見出し画像

モダンデータプラットフォーム:複雑化する現代の課題

データプラットフォームの進化と複雑化

 現代のデータプラットフォームは、その進化と共に、より高度で複雑な要求を満たすために進化してきました。今日は拙いながらも、OLTPとOLAPの基礎から始まり、現代におけるデータプラットフォームの課題と将来展望について、整理してみたいと思います。

OLTPとOLAPの登場背景

OLTPシステムの特徴

オンライン・トランザクション処理(OLTP)は、銀行システムのように正確な単一操作が重要な場合に最適です。例えば、リアルタイムでの資金移動やアカウントの更新が求められる状況では、OLTPシステムが威力を発揮します。小規模データに対する大量のアクセス処理を迅速に行う能力が、OLTPシステムの最大の特徴です。

OLAPシステムの必要性

一方、オンライン分析処理(OLAP)は、大量のデータを扱い、複雑な分析を行うために設計されています。例えば、Webアプリケーションのユーザーアクセスパターンを分析する場合、OLAPシステムが必要です。しかし、OLTPとOLAPの処理を同じプラットフォームで実現することは、パフォーマンスや設計上の理由から困難を伴います。

データプラットフォームの基本構成

ETL(Extract, Transform, Load)の役割

ETLプロセスは、OLTPとOLAPをつなぐ重要なジョブであり、データの抽出、変換、そしてロードを行います。これにより、異なるデータソースからの情報を統合し、分析可能な形式に変換します。データパイプラインの構築は、効率的なデータ処理の基盤となります。

引用:https://martinfowler.com/articles/data-mesh-principles.html#TheGreatDivideOfData

データウェアハウス(DWH)とData Lake

ETLプロセスの先に構築されるのがデータウェアハウス(DWH)やData Lakeです。これらは、異なるデータ処理ニーズに応じて設計されており、DWHは構造化データの高速なクエリ処理に特化し、Data Lakeは非構造化データも含めた多様なデータの蓄積に適しています。

現代のデータプラットフォームの課題

AI/MLシステムへのデータ提供

AIや機械学習(ML)システムが企業の意思決定やオペレーションに不可欠な要素となる中、これらのシステムにデータを供給するデータプラットフォームの役割も急速に進化しています。AI/MLシステムは、大量かつ多様なデータセットをリアルタイムで処理・分析することが求められるため、従来のデータプラットフォーム以上に高度なパフォーマンスと柔軟性が必要です。しかし、これに伴い、プラットフォーム全体の設計・管理の複雑さが大幅に増加します。例えば、歴史的な流れを見れば、OLTPなシステムからETLプロセスを経て、OLAPなシステムに情報が流れていましたが、AI/MLなシステムが求める高度な予測や自動化を行う上では、データの流れが一方方向ではなく、双方向に流す必要性が出てきます。

ITベンダーのバンドル製品の利用

現在のIT市場では、さまざまなベンダーが、組織のニーズに応じたバンドル製品を提供しています。これらの製品は、レゴブロックのように異なるコンポーネントを組み合わせることで、迅速にデータプラットフォームを構築できる利点を持っています。しかし、その反面、これらのバンドル製品はしばしば、重複する機能や過剰な冗長性をもたらし、全体のアーキテクチャが煩雑化するリスクをはらんでいます。これを避けるためには、アーキテクチャ全体の設計段階で各コンポーネントの役割を明確に定義し、無駄を省く必要があります。過度な冗長性を排除し、最適化された構成を維持することが、効率的かつコスト効果の高いデータプラットフォームの運用に不可欠になってきています。

今後のデータプラットフォーム

データメッシュアーキテクチャの可能性

データメッシュは、従来の集中型データ管理の限界を打破する新しいアーキテクチャとして注目を集めています。このアプローチは、各ドメインが自らのデータを所有し、独立して管理・提供する分散型のデータ管理を目指しています。ドメイン駆動設計の原則を取り入れることで、スケーラビリティと柔軟性を大幅に向上させることが可能です。データメッシュは、特に大規模な組織において、中央集権的なデータ管理のボトルネックを解消し、より迅速かつ効果的なデータ活用を実現します。このアーキテクチャが広く普及すれば、データプラットフォームの設計思想そのものが根本的に変革される可能性があります。しかしながら、現実にデータメッシュを組織に実現しようとする場合、無秩序な仕組みでデータが分散してしまうことは避ける必要があり、データガバナンスが重要になってきます。
 データメッシュついてもっと知りたい方は、こちら記事を一度読んでみるとよいと思います。
https://martinfowler.com/articles/data-mesh-principles.html

データガバナンスの重要性の増大

データガバナンスの重要性は、データプラットフォームが進化するにつれてますます高まっています。データの品質と一貫性を確保するためには、厳格なガバナンスフレームワークが必要です。これには、データの正確性、完全性、一貫性を維持するためのポリシーやプロセスの策定が含まれます。また、プライバシー保護やセキュリティの観点からも、データガバナンスは不可欠です。特に、GDPRやCCPA、日本の個人情報保護法などの法規制に対応するためには、データの取り扱いや保護に関する明確なルールが求められます。データガバナンスを強化することで、企業はデータ資産をより効果的に活用し、リスクを最小限に抑えることができます。

データプラットフォームの設計で意識する点

手探りでデータプラットフォームを設計する際に、意識したい点を書きます。

モジュラー性と拡張性

データプラットフォームの設計において、モジュラー性と拡張性は不可欠な要素です。将来的なビジネスの成長や新たな技術の導入に対応するためには、各コンポーネントが独立して機能し、容易に交換・追加できるような設計が求められます。モジュラー性を持たせることで、部分的なアップデートや機能の追加が容易になり、全体的なアーキテクチャの柔軟性が向上します。さらに、拡張性を考慮した設計は、将来的なデータ量の増加や処理能力の要求にも対応できるため、長期的な運用の持続性を確保します。

データの民主化

データの民主化とは、全社的にデータへのアクセスを容易にし、セルフサービス分析ツールを提供することで、専門知識がないユーザーでもデータを活用できるようにする取り組みです。これにより、データサイロの解消とデータリテラシーの向上が促進され、データに基づいた意思決定がより広範囲で行えるようになります。しかし、データの民主化には、適切なガバナンスとセキュリティの確保が必要です。誰でもアクセス可能なデータ環境を提供する一方で、誤用や不正アクセスを防ぐための適切なアクセス制御と監査機能が不可欠です。

リアルタイム処理とバッチ処理の統合

データプラットフォームにおいて、リアルタイム処理とバッチ処理の統合は重要なテーマです。リアルタイム処理は、データが生成されると同時に即時に処理・分析を行い、迅速な意思決定を可能にします。一方、バッチ処理は、一定期間に蓄積された大量のデータをまとめて処理し、定期的な分析やレポート作成に適しています。これらの処理モデルを効果的に組み合わせることで、企業はデータの鮮度と正確性を維持しつつ、コストとリソースを最適化することが可能です。しかしながら、リアルタイム処理あるいはバッチ処理それぞれに適した技術やツールの選択は、困難を極めます。例えば、リアルタイム処理に関しては、Apache Kafkaといったストリーミング分散データストアや、Flink, Stormといったストリーミング処理エンジンが有名であり、バッチ処理に関してはspark, trinoなどが有名です。それぞれを適材適所で使用しているのが現状であり、統合を成功させるためには、ETL(Extract, Transform, Load)の各段階で、これらの技術ツールを用いたデータ処理を最適化し、システム全体の負荷をバランス良く分散させる必要があります。


もう少し技術的な参考文献に厚みを持たせて書きたかったですが、途中でボリュームが爆発することに気づき、思ったよりも概念的な説明が多くなってしまったように思います。
参考になれば幸いです。

いいなと思ったら応援しよう!