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生きていく誰かのために

喉が熱く痛む。視界は歪み、悲しみの雫がマスクを濡らしていく。空きすぎた電車。片道1時間半の出勤。

毎日が悲しい。きらきらと輝いていた記憶のピースがぽろぽろと剥がれ落ちる。

絶望にひれ伏した。

帰りの電車。全てが無になって電車の席から立ち上がれなかった。視界は歪む。頭は重い。幸福は消えた。

駅のトイレでひたすら泣いた。泣き続けた。何がどう辛いのか、そんなのわからないくらいになって、ひたすら涙が溢れてきた。

「無心になれ」

人生で初めて言われた言葉だった。

無心になろうとは辛いと感じた時、自分でも思ったことだったが。。

人間の一番の魅力は「心」だと思う。

心があるから悲しさも幸せも感じる。心があるから痛みもわかる。心があるから優しさがある。

心があるから生きているという実感が持てるのだ。

無心になることは、人として死ぬことだ。
「無心になれ」という言葉は一時的に人間として「死ね」と言われてるようなもんだ。

人間の一番の魅力である心を失うのなら職なんて失ったっていいと思った。


「昔は俺も辛かった。楽しいだけじゃない。」

悩みをぶちまけてしまった時に言われた。
自分が彼のいた環境にもし身を置いていたなら、決して耐えられない、不条理で今の自分よりも残酷な体験の話を聞いた。

昔より今の方がましだろと言わんばかりのその言いぐさは腹立たしいが、彼は彼なりの経験があり、今の自分が何か言える立場ではない。それに本心はわからないが、いい人ではある。

でもそんな言葉は望んでなかった。


弱い人間になった。いや、元々弱かったんだ。

ずっと隠してきた。自分でわかっても見てみぬふりをした。そんなわけないって。活躍する、イキイキしている、楽しそうな自分だけが本当の自分だって思っていた。
そんなわけないって知ってはいたんだけど。気付いてはいたんだけど。


同期と差がついた、先輩には見限られた、OJTは会社を辞めそうだ。

クソな世界をずっと生きてきた。なにからなにまで気にくわない。思う通りにいったことはほとんどない。

逆に望みが叶った、むしろ努力と死力を尽くして何とか叶えたものは格別の喜びがあったのだけど。

そこまでして実現したいことなのだろうか。ずっとずっと無限ループ。答えのない、自分しかわからないそんな難題に挑み続けている。

雲の隙間から差し込む光に今日も幸せを願っていた。

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