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ワークライフバランスとは②

ワークライフバランスとは①

2人目を出産した後に復帰すると、営業ではなく経営企画部の責任者にアサインされることになった。

営業ではないことにほっとしていた。会社は大きな枠組みでいう業種は人材業。営業として、お客様となる企業と求職者の橋渡しをするのだが、双方の言い分を聞きながら会社の方針を押し通さなければならない。前者の企業と求職者の主張には、人間的な感情が多分に含まれているが、会社の主張は論理的である場合が多い。後者の方が正しいことが多いのは頭では理解しつつも、噛み合わせるために骨の折れる苦労がつきまとった。

「そんな営業から解放される」

だが最初からうまくいくはずもなかった。まず営業とは違う動きに勝手がわからない。業務自体が初めての分野だ。経営、広報、事業企画と初めての分野について知識の吸収が急務だった。

また、時短をしながらの責任者という立場に早々に限界を感じることになる。自分がいない時間に自分を飛び越えた上司と、自分の部下とでなにやら話し合いがありコトが決定されていく。社長の熱の有り余る指導は引き続き行われ、ミスや落ち度があった場合の叱責は時短であった場合も関係なく降り注ぐ。

「自分のケツは自分で拭く、部下のケツも拭く、やるべきと思ったら手を動かす」

そう思っていたら、時短なのに毎日残業をしていた。通勤途中、家事をしている間、仕事から離れても仕事のことを考えていた。そうしないと日中の仕事がうまく回らないのだ。それでもそんな毎日を楽しんでいる部分もあった。

「頑張っている自分は好きになれる」

「自分はできない」という劣等感があって、あるからこそ頑張るし、頑張ることでしか自分を肯定できない。でも私には、頑張るための時間が圧倒的に足りなかった。

足りているか足りていないか、私には明確な比較対象がいることに気が付く。それは、「ワークライフバランス」についてプレゼンをしていた20代半ばの女の子だ。彼女は社長の子息。社長の「マーケティングは現場主義であるべきだ」という言葉はどこえやら。新卒で入社した彼女は、現場を知らずしてマーケティングにポジションをとっている。

彼女は言う。「私は仕事が楽しい。オンオフ切り分けて考えず、普段から趣味みたいに仕事のことを考えているから、仕事もうまくいくし、人生が楽しく感じる」

『時間が制約されている状態を経験していない人の綺麗事』と言うのが正直な私の反応。今の私は時間をかければ、それなりの成果を生み出せるが、今の私にはその時間が許されていないように感じるのだ。若い頃に当たり前にあった「普通に頑張る」ための時間がない。圧倒的に足りない。

「ワークライフバランス」とは、生やさしいものではないのかもしれない。

つづく


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