑念以外の何ものでもない”

生かして貰っていることは分かっているが
上を向いて真っ当に生きることができない

反逆は辛いだけだと分かっているのに
組織に属して笑うことができない

そんなことを思っているとその内に

細胞が腐り始め
手足が痺れ出した

爛れた全身を眺めながら

掻きむしることさえできない
もどかしさに身悶えて笑う

殺してくれと哀願し

殺してくれと

笑う

笑う


【抱擁】


そう簡単には死なせてくれないみたいだ

十年が過ぎ
二十年が過ぎ

あっという間に百年の月日が流れるだろう

本当はそんなに生きたくはないが
罪が軽くなるならそれでいい

その中で一人でも愛する人が
見つかればそれでいい

例えどんなに長く苦しくても
最後に思い浮かぶその人の顔が


“大切な人ならそれでいい”


【RED】


受け入れようと近付いてみた
確かめようと焦点を合わせてみた

今まではとてもじゃないができなかった
恐怖のあまり逃げ出すしかなかった


その瞬間も怖くて震えていた


しかし、実際にそこに広がっていた景色は
予想よりも遥かに穏やかで救いようのある

荒野だった


【冒涜】


夜がこんなにも怖いモノなんて

人工的灯りのない夜がこんなにも暗いなんて

月明かりがとても愛おしい
太陽がとても待ち遠しい

そんな当たり前のことさえ忘れていた

そんな僕に

神はもう救いの手を差し伸べてはくれないだろう


【轟】


静寂
鼓動の音
脈打つ
動脈の音

生きるとは感じること
生きるとは愛すること

それは何も邪魔できない
それは何も入り込めない

蜷局を巻く思考回路には
ノイジーな謡声と甘い重低音

冷静沈着な優越感に宥(ナダ)められ
マエストロはついにその指揮棒を置いた


そう、この場所で


此処で


疑いようもない


此処に在る


この場所で


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