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SHUN ISHIWAKA STUDIO WORKS “2020”

はじめに

石若駿はジャズドラマーとして、日本を代表するトランぺッター日野皓正のバンドをはじめとして、様々な作品やライブで活躍しているのはジャズファンにとっては周知の事実です。その活躍はジャズに収まらず、クラシックの分野においてもイタリアの天才指揮者、アンドレア・バッティストーニ指揮の「サイバーバード協奏曲」(作曲:吉松隆)にパーカッションで参加。さらにここ数年、ポップス、ロック、ヒップホップとありとあらゆるシーンに活動範囲は広がっており、ファンと言えども、彼の活動を全て追いかけるのは日に日に難しくなってきているのではないでしょうか。かく言う筆者もその1人です。石若駿のドラミングは日本の音楽シーンの中で、打ち込みでは再現できない、唯一無二のグルーヴを生み出し、必要不可欠なピースの一つに既にになっていると思います。先日、彼自身が作ってくれた2020年の参加作品プレイリストの中から今回、ジャズ以外、リーダー作以外のポップス、ロック系の楽曲を中心にピックアップし、広範囲な活動とそれぞれの楽曲の中での彼の演奏の魅力に迫りたいと思います。

プレイリスト<Shun Ishiwaka “2020”>

DinoJr. 「2091」

ジャズ、ソウルのフィーリングを織り込んだ心地良い歌声を持つDinoJr.のリズミカルなリリックの裏で一定のリズムを刻みながら、随所に展開を作っていき、楽曲のダイナミクスを自然と作り上げる石若。この曲のリズム、とても中毒性が高いですが、そのスパイスは石若のドラミングが大きな役割を果たしていると思います。

絢香「ヒロイン」

絢香のカバーアルバム『遊音倶楽部 ~2nd grade~』に収録。原曲はback numberの2015年発売の11枚目のシングルでitunesでも9日連続1位を記録するなど、バンドを代表する楽曲の1つ。CMにも採用されており、耳なじみある方も多い事でしょう。原曲の良さを活かしながら、絢香の歌声で聴くとまた違った魅力が映えますし、何より歌詞が新鮮に聴こえて心に染みます。石若のドラミングは非常にシンプル。ストリングスを交えた楽曲でのシャープな演奏もさすがです。

KID FRESINO「Cats & Dogs (feat.カネコアヤノ)」

今や日本を代表するHIP HOPアーティスト、KID FRESINO。と言いながら、私は彼の存在を石若駿のおかげで知る事となりました。石若のリーダープロジェクト、「Answer to Remember」の楽曲、“RUN”でフィーチャーされた彼の格好良さに衝撃を受けました。石若は彼のアルバムやライブでも共演が多く、素晴らしいコラボレイトを重ねています。この楽曲ではシンガーソングライターのカネコアヤノを迎えています。KIDのナチュラルなラップに胸に迫るカネコの真摯な歌声が日常のリアリズムを静かに、でも鮮烈に描き出します。アコースティックギターとエレキギターが重なり合う中、石若の刻むビートが心地良く響きます。

米津玄師「感電」

2020年も日本の音楽シーンのど真ん中に米津玄師がいたことは間違いないでしょう。アルバムが『STRAY SHEEP』が先日ダブルブルミリオンを達成、サブスク全盛の中、それはやはり特筆すべきセールスであり、彼の楽曲、表現する世界が時代に求められている証左だと思います。星野源、綾野剛W主演のドラマ「MIU 404」の主題歌としてお馴染みの“感電”。編曲は中村倫也主演ドラマ「美食探偵 明智五郎」のサウンドトラックを手がけた作曲家の坂東祐大との共作。レコーディングメンバーもギターに関口シンゴ(Ovall)、ベースはShyoudog(韻シスト)、安藤康平(サックス)、真砂陽地(トランペット)、川原聖仁(トロンボーン)によるMELRAW HORNSと日本の音楽シーンの精鋭たちが結集。印象的なホーンのイントロから即座に石若のソリッドなドラムが聴こえてきます。2分55秒あたりからの複雑なドラミング、ラストのサビの盛り上がりでの爆発力など石若のドラミングが楽曲の魅力をさらに押し上げています。

森山直太朗「すぐそこにNEW DAYS」

NHK朝の連続ドラマ小説「エール」では俳優として好演した事も記憶に新しい森山直太朗。この“すぐそこにNEW DAYS”、本当に楽しい1曲!MVも楽しさがいっぱい!古き良きアメリカ音楽(ブルーグラスやスウィングするビッグバンド)を彷彿とさせる楽曲を軽快に歌います。森山直太朗のヴォーカルの引き出しの多さにも驚くばかりです。石若のこういった曲調でのドラミングは貴重だと思います。ウキウキするような胸踊るこの曲をスピーディーなドラミングで華麗に彩ります。

TOMMO「ロマンスをこえよう」

シンガーソングライターのTOMOOの3rdミニアルバム『TOPAZ』収録の優しい世界観に心温まるナンバー。寒い冬に聴くと、一層魅力的に聴こえますが皆さんはいかがでしょうか。男女の心情の機微を捉えた歌詞も秀逸です。歌詞の中の主人公がぽつりぽつりと語るリズムに合わせるように柔軟にリズムをつけていく石若。彼がいかに歌詞とサウンドの関係を大切にしているかがよくわかる演奏です。

ベルマインツ「ハイライトシーン」

神戸、大阪を中心に活動している3人組ポップバンド、「ベルマインツ」の清涼感120%のサマーチューン。メインボーカルの盆丸一生(この楽曲の作曲者)の透き通るような歌声に早速心を奪われます。随所に配されるギターもやみつきになります。MVロケ地は神戸塩屋の名所、旧グッゲンハイム邸!短編映画のような、いろいろな物語を連想させる素晴らしいMVも是非視聴を。この楽曲では石若はドラムだけでなくパーカッションも担当。3分40秒という決して長くない曲時間の中にさまざまな曲調の変化が織り込まれていますが、それをごく自然に聴かせる当意即妙の石若のドラミングの貢献度は大きく、体感以上に早く過ぎていく日々の疾走感を表現しているように個人的に感じました。

Negicco「Sneakers!!」

新潟を拠点に活動する3人組アイドル、という説明ももはや不要でしょう、アイドルという枠に収まらない音楽性で幅広い層に支持を集めるNegiccoの2020年のシングル、『午前0時のシンパシー』に収録された“Sneakers!!”。こちらの楽曲、作詞を石若が参加するCRCK/LCKSのの小田朋美が作詞を手掛け、編曲と演奏もCRCK/LCKSが担当しています。CRCK/LCKSはNegiccoのライブやアルバムへの参加で以前からコラボレーションしている間柄。この曲でもNegiccoのメンバーのナチュラルな歌声に寄り添いながら、各楽器のスぺシャリストであるCRCK/LCKSのハイレベルな演奏が楽しめます。インストバージョンを聴くと、より楽曲を深く楽しめると思うので、そちらもぜひ。

碧海祐人「夕凪、慕情」

愛知在住のシンガーソングライター、碧海祐人(オオミマサト)のデビューEP、『逃避行の窓』に収録された楽曲、“夕凪、慕情”。碧海の物憂げなボーカルが音数の少ないサウンドの中に浮かび上がります。音数が少ないからこそクローズアップされるのが石若のドラム。なんだか碧海のボーカルとデュエットしているような、歌っているように私は聴こえます。碧海祐人の注目度、2021年はさらに上がりそうですね。

millennium parade「Philip」

「KING GNU」常田大希のプロジェクト、millennium parade。もともと石若はKING GNUの前身、Srv.Vinciの初期メンバーとして参加するなど、古くから常田大希と密接に関わってきたことはファンの皆様にはよく知られている事でしょう。社会の不条理を示唆し、さまざまな考察を生むストーリー性、楽曲と連動したMVと常田の創造する世界観が鮮烈。石若はドラムだけでなく、シンセベースも担当しており、重厚な楽曲のリズムを担っています。また、キーボードでWONK江﨑文武が参加しているのもやはり注目すべき点でしょう。

高橋優「CLOSE CONTACT」

高橋優の7枚目のアルバム『PERSONALITY』収録曲。アップテンポでポジティブなエネルギー、なんだか次の行動への第一歩を後押してくれるような勇気付けてくれる一曲。石若もエネルギッシュな楽曲のパワーをさらに加えるような叩きっぷり。石若の抜けの良いドラムサウンドが余す所なく録られた録音もとても好みです。

高井息吹「万華鏡」

個性的な歌声と孤高の存在感を放つ音楽性で注目を浴びるシンガーソングライター、高井息吹。彼女はKING GNUのベーシスト新井和輝、シンガーソングライターの君島大空と深く音楽的にコラボライトしており、EP『kaleidoscope』でも全面的に両者が高井をバックアップ。“万華鏡”では、サウンドの土壌に音の彩りを敷き詰めるような、まるでドラムで織物を編むような繊細巧緻な演奏が光ります。

君島大空「火傷に雨」

2019年にデビュー、その年のフジロック「ROOKIE A GO-GO」に出演、その後もリリースするたびに注目度が高まり続けている君島大空。石若は「君島大空合奏形態」のメンバーとしてライブ、レコーディングにもたびたび参加。君島は石若のバンド「SMTK」のギター、細井徳太郎とも共演を重ねるなど溢れる音楽の才能の表現はとどまることを知りません。“火傷に雨”はドラムス以外を全て君島が担当。石若のドラムレコーディングは自身のプロジェクト、songbook Trioのbandcampでの録音場所にもなっている東京池袋のカフェ「KAKULULU」で行われています。君島の儚さ香る歌声に荒々しいギターと石若のダイナミックで立体的なドラミングがマッチした、ただただ格好良いロックナンバー。君島と石若の競演はこれからも目が離せません。

吉澤嘉代子「曇天」

蔦谷好位置氏がテレビ朝日の音楽バラエティ番組「関ジャム」で2017年のBEST10のうちの1曲として選んだ“残ってる”も話題を呼ぶなど、自身の楽曲だけでなく他のアーティストへの楽曲提供などで素晴らしい才能を披露している吉澤嘉代子。彼女の提供楽曲を代表する1曲、私立恵比寿中学のために書き下ろした“曇天”のセルフカバー。歌詞のストーリーが今から始まる!という所に石若のドラムが入り、楽曲の物語が一気に展開していきます。力強いドラムさばきは、愛する人を信じたいものの揺れ動く主人公の心情の吐露の情念の力強さを感じました。

くるり「大阪万博」

近年、石若がライブだけでなく録音でも参加している「くるり」岸田繁からの絶大な信頼を受ける。“大阪万博‘’はプログレッシブロックとも言うべき音絵巻の中で石若のドラムが勇躍しています。学生時代からの「くるり」のファンを公言してきた石若にとって、深く愛するバンドでの演奏は彼自身の喜びが何よりもひしひしと伝わってきます。岸田にとっても、自身の音楽を明確に表現できる石若の存在は必要不可欠なものになっていると思います。

参加楽曲を振り返って

石若駿が作成してくれたプレイリストから、彼の参加楽曲を振り返ってみましたが、改めて振り幅の広さ、大きさに驚かされました。彼がこれだけ歌に親和性の高い演奏ができるのは、プレイリストにもある彼がライフワークとして取り組み続けている歌のプロジェクト、『Songbook』シリーズの活動が大きいと思いますので、ぜひチェックを。そちらでは石若はピアノも演奏しています。石若の作曲センスの高さに驚かされる事でしょう。

彼の八面六臂の活躍によって、筆者自身の音楽の扉がさまざま広がっていくように思います。彼がドラムに参加している事によって、私のようなジャズファンも多種多様なアーティスト、楽曲を知り、魅力に触れることができます。そういった体験を通して感じるのは、普段あまり聴かないジャンルだからと、良い音楽を聴く機会を逃し、少し敬遠していた所があったかも…と反省する次第です。2021年はどんな曲で石若駿のドラムが聴けるのか、そして新しい音楽に出会えるのか、期待が膨らみます。

あ、2021年のプレイリストも楽しみにしています(笑)!

▼石若駿 Official Website▼

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ジャズライター/ジャズフリーペーパー「VOYAGE」編集長。寄稿媒体▷ジャズ批評/JAZZ JAPAN/kobejazz/JAZZ TOWN KOBE/The Beat Goes On etc…