見出し画像

全景千原006

アイディアの発想法


千原
一番良いのは〝自分がなぜ考えているのか〟ということを考えることです。

「自分の個性って何だろう?」

多くの人の悩みはここに集約されると思います。自分の個性というのは「今日まで歩んできた日々」です。昨日見た景色、一昨日観た映画、子どもの頃に読んだマンガ、親に連れて行ってもらった外国……その時に印象に残っているモノ、人、感情。まずは、そういうものをテーブルの上に並べるだけでいい。好きなものを並べると、その人の個性が見えてきます。

嶋津
究極、「デザインにはパーソナリティが出る」ということですね。つまり、内省───自分を見つめていくことが良いデザインに繋がっていく。

千原
正面から「このブランドはここが良い」と考えていると、新しいアイディアには辿り着くことはできない。

嶋津
定着したイメージから抜け出せない。

千原
一番危険なのはインターネットのサービスです。大まかなイメージを検索にかけるだけで、ありとあらゆるグラフィックデザインを検出できてしまう。でも、あれはもう人が作ったもの───既に完成されたものなんですよ。

自分が0から発想できるグラフィックデザインなんて、もはや作ることは不可能です。色んなものを見て、組み合わせていくしかない。その組み合わせ方が今までにないということで、新しいものになっていく。

画像1

僕は色んなネタを持っているのはいいと思うんですよ。ただそれをネットアプリにあるものから引っ張ってくると危険です。主にその理由は2つあります。

1つ目は、「誰もがそのサービスを使用している」ということ。誰もが持っている引き出し───言ってみれば〝自分のネタを公表しているようなもの〟です。デザイナーのネタというのは自分の中に持っていなきゃいけないものだと思います。「見た映画」や「読んだマンガ」など、そういうものが自分の心の中の引き出しとなっていく。

2つ目は、「発想を遠くへ飛ばす方法が分からない」ということです。誰がデザインして、どういう意図で作られたか分からないままだと遠くへ飛ばすことができません。アイディアを遠くに飛ばすためにはリスペクトが必要です。

デザインしたのは誰か、そこにはどのような想いがあり、どのようなコンセプトで作られたのか。それらが分かっていれば、作品を分解することができます。

「コンセプトを参考にしよう」
「このイラストレーターに頼んでみよう」
「背景のストーリーを元に考えよう」

分解できれば、多角的な視点でアプローチできるんです。何も知らなければ、表層にあるデザインだけを盗んでしまうことになる。それが〝パクリ〟と言われるようなデザインに陥ってしまう原因です。

嶋津
分解できれば、一部の要素だけを抽出することができる。あらゆることに応用できる考え方ですね。

千原
そうですね。だから僕はスタッフには「デザインを共有するタイプのネットサービスには登録しないこと」と言っています。素人でも見ることができるものをネタ箱にするのは、自分の手の内を見せているようなものですから。それがどれだけ恥ずかしいことなのか認識しないといけないよって。



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。