色男のミックスジュース

想イヲツヅル #59

顔はとても整っていて


スタイルも良く
ほどよい筋肉質で
清潔感もある


仕事もできて愛想も良く
高級そうな車を乗り回している
※車に詳しくなくてごめんない


さらに歌も上手くて
近づくと
甘くて爽やかないい匂いがする

※もっと言うと
過去に格闘技経験もあるらしく
武勇伝的な話も聞いたことがある

というような人がいるとしたら

そう

それは

まさに″色男″なのである


そんな色男が同じ職場の同僚なのだ

そして
どうしてかはわからないが

その色男とは
職場の人たちの中でも
特に仲が良くなった

″仕事終わりの同僚との食事会″
は今でもあるのだが


お互いが休みの日にまで
食事をしたり
色男の家のソファで寝たり


そして
今はなんとなく2人でラーメンを食べにきて
替え玉を4回もして
満腹で上機嫌な色男の車で
夜の街のドライブをしている


車内に流れるのはお洒落なR&B

もう

これは完璧なのである


「自分が異性なら
これは逃れられない罠なんだろう」

「どんな質問がきても
たぶんNOとは言えないよな」



少しからかうように話しかけると


色男は
「そう?」

いたずらっ子のように笑った


実際にこの色男は
職場でもモテモテなわけで
玉砕した異性も少なくない


さらにすごいと思うのは
お断りした異性とも険悪なムードにはならず

それと

こういう色男タイプの人は
同性からは敬遠
または
ライバル視されることも多い気がするのだが

このあっけらかんとした性格
も相まってか

色男のことは
性別問わずみんなが好きだった


そして僕も好きだった


しかしながら
色男の携帯に入っている
″この前デートした人″
だったり
″元彼女″の写真をみたときは
さすがに驚きを隠せなかった


みんながみんなモデルのような
テレビドラマのヒロインのような美形な人ばかりなのだ

″ミスなんちゃら″

みたいなワードも今までこんなに聞いたことはない


むしろ世の中にはこんなにもミスなんちゃらコンテストがあるのかと
思い知ったものだ

そして
色男も自分には気を許してくれているのか
自慢を隠すことはなく


″これが自慢というものだ″

学生時代の教師の講義の如く
数々の″馴れ初め″を嫌味なく解説する色男は

気持ちがいいくらいで
清々しさすらあった


色男なりの
悩みもきっとあるとは思うのだが

この色男はいつだって前向きで
″弱み″をみせることはなかった


夜のドライブもそろそろ終わりの頃


「あのさ」
「最近良く遊んでるでしょ?」

信号待ち
車内に迷い込んだ赤いネオンを浴びながら
色男が話した


「あの子あの子」
「最近よくビリヤードしてるんでしょ?」


″君のことか″

それはすぐに頭に浮かんだ

「あーうん」
「その子がどうしたの?」


色男はまたいたずらっ子みたいにニコッと笑って


「あの子」
「口説いてみてもいい?」

信号はまだ赤い

「わざわざ聞かなくていいよ」
「そんな関係じゃないし」

僕は笑いながら″何か″を誤魔化した


「そっか」
「ならよかった」

「今度映画観ようって話をしたんだ」

「でも観たいのが旧作で
上映は随分前に終わっちゃったから、、、」

この時点で
僕はだいたいの流れがわかった
流石の策士っぷりだ

「ほほう」
「流石の色男だな」


と僕は相槌を打った

「今度その映画のDVDでもレンタルして
あの子の家に遊びに行ってくるね」

迷っていた赤い光は
青緑色の冷たい光に変わってしまった


色男の横顔はやっぱり格好が良い

車は動き出す


窓を覗けば

街の光が細切れに溶けていく


速度を上げるたびに

ジューサーにかけられるように

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