[屋根裏の文学] 屋根裏部屋の花たち,ほか

                                               Photo by mariannehope

■  前回 地下の文学【本について】という記事を書きましたが,今回は屋根裏にまつわる本.

(そういえば前回 床下の小人たち を入れるの忘れました.屋根裏だと勝手に思っていた..)

■ で.紹介するのは
屋根裏部屋の花たち (V・C・アンドリュース)』です
今は亡きサンリオ文庫.と思ったら扶桑社ミステリー。勿論すでに絶版

宇野亜喜良 さん(たぶん)の挿絵も素敵.

■  これは主人公の女の子の一生を何冊かに分けたシリーズの一冊目なんだけど,

..なんだけど.

この話はとにかく「暗くて救いのない話」です...

暗い。トラウマになりそうに暗い。
半分オカルトなんだけど,基本現実という設定なので,どんどんあり得ない暗い話続いて最後まで登場人物に殆ど救いがない.

そんな本紹介するなよ,と言われそうですが(すみません...)
とにかく「好きとはとてもいえないし読み返す勇気もなさそうだけど強烈なインパクトを残した作品」です

もし,この怖い話を読んだ人がいたら,どんな感想をもったのか是非聞いてみたいと思って書いてみた.

■ さらっと話しのさわりを書くと,

父が死去したため,母と兄弟4人で勘当された母の実家(大富豪)に戻るが,”子供はいない”ことになっているため,「すぐにおじいちゃんを説得して迎えにくるから」と屋根裏部屋での生活が始まる.がその生活は何年にも及び....


「屋根裏部屋の花」は花をみられない主人公のつくった画用紙の花.
      弟が日光不足でくる病になっちゃったり,
      主人公が部屋で初潮を向かえたり,
      兄と性的におかしなことになっちゃたり,
 とにかくあり得ないけど,もしそこにいたらそうならざるを得ないだろうなっていう悲劇が淡淡と綴られていく.

2巻以降で屋根裏部屋から脱出するんだけど,そのあとも兄弟達は昔の影を引きずっていく.

まあ,とにかく,よくぞここまで書いた,というような不思議な話です.

(アメリカでは ゴシック.ロマンスというジャンルがあるけど(母がすきだったのでビクトリア・ホルトとか私も割と好き),そのなかでも異質な存在.)

■ 

作者の V・C・アンドリュースさんのWiki をみるとわかるけど,ご本人は,作家デビューしてから割と早くに亡くなってしまって,その後も周りの人が「V・C・アンドリュース名義」で似たような女性の一生モノ(サーガと呼ばれる)を書いてた.

んだけど,やっぱりあの「生理的に抵抗を感じるおどろおどろしさ」は,ほんものでしか出せていないんだよね.

なので,もし読むとしたら,
初期の,アンドリュース本人の書いた『オードリナ』と『屋根裏部屋の花たち』がオススメです.(無理には勧められないけどw)


■ ■ 

日本の屋根裏文学といえば,もちろん屋根裏の散歩者 (江戸川乱歩)だ.(←なんと創元推理がKindleにしてた!)


あれも何とも薄気味の悪い話。

屋根裏という存在自体ながすでに陰気なものと切っては切れない関係なのだろうか。

■(了)

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