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イスラエルへ行く。ただの旅行で【1】

数年前の7月、イスラエルへ行った。ただの旅行だ。

「イスラエル=危なそう」な刷り込みがあって、旅行先に提案された時はうーん、と唸った。が、サイクリングのロードレースのテレビ中継中にとめどなく流れるイスラエル旅推しのCMに、オランダでは割と普通の旅行先なのだろう、と最終的に了承した。

あの一帯は何かしら揉めている気がするので、旅行先としては考えたこともなかった未知の国である。前に、とある人がイスラエルでインターンシップしていた、という話を聞いて、「イスラエル」と「インターンシップ」という言葉が結び付かなすぎて、頭の中がハテナで溢れた。

そんなこともあって、私以上にイスラエルのイメージが未知であろう私の親は、十中八九心配するので、黙って行くことにした。無事に帰って来れたら事後報告の方向で。我ながらかなり親不孝者である。

噂によると、どうやら渡航する際の検問は厳しいらしい。

実際イスラエル行きの飛行機に乗る前、私たちはかなり厳しくチェックされた。怪しい組み合わせだと思われたのだろうか、相方と私は別々に係員に連れて行かれ、30分ほど質問責めにあった。根掘り葉掘り聞かれて、荷物も全部バックパックから出して隈なく検査された。二人ともにOKが出てようやく、機内に搭乗することが許された。
入国審査ではなく、その国に向かう飛行機に乗る前のチェックなので、かなり入念である。

これは国に入るときもかなり厳しいんじゃ…と私たちは身構えた。

およそ4時間のフライトで首都のテルアビブに到着。入国審査に並ぶ。相方と一緒に審査を受けることが許されたので、二人分のパスポートを渡して入国審査官のおじさんからの質問を迎え撃つ。

「なんでイスラエルなの?」
「サイクリング中継のCMでばんばんイスラエル推してたからそれで…」
「ああ、最近は旅行のその日にチケット調べてテルアビブ行きのチケットが安かったから来た、って人もたくさんいるよ」

サイクリングのくだりがウケたのか、おじさんはちょっとフレンドリーになって、バーンとパスポートにスタンプを押す代わりに、パスポートの顔写真が入った入国カードをくれた。イスラエル入国のスタンプがあると、イスラエルと国交を断絶している他のアラブ諸国から入国を拒否されるので、それを配慮してのことだろうか。

ひとまず無事、入国することができたのであった。

ー続く



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