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初めての同時通訳 : 一発勝負でチュウシュウノメイゲツを訳せるか

「チュウシュウノメイゲツが美しい中...」

頭の中が真っ白になりました😶

事前の打ち合わせになかった日本語を、英語に同時通訳しなければいけない瞬間でした。

前職の教員時代に勤務していた高校が
オーストラリアの高校と姉妹提携をしていたため、
毎年訪問と受け入れを繰り返していました🇦🇺

私が新卒で勤務を始めた年は、
オーストラリアのメルボルンからの生徒を
日本側が受け入れる番でした🇯🇵

メルボルンの生徒が来校した際に、
校長先生が歓迎の辞を述べる場がありました。

メルボルン側の先生と生徒一団、
日本側の受け入れの生徒と親、
日本側の学校の先生も集まる場です。

新卒で入社したばかりの当時の自分は、
「アメリカ留学帰りだからできるだろう」
と周りの先生たちに思われたようで、
経験のない同時通訳係に任命されました。

責任のある仕事を任されて嬉しかった一方で、
本当に大丈夫かな、と心配な部分はありました。

事前に私が、

「話す内容を教えていただけますか。」

と聞くと、校長先生は

「今回は短いからなしで大丈夫。」

との返答でした。

✦ ✦ ✦

メルボルン御一行がバスで学校に到着しました🚎

オーストラリア人と日本人の生徒、
受け入れホストファミリーの日本人の親、
校内の先生合わせて100人以上の視線が
校長先生一点に注がれます👀

校長先生の少し後ろでマイクを持って、
同時通訳に初めて臨む23歳。

スクリプトなしの一発勝負で望む自分。

第一声で何を言うかと集中して聞きました。


「チュウシュウノメイゲツが...」


頭の中が真っ白になりました。

突然中国語で話し始めたのかと思ったぐらい驚きました。

スピーチで本人に聞き返せない状況。
とりあえず「チュウシュウ」は即座に頭の中で漢字変換ができなかったので「メイゲツ」を訳し、

"The moon is shining beautifully..."

でなんとか切り抜けました。

「中秋の名月」にびっくりしすぎて、
その後何を通訳したのかは全く覚えていません。

なんとか時間が過ぎ去ったという記憶だけです。

スピーチが終わってぐったりしていると、
先輩の英語の先生が激励の言葉をかけてくれました。

「お疲れさま、中秋の名月はないよな。校長先生は国語の先生だから。」

この機会を与えられて嬉しかったと共に、
次からは必ず事前にスクリプトをもらおうと
決意した瞬間でした。

後日、校長先生と会食をする機会があり、
スピーチの感想を伝えました。

自分:「素晴らしいスピーチでしたが、中秋の名月はびっくりしましたよ。」

校長先生:「いやー、困らせちゃって悪かったね。僕は日本の侘びと寂びみたいなものを海外の人にも伝えたいんだよね。英語でもなんとか。」

今思うと核心をついていると思います。

校長先生界隈でも有名な方だったようで、
グローバル化について深く考えられていたのだと思います。

「古池や 蛙飛び込む 水の音」

と外国人が聞くと、蛙の数が想像できなく、蛙がドバドバ飛び込んでカオス状態を連想する可能性がある、と聞いたことがあります。

日本語の感覚では、蛙は一匹だと無意識に想像し、
静かな池にチャポンと入る水の音に風情を感じる、
というな感覚があるかと思います。

こんな感覚を伝えたかったんだろうと思いました。

最後に

「あれは校長先生から私への挑戦だったのか」

と色々と考えていましたが、
あれは当時の自分にとって修羅場でした。

大きく成長させてもらった機会に
今ようやく感謝できるようになりました。
(当時は混乱状態)。

こうやってnoteで共有できたことも、
日本人の心や日本のアートを世界に届けたいという
校長先生の熱い想いがあったからだろうと思っています。

こういうアートの領域や日本人の繊細さは、
今後も世界に誇れるものだろうなと、
ぼんやり考えています。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

*  *  *

⭐  記事のご紹介 
中秋の名月は、かつおさんの以下の記事で思い出させていただきました。

家族の月光浴のお話、素敵でした。
いつもありがとうございます🌕

かつおさんは現在企画も開催されているので、もしよければこちらもどうぞ。

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