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デザイナーがVCで働いて感じたこと

初ブログです。(*以下の発言は全て個人の見解です。)

初めまして、D4V(Design for Ventures)でデザイナー兼キャピタリストとして働いている高橋亮です。今まで個人での情報発信をしたことがなかったので、これから、ガンガン発信していけたらなと思っています。

最近、さまざまなバックグランドを持った方々がVC業界に参入してきていますが、デザイナーという業種としてVCで働く人間はまだ少ないと思うので、実際に働いてみて感じたことや、実際に何をやっているかなど共有していきたいと思います。

IDEOからD4Vへ

『D4V』は、IDEOというグローバルデザインファームとパートナーシップを結んで設立したアーリーステージのスタートアップに特化したベンチャーキャピタルです。

私はもともと、IDEOのボストン支社でInteractionデザイナー(UI/UXデザイナー)として数年働いた後、3年前にIDEO Tokyo へジョインしました。IDEOの事業は、主に大企業に対してデザインコンサルをすることです。私自身も今までさまざまなグローバル企業の新規事業やデジタルサービスに関わってきました。そして、昨年の秋ごろ、ベンチャーに関わりたいと強い思いを抱き、D4Vにジョインしました。(このことは、また改めて!)

D4Vでの私の業務は大きく分けて二つあります。

一つ目は、興味のあるスタートアップを探してきて、ピッチを聞き、投資するかしないかを議論することです。
二つ目は、支援先(投資先)のサポートです。主に支援先の経営とプロダクト・サービス開発サポートを行ないます。

デザイン視点からDD

DD(デューディリジェンス)とは、投資を行うにあたって、投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査することを指します。

VCで働くと、毎日のようにアーリーステージ・スタートアップのピッチを聞くわけでですが、その際に、私が着目している点をいくつか共有します。

1.事業の拡張性(これは基礎中の基礎ですが)
市場規模、競合優位性、トラクションなど。

2.Problem Solution Fit
どんなユーザーのどんな課題を解決するプロダクトなのか?そして、そのユーザーに対する価値提供は何なのか?

これも当たり前に聞こえますが、本当にできている会社は少ないような気がします。
素晴らしいUXをユーザーに提供するには、しっかりとユーザーのペインや潜在的ニーズを理解した上で、プロダクトをデザインする必要があります。

3.経営者のデザインに対するマインドセット
個人的には、アーリーステージの場合、これが最も重要だと考えています。

ここで言う〝デザイン〟は、表面的なカッコいいデザインではなく、

“人間の課題解決のために、アイディアやビジョンを導き出し、最終的にカタチにしていく行為という広義での意味のデザインです。”

このデザインに対して、経営者がどれくらい投資しているかも見ています。
簡単に測る指標として、
いつデザイナーを雇い、その方の役割は何だったのか?もちろん、委託でも良いのですが、創業初期の段階で、デザイナー(もしくは、上記ができる人物と)とどの程度プロダクト・ブランド・ビジョンについて議論してきたのか、などを参考にしています。

上記の主な観点からスタートアップを見るわけですが、3つの基準を全て満たしているスタートアップには、日頃からは、なかなか出会えません。(出会いを見つけるのが我々VCの仕事ですが。)

経営者が、デザインに投資をしていても、事業の拡張性が無かったら、VCとして投資する意味はありません。ですが、1、2はシードステージにいれば一緒に考えられる課題です。一方で、3が出来ていない場合は、経営者のマインドをそもそも変えないといけないので、なかなか険しい道になるでしょう。ですので、個人的には、3の価値を理解している経営者と一緒に、なるべく早い段階から、事業やビジョンを一緒にデザインしていきたいです!!


信頼関係のデザイン

まだまだ、キャピタリストとしては未熟者ですが、
「キャピタリストとして、最も重要なことは何だと思いますか?」と聞かれたら、「経営者との信頼関係構築」と答えると思います。

VCというビジネスは、会社への投資ではありますが、実際は、人への投資だと私は考えています(より、アーリーな案件ほど)。経営者の夢に共感し、その夢を一緒に実現したいと強い思いを抱き、投資家として一緒に歩んでいくわけですから、経営者といかに信頼関係を築き上げられるかが、その後の関係性およびビジネスの成長に影響を与えてきます。
信頼関係構築の上で、私が最も大切だと思うことは、投資前と投資後直近の関係性作りです。恋人や友人関係でもそうだと思いますが、最初の接し方は非常に大事です。
一般的なコンサル事業の場合だと、こちら側が関係性を深く築きたいと願っていても、クライアント側の組織編成や予算削減などが要因で、一瞬にして関係性が崩れてしまうことがしばしばあります。しかし、VCの場合は、その会社に投資した以上、数年来の長い付き合いとなります。もしご一緒することになった場合、一緒にどのようなことをやっていきたいのか、しっかりと議論を重ねることが必要だと感じます。
D4Vでは、投資後直近に、デザイン思考ワークショップなどの取り組みを行い、今後一緒に何ができるか、しっかりと話し合いをしています。

VCとしては、当たり前な話ですが、もう一つ重要なことは、本気で向き合うことです(お互いに)。今まで、さまざまな業界の方々と接する機会がありましたが、スタートアップの方々と交流していく中で驚かされたのは、圧倒的な当事者意識の強さです。

決して、生半可なアドバイスや発言、そして、投資家だからといって上から目線で物事を言ってはいけないと、常に意識しながらコミュケーションを図っています。話を真剣に聞き、真剣に議論して、真剣に向き合わないと、良いものは決して一緒には作ることはできないです。
週末も一緒に議論して、収束するまで(それは夜中までかかることも)議論を繰り返すということが、最近当たり前になってきました。

そして、忘れてはいけないのは、当事者意識を持ちながらも第三者的視点からも見るということです。こちら側も100%当事者になってしまったら、その会社の社員と変わりありません。要所要所で引いて物事を捉えるということも必要になってきます。

Hands-On or Hands-If 

今まで、支援先に対して、さまざまな形でサポートをしてきました。Google Venturesが提唱するSprint(5日間でアイデアを実現、検証する方法)

というフレームワークを用いてプロダクトの課題解決に取り組んだり、IDEOのデザイナーからUI/UX批評してもらったり、1日ワークショップを開催して、ミッション・ビッジョン・バリューを定義したり、海外進出を目指すスタートアップに対してのローカリゼーション戦略を一緒に練ったり、私自身が支援先に半常駐して、product teamの1人になり、開発をサポートしたり……

と、さまざまな形で支援をさせてもらいました。

我々D4Vもベンチャー的な立ち位置なので、失敗や成功を繰り返します。リソースが限られているなかで、一番最適なサポート方法を模索してきました。

そもそも『Sprint』とは、ある特定の課題を短期間で合理的な方法でソルーションを導き出していくフレームワークです。
ここで肝となるのが、課題設定です。スプリントが成功するか否かは、この最初の課題設定が鍵となります。課題設定をするとき、「本当に検証する意味がある課題なのか?」「失敗するリスクが高い課題なのか?」などをしっかりと議論してから、取り組む必要があります。
一方で、
・ユーザーの理解がない場合
・ある程度方向性が決まっていて実装するだけだったりする場合
・経営層が重要だと思っていない場合

などは、スプリントが適していない場合もあります。

そして、この課題設定という作業が非常に難しい最初の作業になります。我々VCとしては、第三者の立場から、〝現状の課題は何か?〟を、抽出しなければいけません。これは、月一回の株主総会のビジネスアップデートからだけでは、抽出できません。
しっかりとプロダクトオーナーと議論を重ねてから絞り出す必要があります。

Hands-on, Hand-offとは別に、Hands-If ともいわれますが、if の定義がなかなか難しいと感じます。If they need help to sovle the problem と言う場合、problemが顕在化されてないことがよくあるので、日頃からしっかりとプロダクトを使ったり、プロダクトオーナーと議論したり、別途でユーザー調査したりするということも重要です。

よく、「ウェブサイトを作ってください」「アプリをリデザインしてください」「ビデオを作ってください」といった依頼がきます。必要であれば受託しますが、なるべくデザイン制作というよりは、川上のところからプロダクトやブランド、そして組織を一緒にデザインしていきましょうと、いつもお返事しています。なぜなら、我々がデザイン制作をしたとしても、組織のデザイン力の底上げという観点から見たら、あまり意味がないからです。
一緒にCo-Designしていくという、お互いの認識合わせが非常に大切です。

デザイン思考のジレンマ

私自身、デザイナーとして〝デザイン思考〟というプロセスを用いてさまざまな問題解決に取り組んできました。デザイン思考は、0−1を考える上で非常に体系化された良いフレームワークだと思いますが、「実際に0−1という基盤が出来上がったスタートアップで、果たして上手く機能するのか?」という課題意識は以前から持っていました。

基本的に、投資を検討するスタートアップには何かしらのプロダクトが既に存在しています。投資後に、『もう一度デザイン思考を使って、プロダクトを改めて作ろう!』ということは、時間と労力の制約上、難しい話です。逆に、スタートアップ的にも、『我々の事業に納得し、投資してくれたはずなのに、なんで再び立ち戻って事業を再定義しないといけないんだ?」と思うかもしれません。一つの既存事業がPMFを達成していて、新たに事業を展開する際、「デザイン思考を用いて、新事業を考えよう!」だと、取り組みやすいかと思いますが、『プロダクトがある程度出来上がっていて、今からユーザーを沢山獲得しよう!』という段階では、なかなかの難さがあります。この場合、デザイン思考のフレームワークよりは、リーンスタートアップやグロースハッキングというフレームワークの方が適切であるかにように感じました。仮説を立て、プロトタイプを通して検証し、結果を測るPDCAを高速に回すというフレームワークの方が、スピード感が重要なスタートアアップにおいて、向いているということは常に感じてきました。

デザイン思考を無視して、リーンスタートアップやグロースハッキングを使おう!と言っているわけではありません。そのプロダクトのフェーズに応じて、しっかりと使い分ける必要があると私は考えます。そして、デザイン思考はフレームワークでありながら、マインドセットでもあります。なので、フェーズが違っていても、マインドセットは共有できるかと思います。以下、そのマインドセットをいくつか抽出します。

-ユーザー視点で物事を捉える
定性調査(ユーザーインタビュー)は予算と時間がかかります。なので、日々生活している中で常に周りに対して、アンテナを張っておく必要があります。例えば、UBERのようなモビリティのサービスを提供している会社であれば、皆どのようにタクシーを拾っているのか? タクシーの運転手に話かけて、どんなお客様が多いのか? タクシーのアプリを全てダウンロードして、実際に全て体験しみるなど、常にユーザー視点で物事を考え、いつも普通に起こっていることがなぜ起こっているのか、常識を疑うことが重要です。自分が当たり前だと思っていたことが当たり前じゃなかったり、新しい発見があったり、日々周りを観察することで、サービス改善につながる新しヒントをどこかに隠れているはずです。

-共通意識と共通言語を作る
デザイン思考のプロセスにおいて、大事にしている価値のなかに、I(私)を使うのではなく、WE(私たち)を使う、という点があります。何が言いたいのかと言うと、デザインするという行為は個人戦ではなく、団体戦であるということです。
ビジネス寄りの人が戦略とコンセプトを考えて、デザイナーがそれを形にして、エンジニアを開発するという分担作業で、サービスやプロダクトを作っていく場合があるかと思います。最初はこちらのほうが効率がいいかもしれませんが、長期的に見れば、ビジネスとデザインとエンジニアの谷間が生まれ、コミュケーションロスが沢山生まれる可能性が高くなります。ですので、ビジネスパーソンだけではなく、いかにデザイナーやエンジニアをより川上に巻き込んで議論ができるかが重要になってきます。
まずはじめに、全員で課題への共通意識や共通言語を作ることで、後々に出てくる意思決定事項が、経営者からのトップダウンではなくなります。チーム一丸となって、質の高い議論を通して、重要な案件を決められるようになることが大事なのです。

-作りながら考える
個人的にはこれが最も重要だと思います。よく、机上の議論を何回も何回も繰り返し、絶対にこれがうまくいくと確信して、いざリリースしてみたら、全然うまくいかなかったという話を聞くことが多いでしょう。まず、アイディアや仮説があれば、とりあえずカタチにしてみるということは、議論を前進させる上で重要な役割を担います。A・Bテストのように、AかB、どちらのアイディアが良いのか検証するのではなく(もちろん、ABテストは最後の決めの段階では重要です)、とりあえずカタチにして、新しいアイディアを導きだすための〝次の〟新しい問いを作るという意味です。例えば、アプリにどんな新しい機能をつけるかという議論をしているときに、とりあえず、皆が考えているイメージを、ホワイトボードにストーリーボードやワイアーフレームを使って、カタチにしてみるということが重要です。初めて、カタチにすることで、今まで気づかなかった点が表面化し、より深掘りした議論ができるようになります。

人間中心デザインとは**


〝デザイン思考は人間中心デザイン〟(*デザイン思考=人間中心デザインではないですが……)ともよく言われますが、ここで言う人間中心とは、ユーザーだけのことを指しているわけではありません。作り手も人間なので、作り手のニーズや思いも反映されなければいけません。スタートアップの場合、ここが圧倒的に際立っていると感じます。ただその一方で、作り手の意思が強くなりすぎて、作り手中心デザインになりがちです。逆に、100%ユーザー基点であっても、面白いプロダクトは作れないと思います。例えば、ユーザーの意見を聞いて、100通りのアイディアが返ってくるとすると、その100通りのアイディアをすべて100個の機能として実装したら、よく分からないサービスになってしまうのは、百も承知です。ベストなのは、プロダクトオーナー(CEOであることが多い)がしっかり、プロダクトの北極星を作り、組織全体がユーザーの潜在的なニーズを理解した上で、それに対するベストなソリューションを提案できるかどうかです。

スティーブ・ジョブズは、絶対にこれを作りたい!という強い信念を持ちながら、多くの斬新なプロダクトを世に出してきました。ですが、私が思うに、そんなスティーブ・ジョブスでも、すべての機能やインタラクションに対して強い意見があったわけではないと思います。(スティーブ・ジョブスと働いたことがないので、わかりませんが。もしかしたら、間違っている可能性もあります。)

憶測ですが、彼はこんなプロダクトを作りたいという強い思いはあったものの、それが自分よがりな物にならず、スティーブ・ジョブス自体も組織の一人として、ユーザー起点で体験やプロダクトをデザインできる環境であったと私は感じます。

さいごに
まだまだ、色々とデザインを通して、チャレンジしていきたい思うので、同じような課題を感じている方々と意見交換できればなと思い、このブログを始めました。
そして、デザインを通して、日本のスタートアップを盛り上げていきたいです!!

今回は具体的なケーススタディも用いず、抽象度の高い話になってしまいましたが、今度からはD4Vが実際に行なっている取組について話していきいと思います。

そして、冒頭にも書きましたが、あくまでも個人的な見解です。

あと、最近twitterはじめました!


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D4V・IDEO所属 デザイナー兼キャピタリスト @Hyperisland卒業
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