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「ピカソとその時代」に行ってきた〜キュビズムの世界を考える〜

掲題の展覧会を観に,国立西洋美術館に行ってきました.

ベルクグリューンは晩年まで作品の購入と放出を繰返し、コレクションに際立った特色を持たせるよう努めました。最終的には、彼が最も敬愛した同時代の4人の芸術家たち、パブロ・ピカソ、パウル・クレー、アンリ・マティス、アルベルト・ジャコメッティの作品に重点が置かれています。この4人に彼らが共通して師と仰いだモダンアートの祖、ポール・セザンヌも加えた、粒選りの作品からなるコレクションは、創造性と生命力にあふれた20世紀の巨匠たちの芸術を堪能させてくれます。

https://picasso-and-his-time.jp/

この展覧会では,たくさんのキュビスムの作品を観ることになりました.キュビスムについては,ちょうど「「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考」を読んでいたので,それがアートの常識を更新した技法であることは一応理解していました.

しかしながら,実際にキュビスムの作品を観ていきながら思ったのは,
「革新的な表現方法だということはわかるけど,その上でどれが良い作品なんだろう」
「敢えてキュビスムで描かれたことの意図をどうやって読み取ればいいんだろう」
といった,すっきりしない思いでした.

キュビスムの描き方は面白いし,こういう背景とモチーフの組合せ方は普通の絵じゃできないよな…なるほど…とはなるんですが,ビビっと来る絵にはなかなか出会わないなあ…と感じながら観ていました.

と思っていたら,終盤に展示されていたこちらの絵を観て,解説を読んで,あ,これだ!と思いました.パブロ・ピカソ「大きな横たわる裸婦」という絵です.

ぱっと見て最初は裸婦であることもわかりませんでしたが,観ているうちに,裸婦という魅惑的であるはずの題材と,絵に表れた無骨で暗い印象とのギャップをじわじわと感じてきました.
そして,解説文には次のように書いてありました.

「横たわる裸婦」という伝統的な主題でありながら,その特徴である女性美と官能性は徹底的に否定されている.独房のような閉ざされた部屋の中で横たわる女性の身体はねじ曲げられ,両脚は死を意味する骨の紋章のように交差している.彼女は眼を閉じて眠っているようだが,固く握りしめられた両手は,眠りの中でさえも苦痛から解放されないことを物語る.

解説文より

これを読んで,自分がぼんやりと感じていたことを言葉にしてくれているようで,この解説を書いた人と通じ合ったような気がしました.
そして,こんな悲しく重苦しい裸婦を描くのは,忠実性から離れた表現であるキュビスムでなければできなかったんだろうな,と思いました.

ということで,この一枚のインパクトが大きかった展覧会でしたが,ほかの好みだった作品の写真を最後にいくつか.

・パブロ・ピカソ「ポスターのある風景」

風景とポスターのモチーフの重なりがおもしろいなあと思いました

・パウル・クレー「こどもの遊び」

トランプのカードにありそうなかわいらしさが好きです

・アンリ・マティス「室内,エトルタ」

女性の顔の,表情が読めそうで絶妙に読めない描き方が好きです

余談ですが,この後常設展を軽い気持ちで観にいったら,あまりのボリュームと壮大さに圧倒され,途中で全部観るのを諦めました….国立西洋美術館,すごいですね…常設展はまたあらためて.


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