花卉咲涼/Kakizaki Ryo

いつか迷い人の放送をされるのが夢です

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最近の記事

短編*1『ぷちん』

<<ぷちん>> 深夜三時、真っ暗な部屋で私の消息は忽然と絶たれた。 ** 今日の午後三時、私が行方不明になった事がわかった。 事件の関係者は三人。 父、母、娘だ。 私が消えた事について、三人は次のように話した。 父 「最後に見たのは昨日の夜だったよ。  僕が帰って日課の晩酌をしようとビールを取り出した時、ふと気がついたんだ。  とても悲しいよ。信じられないくらいの喪失感だ」 母 「お父さんはいつも日課をこなす間はぼんやりしてるから、時間は当てにならないと思うの。  私はも

    • 会話*5『好きな人が結婚するらしいからスーツに肩パッド5つ詰める』

      「好きな人が結婚するらしい。式の誘いが来た」 「そうか、君は気の毒でその人はめでたいな」 「なぜそんな酷い対比をした」 「感想のフェアさを優先したまでさ」 「少しは私の肩を持ってくれてもいいんだよ」 「おう、持つとも。幾らでも。君のなで肩は掴みにくいが」 「やっぱり、なで肩だからフラれたのかな」 「そんな事はないだろう。相手はいかり肩なのか?」 「そこまでは確認してないけど、海の男だそうだ」 「それじゃあ間違いなく“いかり”は持ってるだろうな」 「やっぱりそうか……(ガック

      • 会話*4『変わったのは僕のハラ』

        「今日はベルトはどうしたんだ」 「ああ。あんなやつ家に置いてきたさ」 「してこなかったのか」 「したさ。もちろん。10分間はね」 「外しちゃったのか?」 「あいつったら、ちょっと椅子にこしかけた途端、俺の腹に巻かれたくないって弾けやがってね。 腹が立ったから置いてきたよ。 あいつもね、昔はあんなやつじゃ無かったんだ。最近いやにキツくなってさ」 「それは気の毒に。そろそろ潮時かもしれないね」 「ああ。時間が経つとみんな変わっちまうって本当なんだな……(顔を上げ遠くを見る)」 「

        • 会話*3『好きな人「綺麗だね」私「!?」』

          「好きな人に『綺麗だね』って言ってもらいたくて、めちゃくちゃ頑張って外見磨いてさ」 「うん」 「ついでに、画面割れてると(ちょっと……)と思われるって記事に書いてあったから、スマホのフィルムも前日の夜に貼り直したんだけど」 「おう」 「『綺麗だね』って言ってもらえたよ、」 「おお」 「フィルムが」 「おお……」 「だから私ちゃんと言ったの」 「うん」 「『ありがとう、店員さんに伝えとくね』って」 「店で貼ってもらったパターンだったか……」

          会話*2『ムキムキに鍛えて目指せハッピーエンド』

          「君の話は短編の方がギャグやハッピーエンドが多いね。逆に長編はほとんどもの悲しい結末になるようだ」 「それね、私もおかしいなあと思ってたんだよ。長編を書いてると知らん内に人が死ぬから」 「君の預かり知らぬところで死んでいるのかい。君の都合だとばかり」 「それでね、私も考えたんだけど。多分長編は書いてるうちに疲れちゃってローな状態で書くからバッドエンドになるんだと思うんだよね。 私にスタミナさえあれば結構な人数幸せにしてやれたと思うんだけど……」 「作家に必要なのは体力づくりと

          会話*2『ムキムキに鍛えて目指せハッピーエンド』

          会話*1『自動ドアに認識されない』

          「私自動ドアに認識されなくてさ」 「わかる」 「この前本気でどうやっても全く開かなくて焦って反復横跳びみたいになっちゃったんだよね」 「ウケる」 「で結局開かなくて」 「ウケる」 「扉透明だから店の人ずっと見てんじゃん?助けに来てくれたんだけど、普通に開いて」 「ウケる」 「その流れで入るのも辛くない?」 「わかる」 「やっぱそういう事有るよねー」 「いや自動ドアは流石に無いけど〜」 「まあそうだよね〜」 「引き戸で同じ事やった事はある」 「ウケる」

          会話*1『自動ドアに認識されない』