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【残存風景】 02_湯平温泉

2018年8月16日。湯平(ゆのひら)温泉。
大分の観光地といえば、湯布院と別府。
おそらくその二つがツートップです。
コロナ渦以前は、特に湯布院は近年人気の観光地で、
インバウンドも含めて大変な賑わいを見せていました。
そんな中、湯布院と同じ由布市に位置しながら
湯布院から少し距離があり、アクセスしにくい場所に
ひっそりと佇んでいるのが「湯平温泉」です。

当事者からすると微妙な言い回しになるのかもしれませんが
「鄙びた」ところも魅力の一つのこの温泉は、歴史は長く
およそ800年前の鎌倉時代に開かれたと言われているようです。
温泉街の骨格は、300年ほど前の江戸後期に作られたようで
湯治場として発展を続けてきた温泉です。

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花合野(かごの)川沿いの石畳の細い坂道が特徴で、
一度訪れると虜になってしまうほどです。
夜には提灯に火が灯るらしく、その雰囲気は幻想的にうつるようです。
まだその光景を実際に見たことはないので、
早く目にしてみたいと楽しみにしています。

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また、この温泉街にかの有名な俳人「種田山頭火」が訪れた際
いくつかの名句を残し、気に入ったとの言葉を残しているそう。
その縁もあり山頭火のミュージアム「時雨館」が
古い民家を改装し建てられています。

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自分が気に入った魅力を、過去の偉人も魅力に感じていた。
何よりも嬉しいことです。
ただその魅力に反して訪れる人が少ないのは、
「中途半端なアクセスの悪さ」ではないかと思っています。
「石畳の坂道は魅力的だけど体力がもたない」もあるかもしれませんが。

実は大分市内からでも1時間ほどで行ける場所に位置しています。
しかし大分市内から1時間あれば、高速を使って湯布院にも行ける。
昭和のようなレトロを感じたければ、成功して話題にもなった
豊後高田市の「昭和の町」にも1時間。
自然を感じたければ、やまなみハイウェイや久住の山の方へ1時間。
別府には2〜30分で着いてしまう。
こう考えると、湯平温泉の場所はなんとも微妙なのです。

「令和2年7月豪雨」にて普段は穏やかである花合野川が氾濫し、
被災をしてしまったこの地。
このとき訪れて見た光景はおそらくもう見られないのでしょう。
復興にもしばらく掛かるかもしれません。
しかし自然とは非情にもそのようなことが往々としてあり、
そして人はその度に抗い、新たな歴史を作っていくのだと思います。
魅力を感じた場所です。
復興になんらかの形で貢献したいと思っています。

近年は自然災害が猛威をふるい、
今ある風景はあることが当たり前ではないと感じられる昨今。
普段何気なく通り過ぎているこの光景を、
少しでも拾い集め、残していこうと思います。
残っている風景、残していく風景。
「残存風景」をこの手で。

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