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米国的医療事情?

 どこかで書いたが、米国では右心系感染性心内膜炎がやたらと多い。これは静注薬物使用が多いせいである。そのため『フレームワークで考える内科診断』でも、感染性心内膜炎のチャプターでは「自己弁感染性心内膜炎」と「人工弁感染性心内膜炎」に並んで、「薬物静注による心内膜炎」という分類が登場する。薬物使用はこの国では珍しくなく、過量摂取など救急受診の理由としても多い。その他に、日本に比べると米国では肥満が多くて、やたらと血栓が多いなんていう違いもある。日本人にはない第V因子Leiden変異という疾患がそこそこ見られるという話は以前にした。

 多いといえば、この本ではヒ素中毒が割とよく出てくる。

36歳女性に悪心、嘔吐、下痢、ニューロパチーがあり、夫が最近保険金を増額した。

とか

 腹痛、嘔吐、下痢、せん妄のために入院を繰り返していて、妻が用意した食事を食べた後に症状が悪化する56歳男性が、汎血球減少を起こしている。

なんてシナリオで4箇所ほどに登場する。悪心、嘔吐、下痢、ニューロパチー、汎血球減少、夫婦不仲あたりがヒ素中毒のキーワードらしい。

 米国ではこんな症例(事件?)がやたらとあるかというと、少なくとも私が診ているかぎりにおいてはまだ経験したことがない。いや、そう思っているだけで、実際には見逃しているのかも?これからは、問診で「最近、保険金を増やしました?」とか「奥さんの料理を食べると体調が悪くなります?」と聞くようにしよう。