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教育領域における事業機会#1

新型コロナウィルスによって、あらゆる業界が大きな影響を受けていますが、教育業界は最も影響を受けた業界の一つ。臨時休校/休園が強いられる中、全くデジタル/オンラインに対応できない事実が顕在化。

もともとレガシーな既存産業をテクノロジーを活用して変革していく、という投資テーマに関心があり、そういう投資担当先が多いですが、身近に感じた不を契機に「教育領域 / EdTech」を少し調べてみました。

「教育領域」の範囲

一口に「教育領域」と言っても相当広く分散しており、テーマも様々なので年代別(幼児~社会人)× 教育コンテンツ(義務教育~趣味)でざっくりと概観したのが以下のスライドです。(数字は矢野経済研究所官庁の資料より。一部推定含む)

教育業界概観

矢野経済研究所によると、2018年度の教育産業全体(民間主要15分野計。上記と区分は必ずしも一致しない。)は2兆7,656億円(前年比微増)。最大市場は学習塾・予備校で約1兆円。少子化の進行によって中長期的にはパイが縮小することが予想される中で、足許一人当たりにかける教育費が増加、全体として緩やかに伸びている状況。また、文教費(国・地方における教育関係予算)は20兆円超で推移。

この中で市場規模が最も大きい、小・中・高校生世代向けの教育領域を見ていきたいと思います。

小/中/高校生向け教育市場における課題:民間

マクロな課題では①少子化、②労働人口不足。特に民間(私立学校含む)では少子化で顧客(生徒)が減る中での「集客」、またアルバイトを中心とする人員の確保が困難になる中での「労働生産性向上」が大きな経営課題になります。

「集客」する上で重要なのは、「学習成果」「保護者(と本人)の満足度」ではないかと考えています。ここで保護者の満足度というのは教育市場固有の難しさですが、意思決定とお財布を保護者が担う以上、年齢が低いほど重要な要素です。そして満足度を上げるためには「学習成果」に加えて、生徒に対する適切な指導/面倒見や、親との円滑なコミュニケーション等が求められることになります。その意味で教える側の「労働生産性向上(=時間の確保)」も不可欠になってきます。

その上、コロナ禍によってリモート対応が必須となったことで今までオフラインを前提としていたオペレーションは強制的に変わらざるを得ず、この対応の巧拙が集客のカギになります。

ここから、上記を満たすために「教育現場のデジタル化」と「個別最適による学習成果向上」を可能にするソリューションが益々求められています。

小/中/高校生向け教育市場における課題:公立学校

一方で、公立学校に関していうと、上記の「集客」という観点がありません。「機会均等の実現」を前提に、予算の制約と政治/行政/教育委員会が絡んだ意思決定のもとで必ずしも経済合理性が判断基準にならない難しさがあります。ただ、教員の長時間労働が問題視されている中、2020年度より順次開始される「新学習指導要領」への対応も求められるとすると、現場の「労働生産性向上」が大きな課題なのは変わりません。

学校教育現場のICT化として掲げられている「GIGAスクール構想」(一人一台の端末を配布+学校の通信環境整備)はその一つのソリューションになりえます。(コロナ禍でリモート対応が求められる中、急遽目標スケジュールが前倒しとなり2020年度内に完了する予定。) 今はインフラ整備の話が先行している印象がありますが、今後その上で何(WHAT)をどのように(HOW)やっていくかが重要になってきます。

教育領域における注目トレンド

上記を改めてまとめると、教育領域における不可逆なトレンドは、①「教育現場のデジタル化」と、その上で②「個別最適による学習成果向上」と考えています。

次回は具体的にどのようなプロダクト/ソリューションがあるのか見てみたいと思います。


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