「成功者」が書いた本を鵜呑みしてはいけない 書評ライターが語るビジネス・自己啓発本の読み方

 僕たちは、さまざまな理由で本に知識を求める。「何か副業をはじめたい」といった欲望や、「上司とうまくいかない」という悩み。マンガや小説のような物語についてはその限りではないけれど、ビジネス書や自己啓発本を求めるときは、おおむね自分の中にある課題を“解決”するために本を選ぼうとするだろう。

 そんなとき「成功者」の本は魅力的に映る。帯には「副業で○○万円」「××すれば成功する」といったキャッチーな言葉が並び、「ほんとかな?」と思いながらも、つい手を伸ばしてしまう――。だが、ちょっと待ってほしい。買うのいいけれど、読むときに気を付けてほしいことがある。

 僕はある書評系のニュースサイトで、ここ1年半くらいで約200本の書評を書いてきた。ときに自分が熱烈に好きな本を、ときに流行りのあの本を、ときに編集者イチオシの本を紹介してきた。その中で「ビジネス書・自己啓発本」は少なくない幅を占めている。

 こうした本をたくさん読み、紹介しているうちに、いくつか見えてきたことがある。需要があるかはわからないが、それをひとまず個人的なnoteに書き記していこうと思う。

■「成功者」の本を鵜呑みにしてはいけない

 この世のビジネス・自己啓発本は、2種類しかない。「成功者」の本と「専門家」の本だ。前者は、何かで成功した人の本。自分で会社を大きくした経営者などがこれにあたる。それに対して、後者は、その分野を専門的に研究・分析している人の本。大学の教授や、得意ジャンルを持つライターなどがそうだろう。

 ビジネス・自己啓発本は、想定する読者の悩みに対して「○○なときは、××しよう!」という“解決策”、あるいは“法則”のようなものを提示する(例:仕事の決断は、早いほうがいい)。だが、「成功者」の本と「専門家」の本では、その精度が違う。「成功者」の本は、あくまでその人の“体験”からもたらされている(例:仕事の決断は、早いほうがいい。私が勤めていた某IT企業にもそういう文化があった。実際それでPDCAサイクルを早く回すことができ、成果が出ていた)。

 一方、「専門家」の本は、さまざま場合を分析し、場合分けをして“解決策”を提示する(例:IT企業のなどの動きの速い業界では、決断は早いほうがいい。まずリリースし、ユーザーの反応を見ながらサービスを改善していくことで、成果を出しやすくなる。それに対して、安定した業界では、~)。「仕事の決断は早いほうがいい」という“法則”は、どこでも当てはまるものではない。例えば、銀行員などの「ミスしないことが重要」な職業において、早すぎる決断は、顧客の信用を失う命とりになりかねない。

■とはいえ、「成功者」の本も捨てたものではない

 なにも「成功者」を端から破り捨てろというわけではない。彼らの本にも学びはたくさんある。ただ、心の中でワンクッション置いてほしいのだ。「これは、自分(あるいは、自分の業界/会社)にも当てはまることなのだろうか?」と。あなたと著者は、いろいろなことが違う。顔も、生まれも、能力も、やっている仕事も違う。それでも、世界というのは、統計的事実に基づいていなくても、どこかで何かがつながっている。だから、「成功者」の本は、すべてを鵜呑みにするのではなく、自分に似ているところ、そして役に立つところを探しながら読んでほしい。

 最後に、僕が好きな「専門家」の本を紹介する。トイアンナさんの『就職活動が面白いほどうまくいく 確実内定』だ。就活というのは、身近に有名企業から内定をもらった「プチ成功者」がたくさんいる。もちろん、そんな先輩から学べることもある。でも、数えきれないくらい学生の就活相談に乗っているトイアンナさんのほうが信用できない?


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本業はwebサービスの企画職。副業でライター。主に「ダ・ヴィンチニュース」などでレビュー記事を書いています(現在は月5〜6本。累計では300本ほど)。本業や副業で得られた知見を共有していきます。
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