見出し画像

親子の病理

100人いれば100通り、というのが私のモットーなのだが、話を聞いていくと、親子関係のバランスの悪さから、やがてその歪みが大きくなって、クライアントを苦しめているケースが余りにも多いのだ。

と、ここまで書いて下書き保存したのが2020年。
やっと続きを書いてみようと思う。

15年以上前になるが、私はアルバイトの為、とある付属高校に来ていた。
仕事内容は、春からの新入学生が購入しなくてはいけない上履きや運動着、柔道着などを新入学生自身に試着してもらい、サイズを決めていく採寸という仕事だった。
保護者と一緒に来た15歳の男女がずらりと並んだ靴や着物を試着し、上履きは24cmだとか、運動着はLサイズだとか決めていくのだが、そこで私は強烈な違和感を感じていた。
「もっと大きい方がいいんじゃない」「こっちがいいんじゃない」と1から10まで口を出す母親。「俺は分からないから」と口にし、髪を撫でつけスーツできめた父親。
過干渉か、無関心。両極端な親子の姿。
お互いに対話をしている親子は1組、2組しかいなかった。
自分がカウンセラーになるとは夢にも思っていなかった時期の話である。
当然、心理学についての知識など何も持っていなかった。
それでも、違和感を感じるほどの状況だったのだ。
頭に浮かんだのは、当時保育士をしていた友人の、「最近の親子は…」という言葉だった。

個別カウンセリングを請け負い始めた頃、男女ともに、26歳前後の年齢のクライエントが多く、不思議に思っていたのだが、ある時、あのアルバイトの時の子供たちの世代が、大人になってカウンセリングに来ているのだということに気付いた。

筆者は「キレる17歳」の世代である。
犯罪心理学を学んだ時、この世代の親たちはバブル世代だという事に気付かされた。
社会が金に踊らされた時代。拝金主義の親に育てられた子供たちがその後どのような道を辿ったのか。

あのアルバイトの時の子供たちは、バブル崩壊後に生まれ、幼少期に松本サリン事件、阪神淡路大震災などが起こった世代だ。

最近では、16~19歳くらいのクライエントが多くカウンセリングに来ている。
この世代の幼少期はリーマンショックが起こり、大人たちは混乱していた。スマートフォンが一人一台急激に普及し、幼少期からインターネットに触れている世代でもある。

こうした関連付けは一見安易に思えるかもしれない。
しかし、子どもたちは社会の写し鏡である。
カウンセラーである以上は、社会情勢に無関心ではいられない。
なぜ今、16〜19歳くらいの青少年少女たちが多くカウンセリングに来るのか、
個人的には、この2020年代、答えのない時代に、大人たちが子供たちに対し本当の意味での寄り添いが出来ていないことも一因だと考えているが、このことはまた別の機会に書きたいと思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?