身近な人とのコミュニケーションとファシズムと職場の選び方

最近パワハラを受けた。会社の直属の上長とその上の本部長からである。これまでの人生で3回ほど(3人ほど)から同様のパワハラを受けている。わが身を振り返ると、自分も至らない点があったと思うが、どうにも地雷を踏みやすい性格・行動癖があるらしい。

自分は、基本的に「弱者を助けたい」という思いが強く、組織に属していると、弱者の味方や立場の弱い人の擁護をしがちである。(これは左翼に近いのかな?)それが仕事のペースを落とす場合、上の人の怒りを買う、という構図である。(また、ADHDという障害や、物事を聴いて理解し実行する、という機能に若干の障害があるため、見た目は普通でも人よりできない点がある。それも、何でできないんだ、と思わせる原因になっている。)

しかし、現在は自分のやったことは間違ったことだったとは全く思っていない。一つには、彼らは決まって仕事のできる人であり、その人たちが思うとおりに行かなくなった場合、かつ、二つ目には組織自体に余裕が無い場合(例えば、今まで頼りにしていた市場では立ち行かなくなってくることが見込まれて、方向転換をした場合。《この場合新しいものを生み出さねばならないので数段の努力が必要》)というタイミングであったなと思う。

1つ目の俗人的なモノ、に関しては、とても注意が必要。と言うか運である(注意のしようが無い)。余裕がなくなったときにどういう態度をとるか、労働者の権利をどうとらえているか、というところは、本当にそのタイミングになってみないとわからない。もし、そのようなタイミングでも寛大な姿勢を貫き通してくれるような人であれば、こちらから貢献しよう、という気持ちが生まれてくると思う。しかし、余裕がなくなると、できないことをあげつらったり、糾弾してくるような場合(実際そのようなケースに直面した)こちらのモチベーションは失われ、仕事もできず、また叱責される、という悪循環に陥る。こうなると経験上もう駄目である。

2つ目の場合、組織に余裕があるか無いか、という点では、ある程度判断がつく。スタートアップです・上場を目指しているところです・新しい分野に挑戦しているところです、というところは、概して余裕がない。自分は、自分のペースでしか仕事ができないということがわかってきた。このため、外的要因にスピードを制御される環境に身を置くのに適さないということがわかってきた。

これらから、どのように次に身を置く環境を選ぶかを考える。

1つ目の要因は運であると書いたが、指標は一応あって、人数規模がどの程度か、ということが挙げられる。起業から年数がたっている場合でも規模が小さい企業には小さいなりの理由がある。少数精鋭でやっていくつもりであったり(僕は精鋭ではないので適さない)、やっている人が人を周りにおいておけないという場合であったりする(僕は意見が違うところは議論しないと気が済まないため嫌われる傾向にある)。逆にある程度規模がある会社の場合、労働者を尊重していたり、考えの違う人であっても受け入れる素地がある、変な人は淘汰されている、という場合が多い。

2つ目の要因は、面接時などに会社がどのような方向に向かおうとしておりそれを社員を共有しようとしているか、どのようなフェーズにいるかという点に注意して募集要項を調べたり面談時に聞いたりすることでわかることがあると思われる。

ここで自分の性向についての話を挟み込む。自分は大学卒業当初、成長企業やスタートアップに居たいと思っていた。しかし、3社そういうところにいてみた結果、そのような0→1を作ったり、1→10を行う、という仕事は向いていない、ということがわかってきた。むしろ自分の好奇心に沿ったことしかできない、という風に自分をとらえている(これは障害原因かもしれない)そのような場合、外的要因で環境を変化させられると、非常にストレスを感じてしまう、と結論付けている。

またIT企業にありがちだが、人をリソースととらえ、リソース効率の考えを持って仕事に当たっている企業と、フロー効率を考えて仕事に当たっている企業がある。これも面談時に聞くと良いかもしれない(反感を買うかもしれないが。反感を買うならそこにはいかない方が良い)。

リソース効率とフロー効率について簡単に説明する。リソース効率とは、人の稼働率100%を目指すマネジメント法である。それに対しフロー効率とは仕事を終わらせることに主眼を置いたマネジメント法で、そのために人の稼働に余りが出てくるのはしょうがない、と割り切った考え方である。詳細はこちらを見てほしい(https://www.slideshare.net/i2key/xpjug)

以前いた職場では、ふとした会話で、仕事が終わったらどんどん次の仕事詰め込むよ、と軽いノリでいわれたことがあった。これは完全にリソース効率の考え方であった。この会話を聞いた時点で辞めておけばよかったかもしれない、と今では思っている。

で、これらの話が表題の「身近な人のコミュニケーションとファシズム」にどうつながるか、だ。

「身近な人」とは、僕の周りにいた仕事上近しい人であり、「ファシズム」とはパワハラのことである。

ここまで読んでいただいた方には、以下のような僕の主張が見えているかもしれない。「組織の余裕がなくなると、正論を言っていた人が急にファシストに転化する可能性がある」。そしてファシズムの萌芽はだれしもが抱えている。ということである。

ファシズムと言うかナチズムについて最近「ナチスのキッチン」(藤原辰史 著)を読んで勉強した。ここでは、「台所」という切り口で、当時のドイツの主婦たちが、いかにナチズムに巻き込まれていったか、ということが描かれている。当時のドイツは、第一次世界大戦で飢餓に陥り、食糧難に非常に敏感だった。そこでナチスは、食料の保存法や食べると良い食事をラジオを通して主婦に喧伝する。そして主婦のマイスター制度っぽいものを作り、ヒエラルキーを生成した。そこで、主婦の間にも良い主婦と怠惰な主婦というランク付けを行い、ヒエラルキーの上の方の人はナチスに傾倒、下の人を教化したり、批判する口実を作った。構造は非常に恐ろしいものだが、一つ一つを切り取ると、ただ単に、食料を長く保存させるとか、身体によい食べ物とかのことを述べており、別にいいことなのでは、と思わせる点が、逆に恐ろしい。この本を読んでいると、自分にも(そしてあなたにも)ナチズムの萌芽がある、ということがわかってしまう。

一つ一つは良いことでもそれはすべてヒトラーのためであった。ヒトラーによい軍人をささげるために、主婦は夫の身体を健康に保ち、食料を無駄にしないように効率的な家事を心がける。目的が非常に恐ろしい。

ここで、現代日本の職場を振り返ってみよう。最近では会社のビジョンを明確にすることが大切、と言われている。何かあったら、ビジョンに立ち戻って考える。それがあることで、社員全体が納得して仕事に邁進することができる、と考えられている。

しかし、ちょっと考えてみればわかるが、一つのビジョンを追求するために、良いこと(行動)をすることを推奨される、という構造は、ナチズムにとても似ていないか。社員のその時の気持ちや、体調などは度外視され、ビジョンに合わない人は、足切りを受ける。幸いにも現代日本では会社を辞めれば済むが、当時のドイツでは、更生所から下手すると収容所送りであった。

怖いのは、その構造を国が真似しようとしていることだ。ナチズムを学んでいない人たちが国のトップにいる、とは非常に恐ろしいこと。このままでは、日本はまたファシズム(ナチズム)に陥るのでは、と非常に危惧している。

話を日本国家の話に広げてしまったので、自分と職場の関係についての話に戻す。

ともかく、構造がそっくりなのである。一見良いように見えるものが、非常に危うい関係性を保持することを称揚している。そしてそれを「自分が指示していた」、ということにも気付いた。ビジョンだけ掲げて、それを議論・更新する機会が与えられていないような組織では、組織のビジョンありきになり、非常に人をおろそかにするようになる。僕は自分で自分の首を絞めていたのだ。

とかく、日本のような相互監視の強い国が、ビジョンだけ掲げるのは非常に危険だと思われる。声を挙げると叩かれ、弱者を救済しようと思えば、今はそれどころではないと言われる(そのような職場にいた)。

ビジョンについての取り扱いは難しい。最初は良いなと思っても、組織に入ってしまうと、ビジョンのあり方について議論できなくなってしまったり、ただ上から押し付けられたりするような場合は、それはただの「軍事目標」に成り下がっており、ビジョンとは呼べない代物になっている。

「ビジョンがあっても更新できない職場はやばい」、の対偶をとれば、「やばくない職場はビジョンの更新が行われる」である。(論理的に間違ってないよね…?)

ビジョンという言葉を掲げていなくても、「組織の目標」を議論できる余地がある、そういう企業に行くのが一つの解である。また、ビジョンがそもそもなく、「いる人に合った仕事を作る」という考え方の企業も良いかもしれない。

(だんだん疲れてきた)ここまでの考えをまとめると、ファシズム(ナチズム)に陥りそうな企業に行かないためには、

1.ある程度の人数規模がある企業を選ぶ
2.会社のフェーズを見極め1→1を行う仕事を担当できる企業を選ぶ
3.ビジョンがある会社の場合、それ自体を議論できる風土があるかを面談時に聞く
(軽いノリでいいですよ、と言われても実際は権力が無いとできない、という場合もあるので注意)
4.いる人に合った仕事を作る、という考え方の企業を選ぶ

とまとめることができる。完全に僕の指向・行動癖に合わせた考え方なので、参考にされる場合は注意されたい。

以上

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