僕と友人

想イヲツヅル #65



「がんばりなよ」


半分以上は脂なんじゃないのか

というような

炭火で焼いた肉の薄切りを食べながら

友人が言った

あまりにもさらっと言った

いや

言ってくれたんだ



夕方に突然

「肉食いに行こう」

と友人から連絡が入り


「ライブの準備もあるから飯だけなら」

と返事をして


友人と焼肉屋に来ている

目の前では大量のカルビたちが
肉汁を浮き立たせて

″早く裏返しておくれ″

とジュージューと軽やかに歌っている


出会った頃から友人は大の肉好きで


肉を裏返すと間もなく

カルビたちは
一斉に友人に呑み込まれていく


焼きあがったカルビと
ホカホカの白米を
幸せそうに頬張る友人は
あの頃のままであった


″よく胃もたれしないな″
と毎度思うけれど



そんな中

1枚の少し焦げてしまった
カルビを箸で摘みながら


「幸せそうなところ悪いんだけどさ」



僕は恐る恐る口火を切った

「食べながらでいいから」

と続けて


先日
君とファミレスに行った時の事を話した


というか相談したかった


というか
怒る
叱る

というか、、、


罰のような
報いのような
そんなものが欲しかったんだと思う

「何やってんだよお前は」
「ほんとバカだな」


と言って欲しかったんだと思う


けれども

口いっぱいにカルビと白米をモゴモゴさせながら

「ん?」
「モシャモシャ」

「ゴクリ」


「うーん」


「そりゃしょうがない」

「まぁがんばりなよ」

と言って

また次のカルビを網に乗せながら


「どうなっても応援はするって言っただろ?」


と続け


「ここのキムチ辛いな」


今度はキムチと白米で口をいっぱいにさせた



食事も落ち着いて
話を続けると


友人も君と2人で遊ぶことがあり

友人は
友人の彼女との
自分の恋愛相談までしているらしい


″女性目線の意見″を聴いているそうで

友人と君との間には
しっかりとした″友情″があるようだった

そして
その話を聴きながら
″不純なのはやっぱり自分だけなんだな″

ということを痛いほど思い知らされることになる


曰く
友人からすれば

僕も君もどちらも友達なわけで

どう転がろうが

″友達には変わりない″

ということで解決しているらしい


確かに
自分が友人の立場だったら

同じように答えているのかも知れない

″その通りだな″

何の疑いもなく納得してしまった

突然の焼肉の誘い
友人のおかげで

今は
自分を少し客観視できたような気がする


「なんか」

「ありがとな」


少し照れてしまったが
友人に感謝を伝えた



週末は彼女の舞台公演の本番を観に行く

友人とは行かない


1人で観に行く


彼女を目に焼き付けようと思う


そして


公演がすべて終わったら


彼女に話そう


そして


きっと僕らも終わるんだ



僕はもう
少しおかしくなっているみたいだから


夜に月を見上げると


君を想ってしまうくらいに



ただ
なぜだろう

家路に就く時

服に
髪に
染み付いた肉の煙の臭いが

友人との残り香が

友人が一瞬だけ見せた
とても悲しそうな笑顔を

思い出させるんだ

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