人体実験の終わりとはじまり
いつかは来るであろうと思っていた歓迎されない未知のウイルスが、私の住む場所にも近づいてきたのは春の香りがする頃だった。各局同じことばかり繰り返すワイドショーでは、訳知り顔のコメンテーターが推測で物を言い、不安を煽る。右肩上がりの感染者数と死に至る病。ニュースでは医療現場の方々の緊迫した様子を伝える。目に見えないものほど恐怖を覚え、どこで罹るか分からないと、人との接触をなるべく控えるよう、実家から、そして家族から外出を禁止され、家庭内ロックダウンとも言える状態が続いていた。