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第二言語習得論の勉強会 その1

昨日はいわき市文化センターにおいて、iT'z(アイティーズ:いわき市教師の会)の例会でした。

いわき市教師の会といっても、毎回市外や県外から先生方がいらっしゃいます。

今回の講師は、昭和女子大学の大塲貴志(おおばたかし)先生。
以前は山形県の中学校教員をされていましたが、その後カナダのマギル大学で第二言語習得を研究され、博士号を取得されました。

昨年、大学の授業を聴講させていただいたのが今回のきっかけ。
第二言語習得理論の最前線のリサーチ結果などを教えていただき、その際にぜひ私たちの勉強会に来てほしいとお願いしておいたのです!!

第二言語習得における文法の扱いについて

今回のテーマは、「文法練習」

Focus on FormやCLIL、TBLT(Task-Based Language Teaching)というと、文法指導や練習はあまりしない印象があります。
しかし、日本のようなEFL(English as a Foreign Language:外国語としての英語)環境で、練習をしないで言語を習得できますか、という疑問を大塲先生は提示されました。

私はTBLTやFocus on Formについて勉強してきて、機械的ドリルってやっちゃダメだよな、と信じ込んでいました。
しかしお話を聞いてるうちに、
「文法練習って、やったらいけないことではないよな」
と思うようになりました。

では、大塲先生のプレゼンから今回のお話をかいつまんで紹介します。

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第二言語習得における文法指導のポイント

Q1 文法は第二言語習得に効果があるのか
▶︎理解可能なインプットを大量に与えるだけでは、文法の正確さは身につかない
 →もちろんインプットがないといけない。これは教師が工夫して与えないといけない(大塲)
▶︎コミュニケーション活動の前後または活動中に、学習者を特定の文法項目に、明示的または暗示的に注意させる指導方法(Form-Focused Instruction:FFI)の効果が確認されている(F on Fは暗示的説明)→明示的な指導が悪いわけではない

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Q2 文法はどのように指導すべきか
▶︎明示的指導と暗示的指導を効果的に組み合わせる
▶︎機能的にまたは演繹的に導入してもそれほど効果に差はない
▶︎コンテクスト(文脈)を与えて導入することの方が重要
▶︎指導者は学習者のレベルや適性、教材の特性などを踏まえて、適切なタイミングで文法をコンテクストで運用させる機会を作っていくことが必要

※All Englishではなく、Rich English。Input Enrichmentという言葉もある。

Q3 文法知識はどのように発達するのか
▶︎気づきや理解だけでは運用レベルには到達できない
 ▷技能習得理論(skill acquisition theory)
  ◯宣言的知識(declarative knowledge)
   →手続き的知識(procedural knowledge)
    →自動化(automatization)
▶︎「わかる段階」→「使える段階」→「使う段階」
 ※「使える段階」の時間をどうするか(時間は膨大にかかる)
▶︎知識を運用レベルにするには、大量の反復練習が必要
 ・明示的知識の深い理解だけでは不十分
 ・ドリルだけでなく、文脈がある中での練習をする

Q4 どのような練習をすると文法は使えるようになるのか
▶︎文法問題集のドリル練習の限定的効果
 ▷転移適切性処理(Transfer Appropriate Processing) Lightbown 2007
 練習場面と実際の活用場面(テスト)の形式(環境)が同じ時に学習者のパフォーマンスは最大限発揮されうる
 ▷文脈のあるコミュ二カティブな練習活動を繰り返し行うことが必要

Form-Focused Practiceの必要性

▶︎理解可能なインプットや意味にフォーカスした活動だけでは不十分
▶︎文脈の中で文法に"気づき"(noticing)、"注意"(attention)を向けさせる手法はスタート段階
▶︎コミュ二カティブな練習(Form-Focused Practice:FFP)をしないと、知識は使えるレベルにならない
▶︎教室で、長期間、コミュにカティブな練習活動(FFP)を検証した実証研究はほとんどない

CAPAモデル(Lyster:2017, 2019)

ここで、CAPAモデルを紹介していただきました。

大塲先生iT'z2.001

簡単にいうと、言語の習得過程を以下の4つのフェイズに分けます。
(大塲先生、間違っていたら教えてください)

1 Contextualization(文脈) phase(内容重視)
2 Awareness(気づき) phase(文法指導)
3 Practice(練習) phase(文法指導)
4 Autonomy(自動化) phase(内容重視)

2,3の場面ではForm-Focused Practiceをしますよ、ということです。

ここらへんで、休憩となりました。
あっという間の前半。

ここまでは理論がほとんどでしたが、内容が面白すぎて、途中でも参加者からバンバン質問が入りました。

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この日は常連の宮崎先生がスタバのポットサービスを持ってきてくださいました。大塲先生からもスイーツのお土産をいただき、甘いお菓子と美味しいコーヒーで、とても良い雰囲気の勉強会となりました。

後半は活動編。これについては次回お知らせしたいと思います。

では、今日もお読みいただき、ありがとうございました。


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