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「読むこと」は教養のエチュードvol.5

2020年を迎え、僕からプレゼント。全ての作品を紹介させていただきます。結果発表はその後。みなさんが送ってくれた僕宛の手紙にお返事を。「わたし」と「あなた」がつながる。それはコンテスト開催の応募要項に書いたことの証明。

このコンテストにおいて、僕は「最良の書き手」でありながら、「最良の読み手」であることに努めます。

それでは、『「読むこと」は教養のエチュード』のvol.5です。



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29.サロン・デュ・ショコラの楽しみ方【最終回】”チョコレートの祭典”へ愛を込めて 

うさこさんの作品。有料マガジン『サロン・デュ・ショコラの楽しみ方』の最終回を教養のエチュード賞の応募作品に選んでいただきました。メモリアルな作品を届けてくださり光栄です。加えてこの記事は有料マガジン内であるにも関わらず無料で読むことができます(投げ銭スタイル)。

文章からうさこさんのチョコレートへの愛と、生活の軸となっている美意識が伺えます。彼女のセンスは品格と情緒にあります。文章の奥にある知性が想像の中で広がっていく。それは切れ味の鋭い美意識ではなく、繋いだ手のぬくもりが感じるやわらかさを含んだ美しさ。

確かにこのnoteは愛の濃度が高いのだけれど、それはしっかりとお客さんのお口に合わせて調理されている。ピエール・マルコリーニのかわいい一口チョコレートみたいに、エレガンスをキュートで閉じ込めちゃう。素敵。




30.だから僕は、今日も「言葉」を食べて生きる。

松本侃士さんの作品。たくさんの声を編んだ一冊の本を紹介する。一行一行読み進めるごとに体温が高くなっていくのを感じます。心っていいな、人間っていいな、言葉っていいな。

この本の良さはもちろんあるのだけど、松本さんのドラマティックなレコメンドがすばらしくて。構成も、繋ぐ言葉も、そこから広げる記憶や想像する光景も。

松本さんから渡されたバトン。それを手に握りしめて言葉で「希望」を紡ぐ。心揺さぶるnote。とかくに希望は美しい。



31.2035、 青い光、 ミライを見た俺 

クマキヒロシさんの小説。Kojiさんとの合作(A面とB面があり、クマキさんの作品はA面)。Twitterの紹介文にも書き、知性に欠ける感想ですが、すごくおもしろかった。2035年を舞台にした近未来を描いた作品です。

物語はシナリオ的に展開していきます。このスピード感と、心の機微の描写が、いいハーモニーを生んでいます。実は僕、向田邦子のシナリオ全集を読破するくらい「シナリオ」という形式がすごく好きなんです。リズミカルに映像が切り替わって、物語が進んでいく心地良さ。もちろんクマキさんの作品は小説ですが、その風合いがあってわくわくしながらあっという間に読んでしまいました。

内容も素敵です。色彩のアクセントも美しい。内容を書くと野暮ですので、読んでみてください。




32.とある港町にて 

かなったさんの作品です。第一としてこのシステムを発明したかなったさんを尊敬します。もちろん、この世界観を綴る筆力も見事です。

かなったさんは前回の教養のエチュード賞にも応募してくれたのですが、毎回文体が変わっていて、その地肩の強さに驚かされます。文体は変わるけれど、全てが読みやすい。広く、多くの方に愛されるデザインです。

文章を多少書く人ならわかると思いますが、誰もがわかる言葉と表現で、中身のある内容を伝えるためには相当な筆力と発想力が求められます。それを、気取らずに軽やかにやってのける。かなったさんという人物が興味深いです。




33.自分に素直に、そして見逃さない 

ぼんじゅーるくまさんの作品です。大晦日に一年を振り返ったnote。それが新年の決意表明へと変わっていく。書くことを通して、発見していく楽しさがあります。

「書くこと」は素っ裸の自分に鎧を着させることでもあるけれど、同時に、その工程は着ていた鎧を脱がせることでもある。剥き出しの自分は恥ずかしい。でも、そのさらけ出した姿を見つめる「素直さ」は素敵だ。

一年を振り返るという行為が哲学的な領域へといざなう。書くことって楽しい。自分との対話によって気付くことがたくさんあることを教えてくれる。




34.あの子の名前はどうついた? 

YutaAokiさんの作品。知性とユーモアで展開されていく文章はモテ論へ。

これはれっきとした社会学だ。読めば読むほどとても大切なことが書かれてある。そしてそれは、僕が今考えているテーマとも深く繋がっている。 

「想像力は大切だ」と誰もが口を揃えて言うけれど、僕が本当に大切だと思う想像力は「他者のために機能する想像力」だ。コミュニケーションはそこから生まれる。相手の気持ちに寄り添うことが、デジタル社会を生きる上でも大切になってくる。Yutaさんの文章を読んで、改めて確信した。




35.悲しみを原動力に、私だけの世界を創る 

杉本しほさんの作品。しほさんにとって「創作」は生きること。それも、乗り越えなければならない現状に向き合うための力。

正しいことを言わなくてもいい職業があって。僕はそれが芸術家だと思っているんですね。アートは問題提起だから。その力が強くなればなるほど、賛同の声も、反対の声も大きくなる。それを受ける覚悟のある人しかやっていけない。

あと、「芸術家になるんだ」と決めて芸術家になる人もいれば、「ならざるを得なかった」という理由で芸術家になる人もいる。結局はどちらも芸術家なのだけど。

散らかした文章になってごめんね。何が言いたいのかというと、「書くこと」が生きること、という人は他にもたくさんいるけど、しほさんはそこに「闘い」がある。だからきっと問題を提起する人になっていくのだと思うんです。どういう形なのかははっきりとはわからないけれど。

しほさんは繊細だし、人と違う感受性があるし、きっとこの先もいろいろある。ただ、この機会に、この作品を送ってくれて、僕が「応援したい」という気持ちになったことを覚えていてほしい。思い出すのは、辛くなった時だけでいいから。

しほさんの「私だけの世界」を楽しみにしています。



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vol.6へと続く


▼「読むこと」は教養のエチュードvol.4 ▼


1月22日、大阪のイベントで登壇します。僕から3名様にチケットをプレゼントします。どうぞご応募下さい。みなさんと会えることを楽しみにしています。


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「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。