
6年ぶりの東南アジアで感じた「危機感」
約7年ぶりにカンボジアの地に降り立った。
飛行機から見るメコン川が相変わらず茶色くて「あーカンボジア、東南アジアに戻ってきた。変わらないな」っとどこか懐かしい気がした。しかし、そんな懐かしい気持ちも空港に降り立ってすぐに消え去った。
僕が7年前に来た時は、アンコールワットのあるシュムリアップへ行った。
空港があまりにもぼろっちくて「これ、大丈夫ですかね?」と一緒に旅をした先輩と苦笑いしたのを覚えている。僕の初めての海外旅行。衝撃的だったのをよく覚えている。
今回も衝撃的だったことがいくつかある。
プノンペンは中国資本で高層ビルが立ち並び、カジノができ、空港にはスターバックスがあった。
街中はベンツやレクサスが走り、運転している人をみると中国人を助手席に載せている車をたくさん見かけた。
HUMMERまで走っていた。
カンボジアで高級車が街中を普通に走っていることを今、どれだけの日本人が想像できるだろう。
7年前にはスマホを持っている人はごくごく限られた一部の人だった。それが今では、一般市民にまで広がっている。
日系の企業や中華系の企業に勤めている人は当然のように持っていた。
いわゆるお抱えの”パパ”を持っている女性は本物のiPhone7を持っているそうだ。
東南アジアは明らかに発展している。急成長している。
プノンペンを出た後は知人がいるバンコクへと向かった。
こちらは6年前に初めての1人旅で行った場所。
スワンナプーム国際空港のイミグレーションが相変わらず大行列で「あーここは変わらないんだな」と思った。
バックパッカーの聖地、「カオサン」にも行った。
入り口に立った時は、6年前の記憶が蘇った。マレーシアから電車で25時間かけてバンコクに来たこと、貧乏旅だったからアリが列をなしているベッドで寝たこと。
何もかもが懐かしかった。
ドブ臭いのも変わらずだったし、トゥクトゥクのおっちゃん達が元気よく声をかけて来るのも変わらなかった。
もちろん、6年前のバンコクから変わったこともあった。
まずは明らかに日本食のレストランが増えたことだった。
日系の企業がこぞって進出していることもあるが、ラーメンに牛丼屋、とんかつ屋さんまであった。ニュージーランドでもそうだったが、日本食は本当に世界で人気のようだ。
もう一つ、キレイなカフェが増えていた。
コーヒー1杯の値段は場所にもよるが、200円弱。こういうカフェで大学生が皆で勉強していたり、大人が本を読んでいる姿をみた。
200円弱と聞くと、そんなに高くないように思う。
ドトールのSサイズのブレンドコーヒーが220円なのだから、こう聞くとバンコクの物価が上昇しているのがわかる。
屋台でご飯を食べない限り、日本で食事するのとそれほど変わらないのだ。
僕が行った6年前には考えられないことだった。
380円の牛丼
今年の3月までいたニュージーランドは物価が高い国だった。お昼にサンドイッチとドリンクを買えば1,000円近くいってしまうし、何気ないであってもレストランでセットを頼もうものなら1,500円を覚悟する必要がある。
さらに日曜日は25%アップする。
日本に帰って来た時に、吉野家で牛丼を食べた。380円である。安心の価格である。
でも、これでいいのだろうかと思った。
日本は低成長が続いていると言われて久しい。むしろ、僕らが生まれてからずっと低成長である。
今や中国は日本の2倍強のGDP、アメリカは3倍強である。
5月にいった台湾は世界で22位、タイは26位である。
台湾の企業が日本の大手電機メーカーを買収し、バンコクの物価は日本の庶民派の店舗とほぼ同等レベルまで上昇している。
台湾を含む、アジアの経済が発展している中で、日本はどうなっているのだろうか。
国内は政治家が足の引っ張り合いをし、メディアがどうでもいい不倫報道ばかりして、若い人が何かに挑戦しようとするとすぐに批判したがるオッサンたちがいる。
ブラック企業が世の中にはびこって、長時間労働は当たり前、殺伐とした満員電車。
この国の未来は明るいのか、はなはだ疑問に思う。
日本は明らかに「安い国」になった。
インバウンドが盛り上がっている昨今。
もちろん文化や景色などが外国人から好評だという側面もあるが、僕が思うに単純に日本が安く行ける国になっただけなんだと思った。
西欧の人からしてもそうだが、台湾やタイなどの東南アジアの富裕層からすれば、どう考えても日本は「安い」のだ。
サービスの割に安い食、ガソリン、お土産だってそうかもしれない。ドラッグストアなんかは質の良い、安い製品で溢れていると見えるはず。
台湾では日本と同じ製品が売られていることが多いが、値段は倍以上することだってある。
未だに高いと感じるのはホテルと、新幹線などの交通費だろう。それもLCCが普及しているし、高速バスを使えば上手に節約できる。
日本の未来はどうなるのか。
海外を旅してきた僕と同年代、もしくは若い人と話しをすると「日本は本当にヤバイですよね・・・」という話になる。
「ヤバイ」というのは、後ろ向きの意味で、である。
新卒一括採用、会社員ではない生き方への不安、年金制度、政治家の発言・不祥事、大企業の倒産、SNSの炎上など。
僕らから見る日本に明るい未来はほとんどない。
英語も対して話せない。
未だにアジア人を下にみてる人は改めて認識し直したほうがいい。とっくに中国には抜かれているし、いずれインドやタイにだって迫られるということを。
カンボジアを始めとするアジア人と共存する未来。
今回カンボジアへ行った理由。それは僕の恩師がカンボジアで短大を作ったからだ。
古き良き日本の面影を残すカンボジアで、偏差値教育に別れを告げた教育を行っている。
来る人口減少社会において、いずれ日本の社会で活躍できるカンボジア人とともに成長しているのだ。
実は7年前にカンボジアを訪れた時にも日本語学校へ行ったことがあった。当時の僕は、こんな異国の人が、日本語を必死に勉強している姿にビックリした。
なぜ日本語を勉強しているのかと聞くと、日本語を勉強して、日本人相手に商売をして、お金持ちになりたいと言っていた。
当時の僕は「たしかに日本語ができたら、カンボジアに来た日本人向けにガイドとかできるから、それはそれでいいのかもしれない」っと思った。
しかし、今はまた少し違った見方になった。カンボジアで日本人相手に商売をするのではなく、カンボジア人が移民として日本に来るのではないだろうか。
そう遠くない将来、日本人はカンボジア人に助けてもらうことになると思う。
すでに日本は人口が減少し始めていて、フィリピン人、ベトナム人などが農業や介護の職場で活躍し始めている。都内のコンビニのアルバイトはもはや外国人ばかりである。
これは紛れもない事実で、好き嫌いなど関係なく、迫り来る事実としてアジア人がたくさん日本にいるのだ。
”明るい”と感じるのは日本文化
このカンボジアにできた短大の何が面白いのかというと、茶道を教えているところである。
学校内に茶室が設けられ、これは千利休の茶室と同じ寸法で作られているのだ。
この学校に入学した生徒は必ず茶道をおこなう。なんともユニークである。
今、世界では日本食がブームであるが、これからは”日本の文化”がさらに飛躍していくように思う。
ニュージーランドではすでに合気道がそれなりに一般化し、外国人が帯をしめて”氣”のことを「スピリチュアルのようなもの」と説明していた。
力を入れずに相手を倒すことができる姿に欧米人はビックリしていた。
茶道、合気道、書道、華道など、日本の文化に根付いた「心、精神、美」が世界中で受け入れられる日が来ると思う。
いや、もうすでにそうなっているのだろう。
僕もそれにかかわりたくて、書道を始めた。
まだまだできることは少ないが、自分がこの世界の中でおもしろいと思うことを信じて、
そして、”日本人に生まれたこと”を幸運だと考えて。
これからの人生を進んでいこうと思う。
自分が生まれた国がこのまま沈んでいくのを指をくわえて見ていたくはない。