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連載小説「1万7000回『こんにちは』を言い続けてきた」 連載2日目

これは在宅医療に挑んだ1人の青年の『こんにちは』の軌跡。
踠き、苦しみ、それでも目の前の人々と全力で向き合った、ノンフィクション小説です。

*山口本人を除き全て仮名としています。

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1回目

 この薬局は在宅医療に特化している。世の中の薬剤師による在宅医療のほとんどが「薬の配達」となっている現状の中、ここの薬剤師は「薬の配達」はしない。彼らがするのは「人の健康をみる」こと。血圧計、聴診器を手に、生活で困っている人の元へ赴き、服用してる薬の効果が出ているか、はたまた副作用は出ていないか確認する。

 「こんにちは!今日からこちらでお世話になる山口です。よろしくお願いします!」

 初期研修が終わり、店舗の配属が決まった。会社で一番古く狭い建物で、けっこうぼろっちぃ。二階へは人一人分の幅しかない急勾配の階段を上がるしかなく、そして傾いている。トイレのドアノブは何故か上に引き上げないといけない。なかなか年季の入った店舗だ。

 ここには3人の薬剤師がいる。中途入社の40代薬剤師が2人と、新卒入社した5年目薬剤師が1人。4人目の薬剤師として赴任するが、40代薬剤師がすぐに辞めることになり、結局薬剤師3人の店舗となる。

 「じゃぁ山口くんにはここの人たちの担当になってもらうね」
 「あ、はい!」

 新卒5年目薬剤師の近藤先輩の仕事を引き継ぐこととなった。
 担当することになるのは、有料老人ホームにおられる方々。60人弱が入居している。その方々の健康管理を一手に受け持つ。

 「しばらくはボクに付いてきてもらって、それで業務を覚えていってね。」

 いよいよだ!いよいよオレの医療が始まる!


2回目

 近藤先輩に連れられて担当することになる施設へやってきた。

 「こんにちは!これからこちらの担当になります山口と申します。よろしくお願いします!」
 「こんにちは。施設長の勝(かつ)です。よろしく頼みます。」
 「こんにちは。施設看護師の吉田です。よろしくお願いします。」
 「施設介護主任の高杉です。こんにちは、よろしくお願いします。」

 担当する施設には看護師、介護士がいる。ここで生活をしている方を支えるには、この方達との連携が重要だ。医療面からの視点でみる看護師、介護面からの視点でみる介護士。ともに人々を支えるためのチームだ。
 そしてこのチームにはまだ重要な人がいる。

 「山口くん、こちらが往診医の斎藤先生と、クリニック看護師の瀬田さんです。」
 「斎藤です。新人だね、よろしく。」
 「看護師の瀬田です。よろしくお願いします。」
 「新人の山口です。よろしくお願いします!」

 これからオレが医療に挑戦するチームだ。
 オール医療で向かっていくぞ!

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