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「編集」をファッションに

「合気道には三つの身体がある」という話を聴いた。

一つは「わたし」、二つは「あなた」、そして三つ目は「わたし」と「あなた」を合わせた身体。「わたし」と「あなた」を別々の個体としてカウントせず、一体化した身体について考える。互いの性質を掛け合わせて、長所に光を当て、短所をフォローし合う。考えてみれば、これは何も合気道だけの話ではなく、あらゆるコミュニケーションに言える。それはまさしく〈対話〉的な関係性だ。

作家と編集者。作家がより良いものを書くために、編集者は目の前に問いを置いていく。作品の方向性を決めたり、より洗練された内容にするために赤字を入れることもある。創造性を促すために、締切を設けたり、褒めたり、励ましたりする。

作家と編集者の間で行われる対話。作家の身体と編集者の身体を掛け合わせることで、三つ目の身体が生まれる。それは、互いの世界を拡張するものだ。編集者はひとりで作品をつくることはできないが、作家がひとりでは到達できな場所へ連れていく力がある。

「編集」をファッションに

昨日、編集者のふみぐら社さんにインタビューをしている最中に、そんなことを思った。そのプロダクトが届いた時、受け取った人は「編集」のことについて考えることはない(つくり手ではない限り)。作品が重要であり、作家が重要なのだ。

つくり手は「編集」の重要性をよく知っている。その力のおかげで遠くまで飛べた感覚を身体が記憶している。「編集」によって〝つくられた〟のではなく、〝引き出された〟感覚。〈引き出す〉という行為は、とても対話的である。

「編集」には力があり、高度なコミュニケーションなのだが、その「編集の力」なるものをわざわざ受け取り手に伝える必要はない。透明のフィルターのように目に見えない状態で存在する。

ぼくは「編集」という考え方が、もっと一般化されるといいなと思っている。専門的な分野だけでなく、日常に「編集」が融け込んでいる状態。作家と編集者の関係性によって三つ目の身体を獲得する。それをファッションのようにカジュアルに、誰もが自由に選べて、楽しめる世界。

月曜日に着る服、火曜日に着る服、週末に着る服、仕事で着る服、パーティで着る服、アウトドアで着る服。そうやってカジュアルに「編集者」との組み合わせを楽しみながら、作品性や作家性を拡張していく。

ダイアログ・デザイナー(対話をデザインする人)には、当然「編集者」としての側面もある。対話によって互いの関係性をしなやかに、柔軟に、豊かに構築していき、三つ目の身体を獲得する。

運営しているサークル「教養のエチュードしよう」でまたやりたいことが増えた。哲学も編集もギフトも、ファッションのように楽しめる世界。ダイアログ・デザイナーは、対話によってライフスタイルを豊かにすることを考え、実現していく仕事だ。



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。