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「何がクールなのか?」ではなく「これがクールなのだ」

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 』(山口周著/光文社新書)という本をご存知でしょうか。
2017年7月に出版され、ベストセラーとなった本です。
2018年度ビジネス書大賞準大賞を受賞しました。

すごくざっくり内容をお伝えすると、VUCAと言われるこの時代に、これまでの「分析」「論理」「理性」を中心とした経営は理にかなっていないという話です。
大事なのは「真・善・美」を判断するための美意識だと。
「論理的」で「理性的」なことは「直感的」で「感性的」なことよりも重要視されてきましたが、実は過去の優れた意思決定の多くは「感性」や「直感」に基づいてなされていることが多いそうです。
(例:ソニーのウォークマン)
マーケティングの側面から見ても、機能で差異を付けにくくなっている今、選ぶ基準はデザインやブランドといった感性に訴える部分になってきていて、求められるのは「何がクールなのか?」ということを外側に出していく知的態度ではなく、「これがクールなのだ」という提案をしていく創造的態度での経営だという話です。

『ここまで、経営における意思決定について、「論理」と「理性」への過重な依存は様々な弊害をもたらすため、「直感」と「感性」をバランスよく活用することが重要だと指摘しました。
同様の指摘を、MBA教育への激烈な批判という文脈の中で行っているのが、ヘンリー・ミンツバーグです。
(中略)
ミンツバーグによれば、経営というものは「アート」と「サイエンス」と「クラフト」が混ざり合ったものになります。
「アート」は、組織の創造性を後押しし、社会の展望を直感し、ステークホルダーをワクワクさせるようなビジョンを生み出します。
「サイエンス」は、体系的な分析や評価を通じて、「アート」が生み出した予想やビジョンに、現実的な裏付けを与えます。
そして「クラフト」は、地に足のついた経験や知識を元に、「アート」が生み出したビジョンを現実化するための実行力を生み出していきます。
(中略)
つまり、ここでポイントになるのは、これらのうちどれか「一つ」だけが突出していても全然ダメだということになります。』

クラフトとサイエンスはわかりやすいと思います。
「過去の経験からこのような意思決定をした」
「情報の分析からこのような意思決定をした」
誰が聞いてもわかりやすい決定です。

アートは本人の「直感的」「感性的」な判断になります。
「いいと思ったから」ということでしか表現できないものです。
この重要性が今まで軽視されてきましたが、クラフトやサイエンスと同じくらい大事なものだという機運が高まってきていると感じます。

いい例がマツダです。ここ数年でイメージが大きく変わり、業績も向上しています。
簡単に言うと、マツダはデザインに力を入れるようになりました。
それも「顧客に好まれるデザイン」ではなく「顧客を魅了するデザイン」です。
マーケティングを元に、顧客のニーズや好みに合わせて作るのではなく、「イイものはイイ、ダメなものはダメ」を判断基準にし、成功しています。
(『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 』より一部抜粋)

正直なところ、私が「美意識」という言葉を意識するようになったのはここ3年くらいのことです。
もともとインテリアの仕事をしていたこともあって、機能よりもデザインや色で選ぶとか、「これがいい」「これでなければ嫌だ」というこだわりはある方だと自負していますが、けっこう「これでいいや」と判断してきたことも多いです。
しかし、そのように美意識を欠いた判断は、後からやり直すことが多い。
自分の美意識にかなっていないから、「やっぱり好きじゃない」と思う日が遅かれ早かれ来ます。
最近はなるべく「これがいい」と思って日常を過ごしたいと思うようになりました。
例えば「今日何を着て出かけるか」ということ一つ取っても、「これでいい」はあまりよくないと思っています。
そういう小さなことから、美意識を持つことを習慣づけたいと思うからです。
(とは言え朝はバタバタで、その辺にある服を適当に着るということもしばしばですが...)

自分なりの「これがクールなのだ」を常に表現していたいと思うだけでも違うかな。

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