ときめきメモリアル世界一の男
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ときめきメモリアル世界一の男

アトロ

それはおれのことです。
大学生のころ、おれはこのゲームと出会った。

おそらくおれは、このゲームに世界一愛情を注いだ。
そしておれはまた、このゲームに世界一、愛された。

なんの攻略情報もない中で、すべてのイベントを自力で発見した。
そして毎日毎日、来る日も来る日も、このゲームだけを遊び続けた。

平均すると、1日に3回、このゲームをクリアしていた。
詩織に告白された数は当然99でカンストし、カンストした後も200、300とその回数を伸ばしていった。

そんな細かいことは、いい。
それを証明するものはどこにも残っていないし、今さらそんなことを力説することに、意味はない。

ときメモだけを仙人のようにプレイし続ける、その結果、おれのプレイスタイルは普通の人とぜんぜん違うスタイルに落ち着いていった。

目的の女の子を決めて、その女の子をデートに誘い、交流を深め、最終的にその狙った女の子に、告白をしてもらう。

それが通常のプレイスタイルだが、おれのプレイスタイルはそれとは別次元の遊び方に変遷していった。

おれは女の子を狙わない。
告白をしてもらおうと思わない。
女の子と仲良くなろうと思わない。

恋愛シミュレーションなのに!

おれはわざとダサい格好をし、勉強も部活動もせずに怠け続け、女の子をデートにも誘わない。ただただ、ダラダラと高校生活を送る。

高校3年生になったらある程度パラメータを上げて、そこそこ自分磨きをするのだけれども、それまでは、真面目にやらない。女の子と仲良くしない。女の子の機嫌をとらない。基本ひとりぼっちのまま、高1高2を過ごすのだ。

当然、誰からも告白してもらえない、ということが多くなる。
だって、女の子と仲良くしていないんだもの。
交流していないんだもの。

でも、ときたま女の子からデートに誘ってくれることがあり、それがきっかけで仲良くなることもある。告白されることもある。

おれはそんなふうに、自分を磨かず、自分からは女の子に話しかけず、女の子から誘ってくれるのを待つ、というプレイスタイルに落ち着いた。

ときめきメモリアルは、本来そういうゲームではない。

がんばって女の子と仲良くなるゲームだ。
狙った女の子と仲良くしていくゲームだ。

まるでおれは、すでに終わった自分のリアルな高校生活を何度でも繰り返すような、そんなプレイを、無意識にはじめてしまったのだ。
そしてそれは、おれがときめきメモリアルから離れるまで、最後まで続いた。

ときめきメモリアルの正ヒロインといえば、藤崎詩織である。
おれも当時、詩織のことが一番好きだった。

大好きだったけど、おれは詩織のことを狙わなかった。
ほかの女の子のことも狙わなかった。

おれはただ頑なに、硬派を気取った。
このゲームは、そんなゲームじゃないのに。

詩織は当然、すべてのパラメータを高水準まで育てないと、告白してくれなかった。デートを最低8回しないと、告白してくれなかった。

つまりどういうことかというと、
俺のプレイスタイルでは、詩織に告白してもらうことは永遠に不可能なのだ。

おれは詩織をデートに誘わない。
当然詩織と8回デートすることができない。
だからパラメータを上げたとしても、詩織に告白されることはない。

しかし、たった一度だけ、奇跡が起きたことがある。

おれは詩織のことを一度もデートに誘わなかったけど、
詩織がおれのことを8回デートに誘ってくれて、
最終的に卒業式に詩織はおれに告白してくれたのだ。

この奇跡がどれだけすごいかは、プレイしたことのない人には絶対に伝わらないだろう。

これがどれだけすごいことなのかは、おれにしかわからない。
そんな遊び方をしていた、おれにしかわからない。

今と同じ、いや今以上に孤独だった、大学時代のおれ。
今だから認められるけど、正直当時のおれは、頭がおかしかっただろう。

そんな狂ったおれが、狂った遊び方をしていたのだが、
そのときは、詩織がなんどもデートに誘ってくれて、
告白してくれたときには、

おれは自分が本当に詩織に愛されているんだと思った。

触れない詩織。
二次元の詩織。
ゲームのキャラクターの詩織。
心など持つはずのない詩織。

ときめきメモリアルを愛しすぎたおれ。
ゆがんだまま、大学にもいかず、誰にも会わず、
ただひたすら、何百回、千回、千五百回と、ときメモを遊び続ける日々。

そんなおれの歪んだ愛が、
詩織というゲーム内のキャラに、とどいた。
おれは今振り返って、そう思うんだ。

どんな想いであったとしても、
願い続ければ、
思い続ければ、

それはどこかに届く。
誰かに届く。
何かに届く。

届いて、現れる。
現象として、現れる。

人の思いって、そういうものだと思う。

それがなんであったとしても。
人の思いは、必ずどこかに、届いている。

おれは詩織から告白されたあの日に、
そういうことを感じていた。

詩織の愛を、感じていた。
とてもしあわせだった。

ゲームの中の女の子にでさえ、想いは届く。
じゃあ、現実世界の女性には?

届かないわけがない。

一途な思い。
大好きだよって気持ち。
大切だよって気持ち。

それは、今じゃないかもしれないけど、
必ず届いて、必ず届いて、
そして現象となってこの世に具現化する。

そんな世界のひみつを、
おれはときメモで知ったような気がする。


ちなみに、加齢とともにおれの女の子の好みも変わりました。
当時は勉強もスポーツもできて容姿もいい、完璧な藤崎詩織が大好きでしたが、今はおバカな朝比奈さんが一番好きです。

おバカで明るいのがいいんだよね!
よくできた女性よりも。
完璧じゃない女の子のほうが、なんかホッとするんだよね。



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アトロ
去年7月に離婚しました。48歳の警備員です。 ゲームとお馬さんと鳥さんと不思議なことが好きです。