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子どもの未来が変わる英語の教科書

正頭(しょうとう)先生とは

著者の正頭先生は、立命館小学校の先生です。
2019年に、教育界のノーベル賞といわれる「Global Teacher Prize(グローバル・ティーチャー賞)」トップ10に入ったことでご存知の方も多いと思います。受賞後は様々なメディアで活躍が紹介されています。

正頭先生のお名前は以前から知っておりました。ずっと会いたいと思っていた先生のお一人でしたが、2017年の夏のセミナーで初めて会うことができ、2019年1月には念願かなって実践発表を聞くことができました。(下はその時の写真)

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お話を聞いて、
「小学校の英語の授業でマインクラフトか〜」
という驚きはありましたが、さらに話を聞くうちに、正頭先生が伝えたいのはそんな表面的なことではなく、これからの時代を生きるために必要なことを、どうやって子どもたちに伝えていくか、ということだと感じました。

正頭先生はこれまでにも英語教育の実践をまとめた本を書かれています。
(下部にリンクを貼っておきます)
しかし、今回紹介する最新刊はタイトルこそ「英語の教科書」と書かれていますが、中身は「これからの子育て」についての提案です。

読了して思ったことは、正頭先生の学校での指導(または子育て)に対するお考えが私自身の考えととても近い、ということでした。
(考えが似てるな〜と思うのは、「英語教育2.0」のanfieldroad先生もです)
共感する箇所がたくさんあり、本はドッグイヤーだらけになりました。

ハードルを下げよう

この本のテーマは、「ハードルを下げよう」です。
それは英語教育であったり、子育てであったり。

自分の授業を振り返ると、私は生徒が使う英語に対してやたらと厳しく指導していた時期がありました。その当時は英語で授業を進めようと思っていましたし、生徒にもどんどん英語を使わせようと思っていました。しかし、それと同時に生徒の間違いにはとても敏感で、間違いを許さず、すぐ指摘してしまっていました。私の設定するハードルはとても高かったと反省しています。

もちろん生徒はなかなか話さなくなり、授業は暗〜い雰囲気になっていました。
(その時の生徒さんには本当に謝りたいです。)

正頭先生は、

「英語が伸びるかどうかは失敗の数で決まる」
「そして失敗を恐れずに、とにかく失敗しまくる経験を重ねられたのは、僕が設定している「英語のハードル」が低かったからに他なりません」

と書いています。

英語は失敗しながら覚えるもの。
失敗を恐れたら何もしなくなります。
そういうマインドが定着すると、英語だけでなく他のことでも、間違えそうなことには挑戦しなくなる。

英語のハードルを下げるって、英語教師にはなかなかできないことかもしれません。
ある意味英語学習の勝ち組である英語教師は、そんなに英語ができない思いをしてません。英語が好きで英語学習にのめりこんできたのだから、失敗経験は他の人ほど多くない。

自分自身の成功体験を子どもたちに当てはめてはいけないですよね。
これは部活動を持つときにもある感覚です。
自分は難なくできたことが、生徒が何故できないのかわからない。笑
どう教えていいかわからなくなって、「見て覚えなさい!」とか板前の修行みたいなことを言っちゃう。

英語学習のモチベーションが高い子だったら、厳しく細かく指導されることに喜びを感じる(笑)かもしれません。が、そうでなかったら嫌になってしまいますよね。

私は今、Duolingoという外国語学習アプリで中国語とフランス語を勉強しています。今のところ1ヶ月以上毎日継続できています。
(このnote投稿も併せて、我ながらやるな、とは思っています)
継続できる理由は、学習の進度が本当にスモールステップ&ゆっくりで、かつAIさんが細かな励ましのフィードバックを常に与えてくれるからです。(この励ましは、例えAIでも嬉しい)

外国語を学ぶって、そんなに簡単なことではないと思います。
Duolingoでの学習経験から、英語教師は全員、第2外国語を学習することが義務づけられると指導は改善されるんじゃないかと思ったくらいです。笑

英語学習者に対しては、まずハードルを下げてみることが大切です。

AI時代の子育て

AI関連の本はたくさん出されています。
ICTを駆使している正頭先生なので、もちろんこの話題も取り上げられていますが、ここで書かれているのは、

レアキャラになること

誰でも100人に一人レベルの得意分野を3つ持てば、100万人に一人のレアキャラになれるということです。
これは藤原和博さんが以前からおっしゃってることです。

(GLOBISでも藤原さんは話されてます。お時間があるときにご覧ください。)

現在の仕事の半分近くがAIにとって変わられるであろう、これからの世界で(私は全く憂いてないのですが)、自分の価値を高めるには、得意なことを3つ持つこと。
正頭先生は「英語×ICT×ファシリテーター」の分野で、他の人にはない価値を身につけています。

私も生徒には、「将来自分の価値を高めるには掛け算だよ」と言ってます。
前任校で英語が得意な生徒に、
英語だけできても何にもならないよ。君は足が早いから、得意な陸上と英語が生かせる仕事だと、社会で求められる人材になるかも
と言ったことがあります。
彼は今、高校で陸上部の部長となり、英語の授業を頑張っていると聞きました。
将来どんな活躍をするのか、楽しみです。

このレアキャラの章を読んでいて驚いたのは、同時に読み進めている「シン・ニホン」(安宅和人著)の中で安宅さんも「レアな存在」について言及されているということ。

業界を問わず、とにかくみんなが目指すものをかけるのはやめたほうがいい。1つの軸で極めてレアな存在になることが厳しくても、2つ、3つの異なる軸で熱狂的に取り組めば、それぞれの軸でトップ30分の1 (約3%)位の人にはなれるだろう。900分の1、2万7000分の1のレアさにはなれると言うことだ。

大人が変わろう

正頭先生がこの本を通して伝えたいメッセージは、

大人が変われば、子どもも変わる

ということです。
子どもは大人の姿を見て育つ。
大人も何かに挑戦してみる。ビリの体験をする。子どもと一緒に考える。etc.

大人が楽しそうに勉強してれば、子どもも勉強は楽しいものだと思うかも。
私も子どもの前で読書したり、中国語の勉強をしたりしてます。

すぐには効果は出ないけど、麹町中学校の工藤勇一校長先生がおっしゃるように、

「世の中ってまんざらでもない!結構大人って素敵だ!」

って思ってくれるのではないでしょうか。

最後に

この本には、いろんな場面で参考になる「言葉かけ」もあります。学校や家庭で使ってみたくなる問題もあります。

内容について全てを詳しくは書きませんが、私より10歳ほども若い方が、こんなにも教育について深く考えて行動されていることを知り、ヤバイな、と思っています。笑

そしてこの本を、英語教師だけではなく、すべての大人に読んでほしいと思っています。

英語教師にお勧めの本

正頭先生は以下の本も書かれています。英語教師の方はこちらもどうぞ。


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