偉大な会社を創りたい。ディープテックから業界団体まで、学生起業だが難易度の高い事業をやっている理由
僕がAcompanyを創業したのは名古屋大学に在籍している学生時代。学生起業だが、自身の専門とは別のディープテック領域で挑戦し、かつロビイングも行う。当事者視点でも非常に難易度が高い事業展開だと思う。知識も経験もない。いわゆるWhy youもない。この記事では、そんな学生起業家だった僕がなぜこのような難易度の高い事業をやっているのかについて話していきたい。
この記事は、Acompany Advent Calendar 2024の25日目の記事です。
良好は偉大の敵である。偉大な会社を創りたい
僕はビジョナリー・カンパニー2を敬愛している。この本では、良好な会社(Goodカンパニー)が卓越した偉大な会社(Greatカンパニー)になるために必要な要素が述べられている。如何に偉大な会社になるか。
この本には強く感銘を受けた。というのも自分自身、限りある人生の中で勇気を出しレールから外れて起業することを決めた。だがこの当時、最初の事業はこのままやっても小さな成功にしかならないと危機感を持っていた。どうせやるならば圧倒的な成果を出したい、という想いが強くあった。中途半端な挑戦で後悔だけは絶対にしたくないと。このまま起業家の道を選択するならば、偉大な会社を作ることに人生を賭けようと決めた。
だれをバスに乗せるか
偉大な企業を創るためにまずは何が重要なのか。この答えもビジョナリー・カンパニー2に書かれている。
最初から完璧なものはない。誰かが必死に思考して、試行錯誤した上で素晴らしい事業や会社は出来上がる。だとすれば、"誰が"試行錯誤をするのかが決定的に重要なのは至極当たり前だと。だから、「だれをバスに乗せるか」が最も重要であると当時の僕は結論に至り、今でもこの結論は間違っていないと思っており、僕自身が最も大事にしている考え方である。
私が尊敬し、ベンチマークとするトレジャーデータ創業者の吉川さんもこちらの記事で、”「最後は人」ではなく「最初から人」”と述べています。
世界一を目指す
偉大な企業と、比較対象となった良好な企業の間の戦略的な違いについてもビジョナリー・カンパニー2の中で言及されている。それが「針鼠の概念」である。
上記で言及される、「三つの円」を示す図が以下である。
「情熱をもって取り組めるもの」「経済的な原動力になるもの」は、わかるし、確かにそう。しかし、「自社が世界一になれる部分」については正直言えば怯んだ。お世辞にもうまく行っているという状況でもないという中で、自社が世界一になることはできるのだろうかと。このヒントも本書の中に記されていた。(引用、強調は筆者追加)
要するに、今ある会社の能力の延長線上に答えがあるとは限らない、ということ。この考え方は、当時の自分にとってパラダイムシフトのような衝撃を与えた。「Why you?(なぜ自分がやるべきなのか)」という問いに引っ張られて、これまでの延長線上で物事を捉えてしまう自分に気付かされた。
今この瞬間に答えを見つけることは難しいだろう。けれども、如何にして世界一になれるかを常に問い続けよう。まだ世の中では気づかれておらず、ニッチだが市場が小さすぎない領域を必ず見つけようと。
気づいたらよくわからなかったことをやっていた
上記の話は約6年前のこと。そこから今日に至るまで本当に試行錯誤、紆余曲折の連続。大小さまざまな軌道修正を繰り返し続けてきた。そして今、Acompanyは秘密計算というディープテックを軸にした事業を行いながら、業界団体を立ち上げ、技術の啓蒙、政策提言などの活動も行う。「偉大な会社を作ろう」と決意しただけの頃からは考えられないような状況にある。
なぜこうなったのか考えてみると、「できることをやる」ではなくて、「如何にして世界一になれるか」を考えながら行動に移し続けていた結果であり、最初から狙っていたわけでは全くなかったが、その時々で正しいと思うことを積み重ねてきた結果であることは間違いない。
ディープテックとロビイング
Acompanyが注力するハードウェア秘密計算(コンフィデンシャルコンピューティング)領域は非常に技術難易度が高いディープテックであり、世界的にもプレイヤーが少ない領域である。完全に後天的だが、技術的な優位性を構築できている自負もある。非常に強いチームを形成することにも成功している。以下のツイートでこの点については詳しく言及している。
業界団体活動も同様。様々な業界団体、企業、政府との関係構築/連携、政策提言を行うパブリックアフェアーズ活動については、当然全く知見がなかった。
しかし、技術の社会実装を本気でやり切ろうと思ったとき、不可避な領域だと感じた。ここをやりきらなければ、秘密計算の市場は「ニッチで小さい市場」を脱せないだろうと。少なくともAcompanyが理想と考える時間軸では。Acompanyが目指す状態は「ニッチで小さい市場」ではなく、「ニッチだが市場が小さすぎない領域」。だから、真正面から取り組もうと。
この取り組みは2024年に非常に大きく進展をした。スタートアップ3社から始まった協会だったが日本を代表するような企業も参画、様々な主要団体や官公庁と連携しながら活動の幅が大きく広がってきた。日本のために正しい取り組みができているという実感と手応えを感じている。機会があれば別の記事などで紹介したいと思う。
ここまで読んでいただくと、「世界一を目指す」といいつつ「ロビイングとか、結局日本中心じゃん」と思われるかもしれない。その指摘はご尤も。
しかし、「自社が世界一になれる部分」の追求は辞めていません。そして、今Acompanyは世界でも有数の勝負ができる土俵に上がれていると自負している。
「秘密計算スタートアップを辞めます。」辞めます
過去に「秘密計算スタートアップを辞めます。」という記事を公開した。
あれから、2年半。ハードウェア秘密計算の市場は2024年、激変した。この間に度重なる新たな技術転換が起きた。例えるならば、ガラケーからスマホに変わった、というような状況である。結果、AppleやGoogleも採用を発表している。iPhoneの今年の目玉機能である生成AIサービス「Apple Intelligence」のクラウドはハードウェア秘密計算により構成されている。
ハードウェア秘密計算(コンフィデンシャルコンピューティング)の市場規模は2023年の約1兆円から2032年に約50兆円、CAGRは驚異の50%超えと予測される。
実は、Acompanyはこの領域で世界最先端の事例を持ち、世界トップクラスのメンバーが在籍し、世界最先端の技術アセットを保有する会社になっている。今、Acompanyは改めて”秘密計算”を軸に世界に対して勝負を仕掛けていこうとしている。「秘密計算スタートアップを辞めます。」と宣言をしたが秘密計算領域において、市場の状況が変わった今、改めて”秘密計算スタートアップ”として世界一を狙っている。
おわりに
実はこのnoteは前編です。気合が入り過ぎて、ボリュームが多くなってしまったので2本に分けての公開とします。後編では「なぜAcompanyがグローバルで勝てる余地があるスタートアップなのか」について書いていきます。
一般的なアドカレは12/25までですが、Acompanyでは明日以降も”続・アドカレ”が公開されていきます!そして、”続・アドカレ”の最終日、12/31に後編は公開します!
更新通知を受け取るために、ぜひnoteやX(@ryosuke_nu)のフォローをいただけますと幸いです。
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スタートアップ経営について話す、「アカン経営トピック」を毎週月曜日と木曜日の朝7:00に更新しております。
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まだ聞いたことない人、聞いているけどフォローしていないという人はぜひ視聴とフォローしていただけますと幸いです…!!
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