【小説】ROCKIN'ON JAPANによろしく 第二話 「空も飛べるはず」
その日も、ジオグラフは千葉県市川市本八幡の深夜のスタジオに集まっていた。
いつもどおり、練習が始まるかと思いきや、突然スクがぽつりと言い出した。
「なぁ、なんで男に乳首ってあるのかな?」
颯太は、ピタリと動きを止めてスクを睨む。
「…はぁ!?何だよいきなりその質問は!」
「いや、ずっと疑問だったんだよ。だって、男の乳首って必要なくね?」
「お前に必要かどうかなんてどうでもいいだろ!」
と颯太がツッコむが、隣の大地までなぜかしみじみと頷いている。
「…確かに意味なさそうだよな。男の乳首って、謎だわ…」
「ちょっと待て、大地まで真面目に考えなくていいから!」と颯太は頭を抱えるが、すると今度はゆうがどこか得意げに指を立てて語り始めた。
「いや、進化論的に考えればさ、男の乳首も元は何かの役割があったんだよ。例えばさ、昔はもっと必要だったとか…子孫を増やす上で、こう、何かが…」
大地が「おお…さすがゆうさん、知識あるなぁ」と感心して拍手を送ると、颯太は呆れ顔で、「そんな知識で感心するんじゃねぇって!」とツッコむが、話はすでに別の方向に流れ出していた。
「じゃあさ」とスクがニヤニヤしながら、「もし男の乳首が本当に必要だったら、どういう場面で役立つと思う?」
颯太のツッコミも空しく、話題はいつの間にか「男の乳首の必要性」についての大喜利大会に変わり、メンバーのボケ合戦が始まった。
大地が手を挙げる。「乳首が懐中電灯だったら?」
颯太が即ツッコむ。「お前の乳首が光ったら通報されるわ!」
スクが続ける。「じゃあ扇風機は?夏場最強!」
颯太は叫ぶ。「怖ぇよ!涼しさより恐怖だわ!」
ゆうが真顔で。「スマートスピーカーとか便利じゃね?」
颯太が呆れ顔。「誰が乳首に話しかけんだよ!」
大地が勢いそのままに。「Wi-Fi乳首もいいよな!『お前の乳首、電波強いな』とか。」
ゆうが爆笑しながら乗っかる。「俺の乳首でZoom会議でもするか?」
颯太が頭を抱え叫ぶ。「お前ら、乳首にインフラ頼りすぎだろ!一回乳首から離れろ!!」
その瞬間、スクがふと真顔になり、何かに気づいたように言い出した。
「でもよ、やっぱ男の乳首ってイラねぇよな。
あー乳首が翼だったらいいのに!!
翼になったら、俺ら…空も飛べるかもな」
一瞬スタジオが静まり返るが、次の瞬間、大地がポツリと言った。
「そうか…きっと、空も飛べるはず」
その言葉に、全員が顔を見合わせ
どこからともなくスピッツの「空も飛べるはず」を口ずさみ始める。
君と出会った奇跡が この胸にあふれてる
きっと今は自由に空も飛べるはず
夢を濡らした涙が 海原へ流れたら
ずっとそばで笑っていてほしい
「ジオグラフのROCK IN JAPAN FESTIVALへの道は始まったばかりだ。負けるな、ジオグラフ!がんばれ、ジオグラフ!」
空も飛べるはず(スピッツ)
スピッツ(英語: Spitz[6]、SPITZ[7])は、日本の4人組ロックバンド[8]。所属事務所はGrass Hopper[注釈 1]。レコード会社はPolydor Records。公式ファンクラブは「Spitzbergen」(スピッツベルゲン)。
1987年に結成し[9]、1991年にメジャー・デビューした。1995年発売の11thシングル『ロビンソン』や6thアルバム『ハチミツ』のヒットを機に人気を獲得。メジャーレーベルはポリドール時代からユニバーサルミュージックに所属している。 1997年から大阪を中心とする関西圏で「ロックロックこんにちは!」、2000年からは仙台で「ロックロックこんにちは! in 仙台」(2010年から「ロックのほそ道」と改称)、2010年からはSTUDIO COASTにおいて「Spitz×VINTAGE ROCK std. presents 新木場サンセット」といった、自身主催の音楽イベント(通称:レギュラーイベントと呼称[10])を開催している。