andとかorとか
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andとかorとか

 英語で書かれた文章では、ものごとを並列に並べる表現として、
”A, B, C, and D”
とか、
“A, B, C, or D”
と言う表現が頻繁に出てくる。

 例えば、『フレームワークで考える内科診断』には

Symptoms of nephrotic syndrome may include peripheral edema (often anasarca), fatigue, dyspnea, and foamy urine.

A predominance of neutrophils (>50%) in pleural fluid suggests an acute process, such as pneumonia, PE, pancreatitis, or intra-abdominal abscess.

といった文章がある。

 “and”や”or”の部分をこのまま日本語に訳すと、
「A、B、C、およびD」
とか
「A、B、C、あるいはD」
などとなるが、日本語ではこのような表現は不自然に見える。

 英語の場合、”A, ….”と出てきた時点で、「ああ、これから並列が始まるのだな」というのが了解事項になっており、最後に”and”とか”or”が出てくるまでそれが続くのが聞いている(読んでいる)方にも伝わる。買い物をしている時でも、「あれ、これ」と頼んでいって、最後に「and それ」と言えば、店の人も「あー、これで注文は終わりなんだな」というのが言わなくてもわかるのである。

 ちなみに、”A, B, C, and D”と書くのか、 ”C”のあとのコンマを付けずに ”A, B, C and D” とするのかは議論があるようで、コンマがついていない英文を見かけることもある。宮脇孝雄氏の『翻訳地獄へようこそ』によると、このコンマはオックスフォード大学出版社が使う表現ということで、「オックスフォードコンマ(Oxford comma)」という名前が付いているのだとか。 

 確かにコンマがある方が文章としてわかりやすく、

Acute hypernatremia is often symptomatic with manifestations that include thirst, muscle weakness, decreased consciousness, delirium, convulsions, coma, and brain shrinkage, which can lead to osmotic demyelination, and vascular rupture with intracranial hemorrhage.

というような長めの文章も、基本的にはこの形(の組み合わせ)になっているのがわかる。

 さて、”A, B, C, and D”や“A, B, C, or D”といった表現を日本語に置き換えてみると、勝手が違うように思える。日本語では最後に接続の言葉を入れるのではなく、むしろ、「Aと、B、C、D」とか「Aか、B、C、D」というように、まず最初に「これから並列表現しますよ」と言う意図で「と」とか「か」とかを入れる方が一般的ではないだろうか。あるいは、「Aと、Bと、Cと、D」とか「Aか、Bか、Cか、D」と言うふうに、全部に接続語を入れるかもしれない。

 じゃあ、「A、B、C、およびD」とか「A、B、C、あるいはD」と書いてあったらわからないのか?えっ!どうなんだ!と問い詰められると、まあ、わからないこともないのですけど、と口ごもってしまうのだけど、やっぱり変じゃないかなぁ、どうなのかなぁ、どうなんですか、読者のみなさん?いや、これを書いている時点では、まだ本は出来上がってないんだけど。と悩みながら今日も翻訳をしている。

 あと、なぜか、英語の”and”や”or”を訳すと、「および」とか「あるいは」などとしゃちこばった表現にしがちだが、個人的には簡単に「と」と「か」の方が好みである。


米国在住の内科・呼吸器内科・集中治療医。 『フレームワークで考える内科診断』(原題:Frameworks for Internal Medicine)は発刊になりました。