遊園地と芸術 体験型アートの可能性を考える
白馬の背から、絵画を見る。
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遊園地の非日常感は、大人の心さえも捉えて離さない。それは大きな観覧車やジェットコースター、回るティーカップに園内を走る列車。
そして、大人になって訪れる遊園地は子どもの頃にはなかった感傷を呼びおこす。
古びた写真の向こう側、まだ小さかったあの日の追想。
遊具やアトラクションは、その見た目からもテーマパークの世界観を演出している。
カラフル、ファンシー、ファンタジック。デザインが芸術の域まで達したものもある。
東京都の遊園地・としまえんにあるカルーセルエルドラドはその一つと言えるだろう。
日本最古、世界でも最古級のメリーゴーランド(回転木馬)。機械遺産にも登録され、時代を超えて保存する価値のあるものと位置づけられている。
アール・ヌーヴォー様式もヨーロピアンな風格と歴史を感じさせ、1度目にした人の心を掴んで離さない。
——芸術的乗り物——
——ヴィンテージの趣き——
実際に乗ってみると若干の軋みはあるものの、いたって安全に動く。
アール・ヌーヴォーの美しい天井画や彫刻、馬たちを眺めていると心が幸福で満たされる。新しくて、楽しかった。
2017年頃から「体験型」「コト消費」といったキーワードが注目されるようになった。マーケティング4.0の時代の到来である。
たとえば、チームラボが展開するインスタレーションが高い人気を誇り、好評を博しているように「空間を体験すること」に重きが置かれてきている。
これを踏まえて、遊園地の提供する「コト消費」は娯楽施設としてだけでなく、芸術を体感できる場としてのポテンシャルがあると考えると面白い。
電飾のほかには特殊な照明も映像もない、アナログな乗り物での芸術体験。
遊園地×アートの一つの形がそこにあったように思う。
20世紀の白馬が駈けていく。
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としまえんの閉園。
子どもの頃の追想はこんなにも儚く、幻になってしまう。
写真の向こう側の景色、笑い声、匂い–––せめて、記憶の中だけでも薄れないように。
おやつを恵んでいただけると、心から喜びます。