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昭和のコンタクトレンズ

ド近眼のせいか、老眼の進行は比較的遅い方かもしれない。いまメガネは3つ使っているが、うち一つは10年以上前に作ったもの。遠近両用ではなく普通の近視用だが、それでもまだなんとかスマホの字は読める。

私の近視歴は長い。昔の写真を見ると、中学1年で既にメガネをかけている。その後外見を気にするお年頃になると、やっぱりぐるぐるメガネが嫌で、親にコンタクトレンズを買ってもらった。たぶん中学3年くらい、つまり昭和54年(1979年)ごろだったかと思う。

当時からソフトとハードの2種類あり、私はソフトレンズ。ただし使い捨てというタイプはまだ存在せず、毎日手入れして長期間使うものだった。毎晩レンズをはずしたら手のひらに乗せ、洗浄液を垂らして指の腹でキュッキュッとこすり洗いをするのである。その後は保存液で満たした専用ケースに入れておく。保存液は精製水に専用粉末を溶かして作った。すぐなくなるので精製水のボトルもけっこう頻繁に購入しないといけなかった。

そして週に一度は専用の装置で煮沸消毒が必須だった。まだ覚えているが、それは直径も高さも10センチくらいの円筒形で、薄緑色の本体に茶色いプラスチックの蓋がついていた。要は小さな電気ポットみたいなもので、水を張ったところへザルのような一段浅いトレーにレンズケースを乗せて沈め、スイッチを入れると水が沸騰する。消毒自体はたぶん数十分で終わったと思うが、冷めるまではつけられないから、もっぱら週末の夜のルーティーンだった。

こんな感じで、当時のコンタクトレンズはかなり手入れが面倒なものだったし、手入れ用具を含めてけっこうな値段もしたはずだ。まだ親がかりのうちから贅沢といえば贅沢だったと思う。

調べると、使い捨てレンズが日本で発売になったのは平成3年(1991年)だそうだ(コンタクトレンズショップOCULUS:コンタクトレンズの歴史)。私もその後しばらくして、たしか2週間使い捨てタイプに変更し、さすがに煮沸消毒は不要になったが、それでも毎晩のこすり洗いは必要だったと記憶する。

そして、メガネ生活になったのは40歳くらいのとき。ちょっとした目のトラブルがきっかけで、それはすぐに治ったのだが、結局コンタクトに戻らずメガネを常用して今に至る。

今でも美容院に行くときとか屋外で運動するときなどのためにコンタクトの買い置きはあるが、たまにしか使わないからもちろんワンデーの使い捨てだ。なんて楽なのだろう。でもそのコンタクトレンズを入れるとスマホの文字が読めない。友人たちは、だからコンタクトの上から老眼鏡をかけるのよ、と言うのだが、だったらコンタクトを入れた日はスマホを見ないで済まそう、と私は自分に言い聞かせている。

どこの空だか忘れた。雲はどれだけ見ていても飽きない。


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