絶対地球の物語の主人公だった日

忘れられない乾杯、この一節で思い出した。


「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑」
(明け方の若者たち/カツセマサヒコ)


え~~~~エモい~~~(使い慣れてない)

こんなエモい青春、わたしにもあった??
それがね、ある。あった。
もしかして地球の物語主人公、わたし?と思うくらいの青春が。


* * *


大学の入学式のときにひとめぼれした人は、
飲むしか娯楽がなかったような田舎の大学生にしては珍しく
弱いわけではないのにさっさと帰ってしまう人だった。


私より2つ年上の彼を追いかけまわすことが青春だった。

名前を憶えてもらえたことに浮かれたり、同じサークルに入ったり、
講義の空き時間に喫煙所にいる彼を遠くから見てる時間は
青春以外にないと思う。
「先輩いた!!きゃー!!!」って、
存在だけでハッピーになるくらい大好きだった。

いつもそうだったから同じサークルの先輩も同期も、
みんなわたしは彼が好きだということを知っていた。
たぶん、いや絶対に本人も知っていた。
気づいていてかわいがってもらえるならそれでよかった。

何かといえばお酒を飲む、とても仲の良かったサークルの集まりで、どんなに盛り上がっても、やっぱり彼はいつの間にか家に帰っていた。
わたしは何度「え、先輩もう帰ったの?いつ?」とがっかりしたのかわからない。

帰りたいときに帰れる彼がとても大人に見えたし、
そんな態度でも友達が離れていかない彼はさすがだなと心の中で絶賛した。

でも今思えばなんてうぬぼれていたのかと恥ずかしいけど、わたしがいることが彼の帰らない理由にならないという事実に落ち込んだりもした。



そんな進展のない所謂人生の夏休みを過ごしながらも
わたしの好き好きアピールが功を奏して(?)、
わたしと彼は付き合うことになった。

今振り返っても少女漫画的展開だと思う。

付き合おうと言われた日も、
わたしたちはサークルで仲良くお酒を飲んでいた。

サークルの合宿で旅館に泊まっていたその日、
彼はいつもみたいにこっそりじゃなくて、
ビール2缶とグラスを持って、わたしを誘って宴会場を抜け出した。

彼と先輩たちの荷物が乱雑に置かれた部屋で、2人だけで乾杯した。

同級生と付き合ってるという根も葉もない(なくもないけど)噂について彼は「お前は俺のことが好きだと思ってたのになぁ」と言った。

彼を好きだという気持ちには全く変化はなかったけど、
そのころのわたしは彼を好きなことについていじられることに慣れてきていた。

ついに本人まで!とは思いながら、「あはは、大好きですよ」と言えたのは間違いなくお酒の力だと思う。

好き好きと周りに言いまくっていたわりに、本人に直接「好きだ」という言葉をぶつけることなんて、それまでは絶対にできなかったから。

「俺は冗談じゃなくて本気だよ」と告白されたときめきは、たぶん一生忘れないと思う。

寂れた旅館のグラスに注がれたビールの泡が、あんなにキラキラして見えたことも、たぶん一生忘れない。

あの日わたしは誰になんと言われても地球で1番幸せな主人公だったと思う。


最強にエモい一節はこの本。
まだ自分の青春と向き合うのが怖くて、途中までしか読んでない。笑










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