ホモに挟まる女になってしまった in Eorzea(2)

このお話はノンフィクションのシリーズとなる。が、わたしがこの手の実録を書き記す時には必ず、「この話は限りなくフィクションです」という逃げを打つ。登場人物を守るための形式的なものと思ってご了承いただきたい。

そしてこのパラグラフは個人的な気持ちを表明する前置き。
わたしはパートナーに同性を選ぶ方も異性を求める方も否定しない。こんなタイトルをつけたのは注意を引くためだ。わたしは時々、正しくないタイトルをつけた記事を書く。『JUNKMETAL』というオンラインゲームをどうしても復活させたかった時は、せいぜい3m程度のメカしか出てこないのに、「巨大人型ロボットに登場して戦う本作のサービス復活を願う署名が集まっている」と書いた。オンラインゲームに興味はなくとも、「巨大ロボ」に反応する読者は多いだろうと判断したからだ。汚い手を使ってでも、アルター8に、戻りたかった。それは叶わなかったので置いておこう。
このシリーズは断じて特定の性を愛する方々を侮辱するものではない。わたしは異性愛者のつもりだが、たとえ夫が女であっても愛したはずだ。しかし、夫はわたしが男であったなら結ばれるのは無理だし、絶対に恋心は抱かなかったろうと言う。パートナーの選び方は人それぞれ、夫の考えも理解できるし、許容する。このシリーズでメインの話題として取り上げるのは、異性愛者だったはずの男性がとある同性に出会った結果(この際出会いの場がオンラインゲームであったのはあまり問題にならないだろう)、自分の同性愛的嗜好に気づいてしまった後、現在進行形の異性愛にどう向き合うのか、ということだ。誰が好きでもいいのよ。ただ同時に2人はまずいでしょっていうお話なんだ。本気であればあるほどね。

でもこれはあくまで第三者のわたしの考え。立ち向かうのはあくまで当事者たちだ。ここでカウンセリング的なアプローチを挟むことになる。心理学的な問題解決を行う際は、すべての出来事は起こるべくして起こったと考える。新たな愛が同性の形を得て我が親愛なる友の前に現れたのは、彼が特別不実で浮気者だったからではない。今まで友の愛を勝ち得てきた彼女がいけないわけでも断じてない。何もかもが、彼の人生をより良くするための必要なパーツであると考えるのだ。ひどい表現をするなら、「出会っちゃったんだから仕方ないだろ、なんでそうなったかとこれからどうするかを考えていこうぜ」ってことになる。ただ、わたしは素人だ。彼を見つめ、自分なりの分析をするが、彼を癒そうと働きかけることはしない。それは本人が望んだ時、自らプロのカウンセラーのもとに赴いたうえで行われるべきだ。

このシリーズは半ば過去の物語だ。登場人物のプライバシーを守るため、時系列はいじってある。フェイクも入れて、読み物として再編して公開していく。この辺はプロとしてのわたしの腕の見せどころだ。頓挫してしまったならば読者諸君は「このへぼライター!」と石を投げてくれればよい。

彼、この物語の主人公を「たくあん」と名付ける。キャラが真っ黄色だからだ。お堅い職業に就いている彼は、黄色なんぞという目立つ突拍子もない色を日常生活で選ぶことが難しい。派手でおかしな先生、と言われてしまうからだ。しかし、彼は明るく元気なイメージのひまわり色がずっと大好きだった。ところがエオルゼアの地で再会した彼は、ひまわりというより例の大根の漬物のような色に染まっていた。誰に気兼ねすることもなく、ファンタジー世界でお気に入りの色にどっぷりと浸かっていたのだ。ひまわり色というには赤みが足りず、少しトーンがずれていたのが残念だったが、その隙が彼らしくもあった。なので「たくあん」という仮称を与える。

たくあんはわたしと同年代の40代なかば。高等教育を受け、賢く思慮深い。まじめで堅実、慎重、義理堅く、ちょっと弱気だ。強引な舵取りや決断はできないタイプで、普段はどっしりと頼もしげに見えるが、実は不測の事態には少し弱い。ロマンチストな面も強い。そんな彼が『ファイナルファンタジーXIV』(以下、FF14)で選ぶキャラクターは一見したイメージに近い男性のハイランダーか、男性のアウラあたりだろうなと思っていた。

ところが、
「久しぶり。案内、よろしくお願いします」
と生真面目な挨拶と共に現れたのは、真っ黄色なミコッテ男性だったのだ。色はともかく、少年っぽいやや頼りなげな可愛い雰囲気のキャラクタークリエイトだ。なるほど、と思った。色素が薄く小・中学生時代には「白い」「おばけ」「あなたの知らない世界」とからかわれ、背ばかり伸びてしまったわたしは、自分からかけ離れた姿の褐色のララフェルをメインキャラクターに選んだ。「頼れる先生」「無難で落ち着いた雰囲気」を押し付けられ続けた彼、たくあんは自覚があってか否か、逆に本当の自分により近いイメージのキャラクターを作ってきたのだ。意味のあるキャラクタークリエイトにはそれ自体に物語がある。なるほどなるほど、おもしろい。わたしは先輩ベテラン冒険者として、足元のおぼつかないたくあんを連れて出かけた。頭のよい彼はすぐに操作も、冒険のノウハウも飲み込んで、一人で進む時間も多くなった。仮想の世界で小さな自由を手に入れた彼に、大きな出会いが訪れるのはその後まもなくのことだった。

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